第3話 長い名前なのでアルと呼ぶ事にした

聞きたいことが山のようにありすぎて逆に困る。


「あの……」


【なによ】


「餌は何食って生きてるんですか?やっぱりキャットフードがいいですか?それともさっき買ってきた金魚の餌でもいいですか?」


【だから!!猫でも魚でもないわよ!!精霊は何も食べなくても平気よ】


「ラッキー!餌代かからないじゃん」


【あたしを楽なペットみたいな感じに言うんじゃないわよ!!精霊よ、精霊!!とってもありがたい存在なんだからちゃんと敬いなさい!!】


いや、そもそも俺がペットとして買ってきた金魚だったからね。あんた。


「なんでペットショップにいたの?」


【ダーツよ、ダーツ。どこに行くか決める時に色々な単語が書いてある的があって、水槽って書いてある的に矢が刺さったのよ。だから金魚に化けて水槽の中に入ってたのよ。それをあんたがたまたま買っただけの話よ】


そういう形式で決めるんだ……。

なんかテレビ番組で似たようなの見たことがあるぞ。

そうだ、グルメダーツだ。

イケメンのアイドルが日本地図の書いてある的にダーツを投げて、当たった場所の古今東西の美味しい食べ物を食べ歩くという番組だったな。イケメンアイドルのお決まりの台詞で「うーん・・・これは美味い」が、何年か前の流行語大賞にも選ばれたっけな。

もっとこうなんていうか、深い理由があるのかと思ったのに。

精霊がダーツって……。


「俺が精霊に選ばれたわけではないのか……」


【自惚れてんじゃないわよ。何の取り柄もない平凡なあんたが選ばれるわけないでしょ。精霊に選ばれて異世界に召喚されるなんてのは、アニメの中だけの話よ】


何の取り柄もないか……。

まあ間違ってはないんだけど、ズバリ言われると結構傷つくな。


「いや、この感じからしてすでに超展開だけどね。異世界召喚並にビックリだよ」


【いいじゃない。人生は何が起こるかわからないから面白いのよ。あんた運がいいわねぇ。人の短い一生のうちで精霊に出会えるなんて滅多にないんだから。千年に一度、あるかないかよ】


それはそうだろうな。

精霊が現れたなんていうニュースは聞いたことがない。

だって精霊なんて空想上の生き物だと思ってたからな。

まさか本当にいるなんて思ってもみなかった。

そんなのに出会えるなんて、宝くじで一等が当たるよりも凄い確率なんじゃないか。

でもどうせ運が良いならこんな毒舌オネエの精霊に絡まれるよりも、宝くじに当たりたかったな。


「ところで精霊さん。名前は?」

【精霊アルスメディウス・ラ・フランスよ】

「ラ・フランス……?洋梨?」

【人を果物みたいに言うんじゃないわよ】

「長いからアルでいい?」

【まあ妥協してあげても良いわよ】


「ところで……あのー、いつまでここでいる感じなの?」


さっさと帰って欲しい。


【いつまで……。そうねぇ、まあ一年くらいいてあげるわ】


長っ!!

どうしよう。コイツ思ったよりも居座る気だ。

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