デュラハンとの戦闘

「アルベド様」


「なんだ?」


 王国ケセウスを制圧したアルベドの前に一人の騎士がかしづく。鎧の騎士だ。当然のように、彼もまた人間ではない。アンデッドだ。


 見た目からはただの鎧の騎士にしか見えない。


「どうやら人間達がこの場所に向かってきているようです」


「人間達? どこの国の軍だ?」


「それが数名です。勇者ユフィ率いるパーティーのようです」

 

 鎧騎士は答える。


「勇者ユフィか。愚かな! 高々数人の人間ごときが、我等魔王軍に歯向かうなど!」


「いかがされましょうか?」


「よけ! デュラハン! その剛剣で勇者パーティーをねじ伏せてこい!」


「わかりました。それとアルベド様、ひとつだけ懸念材料があります」


「懸念材料?」


「暗殺者です。シンという暗殺者。あまり良くない噂話を聞きます」


「暗殺者だとっ! くっはっはっはっはっはっは! 俺達アンデッドは刺突武器に対する高い耐性を持っている! 不意打ちをするしか能のない暗殺者に何ができる! 奴らの持っている暗殺スキルは所詮は生者を限定したもの! 我等アンデッドには効かぬ! 恐るるに足らぬわ!」


「はっ。わかりました。では、討伐に向かいます」


 こうして鎧騎士のアンデッド。デュラハンが向かった。


 ◆◆◆


「「「ウボオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!」」」


 グールやゾンビの鳴き声である。


『『『カタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタ』』』


 スケルトンの骨が鳴る音である。


「うわー……」


 王国に入るなり、ゾンビやグール、それからスケルトンが大量に押し寄せてきた。


「ユフィ。マリサ。レベリングで身に着けたその力を見せてくれ」


「わかったわ! ホーリーレイン!」


 マリサはホーリーレインを放った。聖属性の光の矢。ホーリーアローの上位発展魔法だ。複数のホーリーアローが下級アンデッドを襲う。


「「「ウボオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!」」」


アンデッドたちが消滅していく。


「バニッシュ!」


 ユフィの放ったのはアンデッド限定で聞く、退魔系の魔法だ。聖なる光がアンデッドを消滅させていく。


「「「ウボオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!」」」


 こうして障害となるアンデッドが果てた。


「うっ、ううっ、ううっーーーーーーーーーーーーーーーー!」


 ユフィは涙を流していた。


「なぜ泣いている? ユフィ」


「だって。嬉しくて。シンと出会ってから初めて役に立てたもの。敵は全部シンが倒しちゃうし。私観てるだけで。おかげでレベルもあがらなかったし」


「……そうか。すまない。気が回らなかった。雑魚は回すようにしよう」


「気にしないでいいわよ。弱かった私が悪いんだから」


「いや。パーティー全体が強くなる事は重要だ。この先何が起こるかわからない。長い目で見れば遠回りが近道になる事もある。先に進もう」


「うん」


 俺達は王城に入っていく。


 ◆◆◆◆◆


「ろくに敵が襲ってこないな」


 俺達は拍子抜けするほどあっさりと進んでいく。


「もっと妨害が来るかと思った」


「雑魚じゃどうしようもないと思ったんじゃない?」と、ユフィ。


「そうだな。その可能性は高そうだ。そこから導き出される推論は」


 広間に行き当たる。


「それなりの強敵が出てくる、という事だ」


 そこには不気味な気配を放つ騎士がいた。鎧騎士だ。


「貴様達が勇者ユフィのパーティーか」


「そうです。あなた達アンデッド、そして四天王一人、アルベドを討ちに来ました」


 ユフィは答える。


「マリサ、あいつに解析(アナライズ)をかけろ」


「はい。ダーリン」


 マリサは解析魔法をかけた。


『デュラハン。lv500。HP10000.攻撃力5000防御力5000魔力5000敏捷性5000.保有スキル。状態異常無効。即死無効』


即死無効はアンデッド特有の保有スキルだ。アンデッドは死んでいる。だから、死ぬのは矛盾している。死んでいるアンデッドを暗殺スキルなどで殺す事はできないという事だ。奴らは消滅させるよりない。


「つ、強いわね。流石に」


「ユフィ。マリサ。アリス。できるだけ俺抜きでやってくれ」


「わかったわ」

 

 ユフィは剣を構える。


「人のステータスを覗き見るか。私は解析魔法など使えぬ。騎士は己の剣のみで闘うからだ!」

 

 デュラハンは剣を構えた。


「来る!」


 迅速な一撃。デュラハンが消えたかと思った。


 キィン! 


 デュラハンの剣とユフィの剣が交錯する。


「くっ!」


 ユフィは弾き飛ばされた。しかし、何とか体勢を立て直す。


「やっば。あのダンジョンでレベル上げしてなかったら、今ので死んでたかも」


「煉獄地獄(ヘルフレイム)!」


 マリサは炎系最上級魔法を放った。しかし、デュラハンはびくともしない。


「う、うそ! 聞いていない!」


「……ふっはっはっはっはっはっはっはっは! 効かぬ! 効かぬぞ! その程度の実力で魔王様の四天王が一人! アルベド様を討ちに来たのか! 片腹痛いわ!」


 キィン!


「つっ!」


 アリスは背後から強襲した。しかし、剣でそれを防がれた。まともな生物のように前方しか見えないというわけではないようだ。目で確認をしていない。気配か。死角などないと思った方が良い。


「甘い! 甘いぞ! その程度の攻撃で俺を討てると思うなよ!」


「やれやれ」


 仕方なく俺が前に出る。


「レベル上げはまたの機会に考えよう」


「貴様! シンという暗殺者か! なかなかに強いらしいな! だが、所詮人間での話! 我等アンデッドの敵ではないわ」


「敵でないかどうかは試してみればわかる事だ」


「いくぞっ! くらえっ!」


 デュラハンは斬りかかってきた。


「なにっ! 消えた! そこだ!」


 デュラハンに死角などない。隙をつくという戦略は取れない。奴が反応できるよりも速く。速く。速く。攻撃を放つ。それだけだ。


「スキル発動」


「くっくっく! 暗殺スキルか! 馬鹿め! 我々アンデッドには即死スキルの無効化があるのだ! 無意味だ!」


「絶対即死」


 俺の即死スキルには例外はない。神でも魔王でも。そう、勿論、アンデッドでもだ。


「な、なに! ぐっ、ぐわああああああああああああああああああ! 馬鹿なっ! 我等アンデッドは死を超越しているのだぞ! なぜ我々を即死させられるっ!」


デュラハンは塵になった。


「先に進むか」


「すごっ」


「あ、改めてみてもすごいわ」


「あんなボスキャラをスライムみたいに倒すなんて」


「何を驚いている。いくぞ。ぼうっとしている程俺達は暇ではない」


「うん」

 

 デュラハンを倒した俺達はさらに奥へ進む。そこに魔王四天王の一人、アルベドがいるはずだ。




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