アンデッドの王 アルベド現る

「クックックック! アッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハ!」


 哄笑が響く。

王国ケセウス。そこに四天王の一角。不死者(アンデッド)のアルベドがいた。既に元王国と言ってくらい悲惨な状況であった。多くの死体が並び、そして不死者(アンデッド)が闊歩するこの国は既に人の都とは思えなかった。


「脆い! 弱すぎる! この程度か人間というものは! これでは魔王サタン様に敵対をしていた魔族の方が余程手ごたえがあったぞ!」


王国は迫りくる大量のアンデッドの物量に圧され、なすすべもなく制圧されていったのである。


「手ごたえがなさすぎるもの面白くない。少しは手ごたえのある奴がいないのか」


 アルベドは不気味な赤い目を光らせる。その望みが間もなく叶うという事を彼は知らなかった。


 ◆◆◆


 王国に向かう途中だった。俺はよぼよぼの老人と出会った。彼には見覚えがある。

 王冠をした威厳のある老人ではあるが、ボロボロであった。他にも何人もの遊女や使用人を連れている。


「あなたは国王陛下」


「「「国王陛下!?」」」


「ああ。彼は王国ケセウスの国王だ」


「つ、つまりあのなよなよ王子のお父さんって事?」


 マリサは顔を歪ませる。


「き、貴様は我が王国ケセウスにいた暗殺者。確か、シンと言ったか」


「はい。そうです。国王陛下、王国がアンデッドに襲われたそうですね」


「な、なぜそれを?」


「息子であるカイン王子から聞きました」


「カインと会ったのか。あの馬鹿息子! 国民を率い、一人でも多くを逃がし、最後まで闘うのが王族として生まれた者の矜持だというのに! あやつはいの一番に逃げ出していった! 王族の面汚しよ! なんと恥ずかしい奴じゃ!」


「はぁ……。ちなみに国王陛下はどうされたのですか?」


「見てわからぬか? 逃げてきたのだよ。我先にとな」


 前言と矛盾しすぎだろう。俺は溜息を吐いた。


「なんていうか、この親にしてこの子あり、みたいな?」


「蛙の子は蛙ってやつ?」


「血は争えないわよねぇ」


 女性陣三人は正直な感想を漏らしていた。


「シン殿! 頼む! どうか王国に巣食うアンデッドを倒し! 我が王国を取り戻してくれ!」


「他力本願もそっくり」


 ユフィは溜息を吐く。


「わかっておる。何が欲しい? 金か! 必要なだけやろう! 女か? ほれっ! 好きな女を持っていくが良い!」


 周りの遊女を指し示す。だめだ。この国王も襲われる直前まで女遊びをしていたのがすぐに察する事ができた。


「いえ、国王。俺はそういったものの為に、闘っているのではありません」


「そういえばめんこい女性を何人もつれてるのお? ほれ、お爺さんがお小遣いをやるから、わしの遊女にならぬか!?」


「か、完全に親子だ」


「流石あの王子のお父さん」


「そっくりです」


「彼女たちはそういう女性ではありません。彼女たちは俺達の仲間です」


「仲間。良い響きだ。聞いた事のない言葉。私にとって人間というのは従えるものだったからの。対等な存在などいなかった」


「寂しい人生ですね。それもまた。心配しなくてもいいです。俺達は魔王を倒す為に旅をしている。王国を制圧したのは四天王のアルベドだというではないですか。見過ごせません。言われずとも倒しに行くところです」


「……そうか。悪いの。せめてもの情けじゃ。もし、王国を取り返す事ができたらそれなりの褒美をやろう。では、わしは適当な店に入り、女遊びを続けるとしようかの! さて行くぞ! 遊びの続きじゃ!」


「「「はーい!」」」


「自分の国が攻め落とされたのに女遊びに行くなんて」


「ある意味すごい国王」


「……行こう。あんな国王が統治していた国を取り返すのは癪だが、四天王アルベド、そしてアンデッドを放置はできない」


 俺達は王国ケセウスへと向かう。

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