勇者パーティーの転職活動

ドゥーマ神殿に俺達はついた。芸術的で厳かな建物である。


「ここがドゥーマ神殿」


「着いたな」


「入りましょう」


「ああ」


 俺達はドゥーマ神殿に入る。


◆◆◆


「ようこそ。転職の神殿。ドゥーマ神殿へ。ここでは様々な職業に転職する事ができるよ。私は転職導師のおばばさ。クックック」


 怪しげな老婆が現れた。


「それで今日は誰を転職させにきたんだい?」


「この少女だ。アリスという」


「ほう。暗殺者かい? この娘の職業は」


「わかるのかい?」


「そりゃもう。私には転職に関する様々なスキルがある。当然のように相手の職業くらい判別できるさ。まあそんな真っ黒な格好してれば見た目でわかるだろうね。男の方、あんたも暗殺者だろう?」


「ほう。流石だな」


「いや。シンみたいな真っ黒な格好をしていればそりゃもう当然のように」


「それで、どの職業に転職するんだい?」


「そういえば決まっていなかったな。どうする?」


「支援系の職業がいいんじゃないかしら?」


 ユフィが言う。


「敵にデバフかけられたりする職業がいいかもね。面倒な敵も出てくるだろうし」


「お婆さん。相手にデバフを掛けられる職業はないか?」


「そうだねぇ。だったら、踊り子なんかおすすめだよ」


「踊り子?」


「踊りで相手にデバフをかけたり、逆に味方のステータスをあげたりできるんだ」


「ふむ。良さそうだな。とりあえずは転職させてみてくれ」


「ほいさ! ではいくよ! 転職魔法! 暗殺者アリスよ! そなたは今から踊り子になるのであーーーーーーーる! ほわあああーーーーーーーーーーーーーーー!」


 転職導師はアリスに魔法をかけた。アリスの恰好が変わる。えらく露出度の高い、ヒラヒラとした恰好だ。


「どうかな? シン」


 アリスは顔を赤くしていた。


「些か目のやり場に困るな」


「くっ! そういう路線でシンを悩殺しようっていうの! 露出系で! 負けてられないわ! ねぇ! お婆さん! 私も露出の一番高い職業に転職させて!」


 マリサは対抗意識を燃やしていた。


「いいのかい? 露出の高い職業に転職で?」


「うん! 一番高い奴!」


「ほわああああああああああああああ! 魔法使いマリサよ! もっとも露出が高い職業に転職せよーーーーーーーーーーーーー!」


 転職導師はマリサに魔法をかけた。マリサの職業と恰好が変わる。


「これでダーリンを悩殺……え?」


 マリサはパンツ一枚のような恰好になっていた。パンツではないか。なんだか布のようなものを尻周りに巻き付けてある。当然上半身は裸だ。乳房をぷるぷる揺らしている。


「……な、なに、この恰好!?」


「これはモンク系のジョブじゃ!。スモウレスラーと言って、限りなく全裸に近い職業で闘う漢のジョブじゃ!」


「な、なんか違う。これは……露出は高いけど、色っぽくない!」


「確かに色っぽいというより、頭のおかしい痴女のようだな」


「ね、ねぇ! もっとまともな職業に転職させてよ!」


「うるさい娘だのぉ。何に転職するか決めてからじゃ」


「もっとエッチなの! ダーリンがむらむらしてきて、襲い掛かってきそうな! 色っぽい職業!」


「はあっ。では魔法をかけるぞ! スモウレスラー、マリサ! もっとエッチでむらむらする職業になーれ!」


 マリサは魔法をかけられた。黒い悪魔のような恰好になる。尻尾も生えていた。


「な、なにこれ」


「サキュバスじゃな」


「……サキュバスって職業だったの?」


 ユフィは訝しむ。


「種族が変わってないか?」


「相手を誘惑する魔法が使える。デメリットとしては男の精液が欲しくて欲しくてたまらなくなるという性質がある」


「こ、これよ……こういうのを求めていたのよ。ねぇ、ダーリン」


「なんだ?」


「今夜は寝かさないわ。マリサもう我慢できないもの。ダーリンの濃い精液が欲しくて欲しくてたまらないの」


 小悪魔的になったマリサが迫ってくる。


「面白そうだな。俺も転職しよう」


「ダーリンも?」


「私も転職しようかな?」


「ユフィまで!?」


「もはや何パーティーかわからないな」


「いいじゃない。合わなかったら戻せばいいんだから」


「何の職業に転職するんだい?」


転職導師は俺に聞いてくる。


「人の役に立つ職業につきたい。人の命を救えるような。傷ついた人を癒せるような」


「そうであるならば、白魔導士系のジョブがおすすめだねぇ」


「白魔導士?」


「回復や蘇生魔法を使えるジョブだよ」


「そうだ……それにしよう。それを頼む」


「そうか。では、暗殺者シンよ。おぬしはこれより回復術士(ヒーラー)だ。ほわあああああああああああああああ!」


 俺は魔法によりヒーラーになった。白い司祭のような恰好になる。


「こ、これが生まれ変わった俺。これでやっと人の役に立てる」


「いや、今まで沢山役に立ってたでしょシン」


「それで勇者ユフィよ。そなたは何の職業に転職する?」


「私もたまには女の子みたいにキラキラしたい! キラキラ輝いて、皆から注目されるような職業になりたい!」


「そうか。ではキラキラ輝くような職業に転職させるよ。勇者ユフィよ! キラキラと輝く女の子らしい職業になああーーーーーーーーーれ! ほわあああああああああああああああ!」


 転職導師ユフィに魔法をかけた。


「なにこれ?」


 ひらひらとした煌びやかな衣装を着たユフィがいた。実に女の子らしい職業だ。手にはマイクを持っている。


「その職業はアイドル。歌って踊って味方のHPやMPを回復させる踊り子に近い職業だね。ただ、召喚士のように『ファン』という傀儡を召喚して戦わせる事もできる職業だ」


「な、なんだかよくわからないけど強そう!」


「さて。転職も終わったし行くか」


「うん。行こう行こう」


「お代を頼むよ。一回金貨5枚だ」


「結構するな」


「転職導師はレアジョブなんだよ。それだけの価値がある」


「ああ。わかった。では」

 

 チャリン。俺達は金貨25枚を支払った。


「それではいこう」


「ではごひいきに。またドゥーマ神殿に来てくれる日を楽しみにしているよ」


 俺達はドゥーマ神殿を去った。


「ところで俺達は何のパーティーなんだ?」


「わからない」


 アイドルになったユフィは語る。アイドル。ヒーラー。サキュバス。踊り子。カオスだ。


「勇者からアイドルに変わったからアイドルパーティーか」


「……変なパーティー名ね」


 ユフィは嘆いた。


 ともかく俺達はドゥーマ神殿を出た。新しい職業を試してみたくなったのだ。


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