四天王の一人を即死させる

俺達はその場所へたどり着いた。王室だ。


普段国王が使っていた部屋だ。


ものすごい醜悪なオーラを感じる。


「ダーリン……」


「間違いない。この不吉でさらに強力なオーラ。四天王の一人アルベドはそこにいる」


「うん」


「皆、覚悟を決めろよ」


 俺達は王室の戸を開け放った。そこにアルベドはいた。


 ローブを着た魔術師風の男だ。だが、彼を男と言っていいのかわからない。スケルトンと同系統の上位種。リッチだ。骨で出来た化物である。

 圧倒的な魔力、そしてオーラは解析魔法など使わずとも、瞬間的に下級アンデッドとは格が違うという事を思い知らされる。


「なんだ! 貴様等! どうやってここまでたどり着いた! デュラハンはどうした?」


「俺達がここまでたどり着いた、という事が答えを指示しているとは思わないのか?」


「ま、まさか! 本当にデュラハンは倒せれたのか」


 俺は答えない。しかし、アルベドはそれを肯定と捉えたようだ。


「ま、まさか人間に! デュラハンが倒されるとは! 些か人間を侮っていたようだな」


 アルベドの気力が充実する。


「名乗っていなかったな。我の名はアルベド。魔王四天王の一人! 暗殺者よ! 名を名乗る事を許そう! 死にゆく貴様の名、この俺が覚えていてやる!」


「シン・ヒョウガ。暗殺者(アサシン)だ」


「そうか。シン・ヒョウガか。貴様の名、覚えていてやる。はあああああああああああああああ! 死霊術(ネクロマンス)サモン・アンデッド! スケルトン・ドラゴン!」


 アルベドはネクロマンサーだ。その戦闘スタイルは召喚士に近い。魔法陣が出現し、骨で出来た竜が姿を現す。


「さあ! いけ! スケルトンドラゴン!」


 グオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!


 どこに声帯が残っているのか、骨で出来た竜に。しかし、スケルトンドラゴンは吠えた。


「……くっ。ダーリン。こいつ、やばい」


「詳しい詳細は省くけど、この骨ドラゴン、レベル1000は超えている……アルベドのレベルは99999よ!」


『アルベドのステータスだ。レベル9999。攻撃力50000防御力50000魔力99999敏捷性50000。保有スキル。即死無効。物理攻撃無効大。魔法攻撃無効大。状態異常完全無効化』


 流石は魔王の四天王の一人。アルベドだ。立派なステータス、そして保有スキルだ。


「ユフィ、マリサ、アリス。何とかスケルトンドラゴンの注意を引き付けろ」


「う、うん。やってみる」


「俺はアルベドを討つ」


「わ、わかったわ、ダーリン。その役目、引き受けるわよ」


「うん。シン、気を付けて。相手は魔王四天王、いくらシンでももしかしたらがありうる」


「ああ。気を付けるよ」


「じゃあ、いくわよ! ホーリースパイラル!」


 マリサは聖属性の魔法を使用した。


「はああああああああああああああああああああああああああああああああああ!」


 ユフィは剣を振るう。キィン! スケルトンドラゴンの骨は堅い。甲高い音がした。


 ガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!


 魔法やブレスは使えないが、それでもドラゴンの牙や骨は健在だ。


「きゃっ!」


 強力な爪に、ユフィは弾き飛ばされた。


 さて。仲間が稼いでくれている時間を俺が無駄にするわけにもいかない。


「ふっ! 貴様! 俺がネクロマンサーだと思って舐めているな? 一人で勝てると思っているのか? 脆弱な人間が!」


「試してみればいいさ」


「ふざけるなっ! 舐めるなよ! 人間が! ダーク・フレア!」


 アルベドは魔法を放った。暗黒魔法だ。オーソドックスな暗黒波を放つ。


 俺はそれを避けた。当たらなければどれほど強力でも大した意味はない。


「くそっ! ちょこまかとっ! このハエが!」


「その程度か……アルベド。だったら終わらせてもらうぞ」


「な、なんだと! なにっ!」


「スキル発動。絶対即死」


 俺はスキルを発動する。ダガーが走った。俺はアルベドを切り裂く。瞬間、何も起こらなかった。時が止まるかのような錯覚を起こる。アルベドは笑った気がした。


「ぐふっふ。知らんのか? 我等アンデッドには即死に対する耐性が存在する。効かないのだよ。暗殺者のスキルなど。所詮は暗殺など生者にしか通用しない児戯」


「最後の言葉がそれでいいのか?」


「な、なんだと! 何を」


「俺の『絶対即死』に例外はない」


 たとえ神でも悪魔でも魔王でも。


「当然、四天王の一人アルベド! 貴様でもだ!」


「な、なに!?」


 アルベドの体が真っ二つに裂けた。


「な、なんだと! アンデッドである私の身体が! 馬鹿なっ! それも一撃でっ!」


 アルベドの体は真っ二つになり、塵となった。


「う、嘘だ! 嘘だああああああああああああああああああああああ!」


「最後のセリフが随分と見苦しかったな」


 俺は呟く。


「即死完了」


「すごい! ダーリン。四天王の一人を倒したよ! それも一撃でなんて!」


「これでまた私達の目標に近づいたわ! 魔王軍の四天王を倒したんだから、魔王軍は大きな戦力ダウンよ!」


「……そうか。それは良かった」


 俺達は四天王の一人アルベドを倒した。この出来事が俺が思っていたよりも魔王軍に衝撃を与える事になるとは、この時俺はまだ知らなかったのである。


 ◆◆◆


魔王城。そこには魔王がいた。そしてアルベドを除く四天王の三人もまた。


「ん? どうした? アルベドがおらんではないか」


「ま、魔王様! 大変であります!」


 手下となり働いている下級魔族が走り込んできた。


「ん? どうした?」


「魔王様! 四天王の一人! アルベド様が勇者ユフィのパーティーに打ち滅ぼされました!」


「……ほう」


「なんという事ですか」


「これは勇者パーティーに対する評価を改めなければならない。あのアルベドを打ち倒すとは」


「どうされますか? 魔王様。些か警戒をした方がいいかと」


「うむ。そうだの。評価を改めなければならぬ! 勇者ユフィの勇者パーティーを今まで以上に警戒せよ! そして必ず息の根を止めるのだ」


「でしたら魔王様。私に行かせてはくれませぬか」


 ローブを着た女性がいた。彼女もまた四天王の一人だった。


「うむ。クレスティアか。行ってこい。必ず勇者ユフィのパーティーを殲滅せよ!」


「はい。必ず」


 彼女はダークエルフだった。ローブを着た魔法使い風の女性。だが、魔法使いではない。彼女は精霊術士。しかも全属性の精霊を使いこなす。精霊術士を極め者(エレメンタト・マスター)であった。









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