転職のためドゥーマ神殿へ
王国ケセウスからはアンデッドの脅威が消え去った。
「いやいや。どうもどうも。シン殿。おかげで助かったのじゃ」
王国ケセウスでの事だ。アンデッドが消え去ったと聞き、ちゃっかりと国王と王子カインは王国に戻ってきた。ちなみに王妃は浮気ばかりする国王に嫌気がさし、当の昔に離婚してこの国にはいないらしい。元々は別の国の王女で、祖国に帰って行ったそうだ。
「いやー。私はシン殿の事を最初から高く評価しておりました。シン殿ならこれくらいはやるだろうと思っていました。実に見事でしたよ」
俺を追放したカイン王子はそう語った。何を言っているのだろうか。あれほど役立たずだの無能だの、何もしていないだとか言った上に俺をクビにしたのに。どれほど調子がいいのか。
「して、シン殿。約束の褒美じゃ。受け取ってくれ」
「ありがとうございます」
俺達は金貨100枚を手に入れた。安い金額ではないが、やったことに対してだとすると安い気もする。王国を救ったのだから。ただ別に見返りが欲しかったわけではない。だからこの金額でもいい。貰えるものは貰っておくが。金はあっても困るものではない。
「して、シン殿。我が王国に戻ってくる気はしないか? 報酬なら弾む。貴公の力が必要なのじゃ! この通りじゃ!」
国王は頭を下げた。
「ほら! カイン! 貴様も頭を下げぬか!」
「な、なぜ私が! くっ」
カインも頭を下げさせられる。
「残念ですが国王。俺にはやる事があります。勇者ユフィと旅をする。そして世界を混沌より救う。それが俺の使命です。俺はもうどこの組織にも所属するつもりはありません」
「……そうか。そなたの意志は固いようじゃな。微力ながら協力させてもらうぞ」
「ええ。その時が来たらまたお願いします」
俺達は王国ケセウスを去った。四天王の一人アルベドは倒した。だが、逆に言えば残りの三人は残っている。さらには当然のように魔王も。世界の脅威はまだまだ存在する事だろう。俺達の旅は続く。
◆◆◆
「ちょっと、思ったんだけど」
旅を再開した矢先だった。
「ダーリンは暗殺者だし。アリスも暗殺者だし。なんで、パーティーに同じ職業のメンバーが二人もいるの? アンバランスじゃない?」
マリサは疑問を呈していた。
「それもそうだ。思えば俺は神託により選ばれた勇者パーティーのメンバーではない。本来であるのならば職業被りはなかった。選ばれていたのはアリスだったのだからな」
俺は頭を悩ませる。
「つまり邪魔者は俺か……そうだな。俺がパーティーを抜ければ職業被りはなくなる。長い間世話になったなユフィ。俺はパーティーを抜ける!」
「や、やだっ! ダーリンが抜けるなら私も抜けるっ! ダーリンに付いてく!」
「シンが抜けるなら、私も付いてく!」と、アリス。
「わ、私も! 私もシンに付いていきます!」とユフィ。
俺がパーティーを抜けた瞬間、皆がついてきた。
「……待て。これでは何も変わっていない」
俺は気付いた。
「というよりも職業が被ってると何か問題でもあるの?」と、アリス。
「問題はあるって言えばあるわけよ。例えばトレジャーハンターだったら探索に便利だったり、神官だったら回復魔法や補助魔法使えたり、戦略や利便性に大きな差が出てくるのよ。同系統の職業のメンバーがいると、それだけ戦略が狭まったりするのよ」
「そう……そんな事が」
「ぶっちゃけアリス。ダーリンの下位互換じゃん!」
「下位互換! かいごかん! か・い・ご・か・ん! ううっ! ううっ!」
バタ! ショックのあまりアリスは倒れた。
「マリサ、真実は時に人を傷つける。言葉には気を付けろ!」
「ご、ごめんなさい、ダーリン。けどダーリンも認めているようなものじゃない」
「い、いいの。私、役立たずだもの。シンがいればそれでこのパーティーはいいの。もういい、私みたいないらない子、死ぬわ!」
アリスはダガーをクビに押し当てた。
「ま、待て! アリス! 早まるな!」
「そ、そう! 何も死ぬ事はないじゃない!」
「それだったら、職業を変えにいきますか?」
ユフィは聞いた。
「職業を?」
「はい。ここからしばらく行った先にドゥーマ神殿という神殿があるんです。そこで職業を変える事ができます」
「そ、そうね。それがいいわ。私には暗殺者としてのこだわりがない。生まれた時からその選択肢しかなかっただけだもの」
「職業変更(ジョブチェンジ)か。アリかもしれないな」
「じゃ、決定ね。そのドゥーマ神殿に向かいましょう!」
こうして俺達勇者パーティーは職業変更(ジョブチェンジ)の為ドゥーマ神殿へ向かった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます