三人でシャワーを浴びる

「先生……」


「なんだい? アリス」


 アリスはロバートのところにいた。


「やはり間違いありませんでした。高台から見えたのですが、シンの姿がありました。やはりシンはこの国に来ているのです」


「そうか……やはりシンは来ているのか」


「それから女を二人連れていました」


「女を?」


「見覚えがあります。一人は信託により選ばれた勇者ユフィ。そしてもう一人は魔道国の姫マリサ。二人とも有名人です。知っています。シンとはどういう関係かはわかりません」


「そうか……。あの勇者ユフィと行動を共にしているのか。考えられるのは私が信奉する魔王様に敵対する為に動いているとみるのが適当か」


「……先生」


「良い子だ。アリス。命令だ」


 ロバートはアリスの目を見た。その目には不思議な力が宿っていた。


「……シンを殺すんだ。それから同行している二人の女も」


 その視線には魔力が宿っていた。アリスの目から光が一層なくなっていく。より人形めいた目になる。


「はい。わかりました。シンを殺します。同行している女二人も殺します」


「そうだ。お前達生徒は私の言う事を聞いていればいいのだ。私のいう事を聞く人形であればいい。意思を持った暗殺者(アサシン)など私には不要なのだ。例えどんなに優秀であっても。シン・ヒョウガ! 貴様は優秀ではあったが私の傀儡にはならなかった! そしてくだらない感情を持った。貴様にアリスが殺せるか? 幼馴染のアリス。何の罪もないアリスを。殺せないとしたのなら、その時がお前の命日となる! くっくっくっくっく! あっはっはっはっはっはっはっはっはっは!」


