資金稼ぎクエスト

俺達はダンジョンに来ていた。そこはゴールデンキングスライムが出現するダンジョンである。


「うわっ……なんかねちょねちょする。ブーツが。ブーツが汚れちゃったじゃない!」


 ぬかるんだ地面に足を取られ、マリサが嘆く。


「全く、誰のせいでこんなことに!」


「「「…………」」」


「ええ!! なんで皆黙るの! も、もしかしてマリサのせい!?」


 マリサは驚いていた。


 他に誰のせいだというのか。思い当たる人物がいない。ギャンブルをして大損したのはマリサだ。


「ねぇ! ダーリン! マリサのせいじゃないって言ってよ! マリサ悪くないよね!? ねぇ!? 悪くないって言ってよ! ねぇ!? ダーリン!!」


「ん? ……うーん。えーと。その」


「マ、マリサが悪いの!? マリサが、ううっ!」


「迷える子羊マリサよ。神に懺悔をなさい! さすればお許しになるでしょう! 神は全ての過ちを赦す寛大なお方です!」


 大神官にジョブチェンジしたアリスはそれらしき事を言っていた。


「ありがとうございます。聖母様。マリサが悪かったです。マリサは凝りました。今後一切ギャンブルには手を出しませんのでお許しください」


「はい。迷える子羊マリサよ。あなたの罪は許されました」


「聖母様」


「許されても何の解決にもなっていない」


 俺は憤った。


「それより、根本的な資金不足を解決するぞ。早速現れたようだ」


「「「ゴールデンキング! すらっーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!」」」


 俺達の目の前に複数のゴールデンキングスライムが現れる。巨大なデフォルメ調のスライム。だが、金ぴかである。あれが純金製だとしたのならば大分高価なのも

頷ける。


「試しに攻撃してみろ。ちなみに物理攻撃しか効かないらしい」


「わかったわ! ていっ!」


 ユフィは剣で攻撃した。初期装備のままなので鉄の剣を今でも使っている。


 キィン! 甲高い音がする。


「きかないすらっーーーーーーーーーーーーーーーーーー!」


「人語を話せるのか。こいつ等」


「……つ、強がりじゃない? マリサ。解析魔法をかけてみてよ」


 マリサは解析魔法をかける。


「HP3000が最大で、今、HP2999ね。1減ったわ」


「ええ! たったの1!」


「マリサやアリスが殴っても減らないわよ。戦闘職じゃないもの二人とも。後衛職だし」


「仕方ない。アサシン・クリードになった俺の新スキルを見せてやる」


「ダーリン! お願い!」


「頼むわっ! シン!」


「ところで何が変わったの?」


「アサシン・クリードになった俺はスキル二刀流を修得した。両手に武器が持てる。そして、さらには」


 俺は構える。


「俺の即死スキルが強化されているんだ」


「ええ? 強化! ダーリンのスキルって最初からチートだったじゃない! どう強化されているっていうのよ!」


 マリサは驚く。


「俺の即死スキルは元々は単体攻撃だった。しかし、アサシン・クリードにジョブチェンジした事で全体攻撃が可能になるんだ――つまりは」


「たった一人で俺達あいてになにができるすらっーーーーーーーーー!」


「片腹痛いすらっーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!」


「こういう相手を一気に殲滅できる! 即死スキル発動! 『全体即死』!」


 進化した俺の即死スキルは全体攻撃になっていた。無数の刃がゴールデンキングスライムを襲う。


「「「ゴールデンキング! すらっーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!」」」


 ゴールデンキングスライムは断末魔をあげて果てた。


「終わったか」


 こうしてアサシン・クリードになった俺の初クエストは終わった。


 ◆◆◆


「皆さま! クエストクリアおめでとうございます! 報酬の金貨200枚です」


「ええ! 200枚ももらえるんですか!」


 マリサは驚いていた。


「はい。それだけの換金価値のあるモンスターですから。手数料でギルドも儲かっております」


 受付嬢は笑顔になった。


「これだけあれば……一勝負できるわね。ごくっ」


 マリサは唾を飲んだ。


「マリサ、博打はもうご法度だろう? ダンジョンで神に懺悔したよな」


「あ、当たりまえじゃない。ダーリン! 神に誓ったわよ」


「もし今度博打をしたらどうする?」


「や、やめてっ! ダーリン! マリサ、ダーリンと離婚したくないのっ! いやよ!」


「……そもそも結婚してないっていう」


 ユフィは嘆いた。


「まあいい。この金で装備を新調しに行こう」


「「「はーい」」」


 俺達四人は武器屋を目指した。

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