カイン王子との再会

ダンジョンから出てきた俺達は思ったも見なかった再会を果たす。


「ぜぇ! はぁ! ひぃ!」


 杖を突いて、まるで病人のように必死に歩いているカイン王子だった。


「……カイン王子。何をしているのですか?」


 あのケルベロスをけしかけてきた時以来の再会だった。特別会いたくもない顔ではある。


「き、貴様は! シン・ヒョウガ! それにユフィ殿ではないか。ややっ! 美しい女性が増えているではないかっ! それに二人も」


 王子は驚いていた。


「初めまして。カインです。王国ケセウスの王子です! お美しい三人方、是非側室から初めてはくれませんか?」


 そんな友達からみたいに言われてもなー。友達からでも断ったであろう。


「やだ!」「嫌です」


 マリサとアリスは即答した。ユフィは無視をしていた。先日口説いて即フラれた事を王子は忘れているようだった。


「そんな! がーーーーーーーーーーーーーーーーん!」


 フラれた王子はがっかりしていた。


「王子、王子がなぜこんなところにいるのです? ここは王国から大分離れた場所です。王子は王国にいるのではないですか? そのうえ護衛をひとりもつけてはいないではないですか」


 服はボロボロであり、普段の気品も感じられない。下品ではあったが、それでも衣服の小奇麗さや豪華さは王族らしく抜かりはなかったのだ。それが今ではなおざりになっている。まるで命からがら王国から逃げ出してきた様子だった。


「そうだ! シン! 聞いてくれ! 我らが王国ケセウスに突如アンデッドの大軍が押し寄せてきたのだ!」


「それで?」


「私は命からがら逃げだしたんだ! 我先にと! その後の事はわからない! だが恐らくは王国はアンデッドにより制圧されたと思われる!」


「そうですか。それでどうしたのですか?」


「頼む! 私が悪かった! 王国をアンデッドたちから取り返してくれ! この通りだ!」


 カイン王子は地に頭を伏せてきた。この男はプライドがないのか。まあいい。


「どうする?」


「この王子の頼みを聞く義理はないけど、魔王軍の四天王の一人がアンデッドで、それで死霊術師(ネクロマンサー)みたい」


 ユフィは語る。勇者であるユフィは俺の知りえない事を知っていた。俺など殺す以外に能のない暗殺者だ。


「アンデッドの死霊術師(ネクロマンサー)?」


「うん。だから恐らく王国に責めてきたのはそのアンデッドだと思う。魔王の四天王がいよいよ人間の王国を攻め入るようになってきたのよ。今までは魔界の統一で手間取っていたみたいだけど、今では魔王が統一したみたい。魔王って他にもうひとつ勢力があったみたいだけど、今の魔王が唯一王になった。それで、人間の国まで手を出す余裕が出てきたの。これが私の推察」


「そうか……魔王の四天王が。それは確かに捨て置けないな」


 カイン王子の願いを聞く事になるのは癪だが、ここは仕方ない。世界の平和の為だ。俺達の使命の為。


「いいでしょう。王国を制圧したアンデッドは俺達でなんとかします」


「本当か!」


「はい。本当です!」


「ありがたい! うむ! では行くぞ! シン! 我らの王国を取り返しに行くのだ!」


「何ちゃっかりと俺達のパーティーに加わろうとしているのですか?」


「ん? なんだ! 私は最強だぞ! この世界で最も強く、気高い存在だ!」


「マリサ。解析魔法をかけてみろ」


「はいさ。ダーリン!」


「な、なんだ! 私に何をするつもりだ。やめろ。うわーーーーーーーーーーーー!」


「普通に解析魔法かけるだけだって。そんなビビんないでよ」


 解析魔法の結果が表示される。


『カイン・ケセウス。年齢18歳。職業王子。レベル1。HP10.攻撃力1防御力1魔力1敏捷性1.保有スキルなし』


 偶然にも王子カインのステータスは俺が改竄したステータスとうり二つだったのである。


「うわっ。控えめにいってゴミ」マリサは引いていた。


「足手まといにしかならなそう」ユフィは嘆く。


「ぷっぷっぷ。さ、最強……ですって。そのメンタルはある意味最強」アリスは笑う。


「な、なんだと! 私は普段から王国で遊び惚けていて全く鍛錬をしてこなかったんだぞ! その私がなぜレベル1なんだ! 何かの間違いだ!」


「間違いじゃなく本当の実力でしょ」


「待て! 私の王国だ! 私も見届けたい! 力に! 役に立ちたいのだ!」


「黙ってなさい! 邪魔だから」


 マリサは裏拳を放った。王子の顔面にめり込む。


「ぐ、ぐおっ! な、殴った! 生まれてこの方殴られた事のない美形が! 拳がめり込んだぞ!」


「いいからそこで大人しくしていなさい。王国に巣食うアンデッドは私達が何とかするから」


「ち、ちくしょう……」


 王子は気を失った。魔法職のマリサの物理攻撃。しかも素手で一撃で昏倒するとは。流石正真正銘のⅬⅤ1だった。


「ともかく、行こうか。王国ケセウスに」


「うん。行こう。シン」


俺達は向かう。四天王の一人がいると思われる、アンデッドが巣食う王国に。邪魔な王子を置き去りにして。




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