第21話 告白
丹波イリュージョンが終わり、会場から出てきた。
「いやー、本当に凄かったな。最初から最後までずっと見とれてたよ」
「すごく楽しかったね」
「でもまさか最後に茜ちゃんがステージに呼ばれたのにはビックリしたね」
「ほんとビックリしたー。きっと彰君の幸運を分けてもらったおかげだね」
「あっ、そういえばさ。魔法のステッキちょっと見せてよ」
「うん、いいよー」
思ったよりも重量感がある。
結構しっかりした素材で作られている感じだ。
なんというか作りが凝ってる。
「おおー、なんかずっしりとくる重みがあるね。買ったら普通に高そう」
「高そうだよね」
「色んなお客さんがステージに呼ばれてミスター丹波からコインとか帽子とか色々もらってたじゃない?多分、茜ちゃんが貰ったのが一番良いやつだよ。だって今日最も幸運なお客さんって言ってたし」
「確かにそうかも。このステッキの作り込みようは凄い」
そんな話をしながら帰っていた。
その時、俺はふと考えてしまった。
次は、いつこうやってデートできるんだろうか。
今回は、丹波イリュージョンを偶然スーパーに貼ってあるポスターで発見して偶然チケットに当選してさ。
もっと言えば、前に観た映画が偶然ファンタジーの魔法物だったから誘いやすかった。
偶然が重なった結果での今回のデートだ。
本当に俺は幸運なのかもしれない。
次はあるのか?
いや、もしかするともうないんじゃないか?
またアルに言われるぞ。
次はどうするの?って。
気が付いたら家の近くまで帰ってきてしまう。
もうすぐお別れだ。
茜ちゃんといると凄く楽しい。
もっと一緒に色々なところへ行って、一緒に遊びたい。
やっぱり俺、茜ちゃんのことが好きだ。
付き合いたいと本気で思う。
ミスター丹波の言葉が脳裏に蘇る。
奇跡は信じた者におきる!!信じろ!!さあ見よ!!これが奇跡だ!!
奇跡は信じた者におきる・・・か。
歩いていた俺の足が勝手に止まった。
「茜ちゃん」
「どうしたの?」
「俺、茜ちゃんのことが好きです。付き合ってください」
言ってしまった。
ミスター丹波の言葉が俺の背中を押したから。
あああ、言ってしまった。
心臓がバクバクして、口から心臓が飛び出して出てきそうだ。
「…………」
「…………」
俺と茜ちゃんの間に無言の時間が流れる。
この間が、めちゃくちゃ長く感じてしまう。
「……ごめん。彰君ってさ、彼氏っていうのとはなんか違うっていうか。気の合う友達って感じなんだよね。ほんとごめんね」
終わった……。
フラれた……。
「……そっか。と、突然ごめんね。ありがとう。これからも楽しい友達でいてよ」
「うん。こちらこそ」
本当はショックでどうにかなりそうだった。
でも、なんとか平然を保ちながら、本当になんとか精いっぱい言えた。
これからも楽しい友達でいてよって。
「それじゃ、ここで。今日はありがとう。凄く楽しかった。また大学でね」
「うん、またね」
泣きそうなのを我慢しながら、必死に絞り出した声だった。
放心しながら家の方に歩いていってると、ポツポツと雨が降ってきた。
そしてすぐに雨の勢いが強くなってきて、ザーザーと音を立てて降ってきた。
なんてタイミングなんだ。
足が止まる。
泣きたい……。
どうせ雨だし、今ここで泣いたとしても誰にもバレないからいいや。
泣いちゃえ・・・。
「うっ……ううっ……」
立ち尽くした。
棒立ちしたまま、しばらく泣いた。
雨に濡れる事なんてどうでもいいやと思いながら。
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