 洋館にロバートの哄笑が響く。彼の心は魔族に支配されていた。それはレイドの時と同じように。魔王の傀儡となっていたのである。


「はい。先生」


 人形のようになったアリスは無感情に呟く。


◆◆◆◆◆


宿屋に俺達はいた。


「部屋を三つ」


 俺は宿屋のマスターに伝える。


「えーーーーーーーーーー! ダーリン。危ない? だってこの国治安が悪いんでしょ? マリサ襲われちゃうかも」


「それも確かに考えうる。マリサにしては珍しく一理ある事を言った」


「だからダーリン。部屋を二つとって、マリサとダーリンで同じ部屋で寝ましょう。そしてユフィは一人で寝てもらうの」


「私は襲われていいっていうの!」


「そうは言ってないけど」


「言っているようなものじゃない!」


 はぁ。俺は溜息をついた。結局俺達はキングサイズのベッドがある部屋をひとつとった。幸いなのはその分宿代が安く済んだ事だ。


 ◆◆◆◆◆


「ねぇ。ダーリン、一緒にシャワー浴びましょう」


「なぜだ?」


「いつ何時、何があるかわからないじゃない? 一人でシャワーを浴びている時にマリサが誰かに襲われて殺されてしまうかも」


「それは確かにありうる。俺と同じ暗殺者が襲い掛かってくるかもしれない。不意を突かれればマリサとて危うい」


「ユフィは後で一人で入って貰って」


「私は殺されてもいいんですか?」


「そうは言ってないけど」


「言ってるようなもんじゃないですか!」


 はぁ。俺は溜息をついた。結局俺達は三人でシャワーを浴びる事になった。


 ◆◆◆◆◆


 狭苦しい風呂場には二人の全裸の美少女がいた。


「ううっ……」


 マリサは平然と振舞っていたが、ユフィはそれでも裸を見られる事に抵抗があるようだった。


「ねぇ。ダーリン……」


「ん?」


「背中流してあげるね」


「な、あんんであなたばかり。私も流します!」


「じゃあ、二人で洗えばいいだけじゃない」


「そうですね。それもその通りです」


 こうして俺はユフィとマリサの二人に身体を洗われる事になる。


「ダーリンの胸板って、厚くって素敵」


 マリサは俺の胸板を洗っている。形の良い乳房が目の前でぷるぷると揺れる。


 危ないところだった。俺が暗殺術を極めた暗殺者でなければ。精神支配ができる俺でなければ。


 真っ当な男であるならばこんな光景を見せられて、情欲に駆られないはずがない。すぐにでも襲い掛かり、男としての本能の赴くままに交わっていたに違いない。


 ユフィもまた俺の背中をゴシゴシと洗っていた。


「ダーリン、じゃあ、次はマリサを洗ってよ」


「ああ」


「ずるいです! マリサばかり!」


「後で交代してあげるから。うるさく色々言わないでよ」


「はい……わかりました」


 ユフィは黙った。という事はこの後ユフィの身体を洗うという事か。俺でなければとても精神が持ちそうにない。


「じゃあ、ダーリンお願いね」


「ああっ」


 俺はマリサの背中を洗う。前も洗って。


「前」


「ここ」


 マリサは俺の方を向く。


「おっぱいもダーリンに洗って欲しいの」


「わかった」


 俺はスポンジを手に取る。


「スポンジとかじゃなくて、手で直接がいい。ダーリンを直接感じたいの」


「わかった」


「つぅ…………」


 ユフィは口惜しそうだった。


 俺は泡立てた手でマリサの手を洗う。柔らかかった。それは壊れないプリンのようで、独特の感覚がした。


「もっと、揉んでダーリン。激しく。マリサの胸に指の跡が残っちゃうくらい。ダーリンを感じさせて」


「ああっ」


 俺はマリサの胸を洗う。実際のところ泡立てた手で揉んでいただけだ。


「ああっ……ダーリン。ダーリンにおっぱい揉まれてる」


 やはり洗わせているのではなく、揉ませているという認識だった。


「ダーリン……いいよっ。このまま。マリサの膣内(なか)に入れても。マリサ、もう準備OKだから」


「私がいるんですよ! ストップです! 交代です!」


「ええーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!」


 マリサは不安げだ。


「そういう約束だったじゃないですか! 何をおっぱじめようとしてるんですか!」


「ぶうっーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!」


 マリサは頬に空気を送り込む。子供のようだ。


「ではシン、お願いします」


「いいのか?」


「はい。シンでしたら構いません。それにやっぱり、私もシンが好きです!」


 マリサに触発されたユフィは対抗心を燃やしていた。


「取られたくないんです。シンを。マリサにも誰にも。独り占めしたいんです」


「わかった……」


 俺はユフィの身体を洗い始める。


「マリサみたいに胸も洗ってください」


「あ、ああ」


 胸を洗う。というか実際は泡立てた手で揉むだけだが。


「どうですか? シン」


「どうって?」


「き、気持ちいですか? 私のおっぱいは」


「気持ちいいが、それがどうかしたか?」


「マリサのおっぱいとどっちが気持ちいいですか?」


「その質問は悩むな。甲乙つけづらい」


「……そうですか。シンの気持ちは今どこにあるのですか?」


 ユフィは聞いた。


 俺は――その時何となく。昔一緒にいた幼馴染の少女、アリスを思い出していた。俺はアリスが好きだったのか。それは女性としてなのか。恋なのか。家族のような近しい関係として、好意を抱いていたのか。それは愛であって恋ではなかったのではないか。様々な考えが渦巻いてくる。


「なんかダーリン、別の女の事を考えてそう」


「なぜわかる?」


「やっぱり! 昔の女だ! そうでしょう!」


「……当たりだ。大体は」


「誰なの?」


「幼馴染だ。家族同然に育った」


「そうなんだ。好きだったの?」


「俺にもわからん」


「ふーん。でも嫌いじゃなかったんでしょ? その子の事」


「ああ」


「忘れられないんだ。今でも」


「ああ。それもある。だが、それだけではない。彼女には償いきれない程の償いがある。だから彼女の事を忘れられないんだ」


 3年前のあの日。血に塗れた光景。雨。そして泣き崩れるアリス。ノアの亡骸。それが俺の原風景。仲良しだった幼馴染三人。皆戦争により孤児になり、孤児院で育った兄弟であり、家族であるような関係だった。無論血のつながりはない。だが確かな縁で繋がっていると感じていた。だが、その絆もあの日一瞬で崩壊した。


もみもみもみ。俺は考え事をしている間、手に収まってものを揉みしだいていた。


「ちょっとシン」


「なんだ?」


「話しながらいつまでも人の胸揉まないでよ」


「すまない」


 俺は手を離す。


「いいけど別に。私から頼んだんだし」


 こうして三人の入浴時間は過ぎていく。そして就寝する事になる。だがこの時に事件が起こる事となる。


 


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