倒すのが一瞬すぎて誰も見えなかった『絶対即死』スキルを持った暗殺者。護衛していた王子から何もしない無能と追放されてしまう~今更戻ってこいと言われても美少女だらけの勇者パーティーが俺を手放さないんで~
王子、シンの実力を試すべく、ケルベロスを放つ※ざまぁ回
王子、シンの実力を試すべく、ケルベロスを放つ※ざまぁ回
「王子!」
「……なんだ?」
カイン王子の元に、使用人が駆け込んでくる。
「暗殺者(アサシン)シンの居所がわかりましたぞ!」
「ほう……どこだ?」
「隣国のトリスティアです」
「……ほう。トリスティアか。では考えていた作戦を実行するとしようか」
「考えていた作戦ですか。どのようなものですか?」
「この王国に捕えられているSランクモンスター『ケルベロス』を手配しろ。それとビーストテイマーもだ。それからトリスティアの冒険者ギルドに情報を流しておけ。シン・ヒョウガが出向くように、情報を流しておくんだ」
「は、はい。わかりました」
◆◆◆
俺達はトリスティアの冒険者ギルドへ入った。
流石に俺達にちょっかいを出してくる者はいなかった。居やすくなって良いが、些か銅の冒険者を装えていない気もする。
そんな時の事だった。受付嬢が声をかけている。
「シン・ヒョウガさん」
「なんでしょうか?」
「なんでもSランクの危険なモンスターが国境付近の平地で出現したらしいんです」
「そうなんですか。それは大変ですね」
「なんか全然大変そうじゃないんですけど。それはいいんです。でも、なぜかそのクエストですけど、シンさん限定のプライベートクエストらしいんです。何でもシンさん以外には対処できないだろう、という事で。でも何かの間違いですよね。シンさんは銅の冒険者ですものね」
怪しいと感じた。作為的なものを感じる。間違いない。俺の真の実力を知っている、あるいは推測を持っている者の影は俺は感じた。
どうする? 放置もまた危険か。実際にSランクモンスターがいた場合、他の連中では対処仕切れない可能性も高い。
「ユフィ。構わないか? このクエストを受注して」
「私は構わないけど」
「受付嬢さん。そのクエスト受けさせて貰います」
「いいんですか? 危険そうですけど。銅の冒険者のあなたが」
「構いません」
「規約にあるように死亡してもギルドの方は保証はできませんけど、念の為。ただその為の死亡保険みたいなものに加入していると、それなりのお金は出るとは思うんですけど」
「構いません」
死亡保険なんて降りても俺には身寄りがいない。無意味だろう。強いて言うならユフィくらいのものか。身寄りと言えるのは。
「そうですか。それでは気をつけていってくださいね」
受付嬢は言っていた。俺達は目的地へと向かう。国境付近にある平野だった。
◆◆◆
確か、ここら辺だな。確かに獣の気配がする。だが、それだけだ。周囲には荒れた気配もない。
「クックックックック! 作戦通りだな」
声が聞こえてきた。その声は間違いない。
「カイン王子」
俺が最近まで勤めていた宮廷の王子。そして俺をクビにした人物だ。
「なぜ、あなたが」
「シン・ヒョウガ! 貴様の実力を確かめる為に私は来たのだ!」
「なぜですか? なぜそんな事を?」
「隣国からSランクのモンスターを2体討伐した英雄を探していると使者が来てな。私に疑念が湧いてきたのだよ。僅かではあるが貴様の言っていた事は真実なのかもしれないと思い始めた。だからそれを確かめにきたのだ!」
「……あなたが来ても実力を確かめられるとは思いませんが」
「私はただの観客だよ! 連れて来い! ケルベロスを!」
「「「ガオオオオオオオオオオオオオオオオオン」」」
檻に入っているのはケルベロスだ。三つの頭を持つ、魔界の番犬。それぞれの頭が咆哮をし始めた。
「こいつは魔界の番犬! ケルベロスだ! Sランクの危険なモンスターだ! 魔界の辺境でまだ子犬だったこいつを拾い上げ、王国でここまで育てたのだ! 普通の状態だったらまず捕らえられない!」
「……ケルベロスで俺の実力を測ろうと」
「そうだ! ビーストテイマーよ! ケルベロスを檻から放て!」
「はっ! 了解しました!」
ビーストテイマーとそれからサポーター数名でケルベロスを野に放つ。
危険だ。奴を野に放つなど。放置できるはずもない。
やむを得ない。俺が闘うより他にない。
「「「ガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア」」」
三つの頭が咆哮をする。
「さあ! ゆけ! ケルベロス! あの暗殺者が口先だけの無能だと証明してみろ! 私の考えは正しいんだ! 間違ってなどいない!」
ケルベロスが襲いかかってくる。三つの巨大な口が開き、俺を喰らおうとしてくる。
「スキル発動」
『絶対即死スキル』
俺はケルベロスと交錯した。何事もなくケルベロスは通り過ぎる。
しかし次の瞬間。
「「「グオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!」」」
血が迸った。ケルベロスは真っ二つに両断され、地に果てた。
「ば、馬鹿な!? あのケルベロスが一撃で。あんな一瞬で。そんな! 馬鹿な」
カイン王子はへたれ込んだ。
「あの時の言葉は嘘ではなかったのだな。やはりあの時、ベヒーモスとダークドラゴンを討伐したのは貴様か。トリスティアが探している英雄というのは、貴様だったのか」
「だからそう言っていたではないですか。王子」
「と、隣の女性は誰だ!? あ、改めてみると、美しい女性ではないか」
「パーティーの仲間です」
「名、名は何と申す?」
「ユフィです」
「私の名はカイン。カイン・ケセウス。王国の王子です。あなたのような美しい女性、見たことがない! 是非私の妻となってください!」
「妻ぁ!?」
ユフィは口を開けた。初対面でプロポーズするとは、流石王子。自意識過剰もここに極めりといった感じだ。
「は、はい! 何不自由しない生活を送らせると約束しましょう! 既に内縁の妻が何人かいますが、あなた様は正妻として迎える事をここに誓いましょうぞ!」
「す、すみません。私は勇者として旅をしなければならない身なのです。そういうお誘いは全てお断りしております」
「くっ……何という事だ!? この私がフラれるとは。ううっ」
王子は項垂れた。
「……はぁ。モンスターも倒したし。王子、俺達、行っていいですか」
「ま、待て! シン!」
「まだなにか?」
「貴様の実力はよくわかった! 貴様の実力は本物だ!」
「そうですか……」
「宮廷に戻ってくる事を許可する! 貴様のクビを取り消そう!」
「この人は、どこまで調子が良い人なの」
ユフィは頭を抱えた。
「残念ながら王子。俺はユフィと旅をすると決めていたので」
「ま、待て! 待遇なら考える! 良い女も何人か宛がってやろう! 何をしてもいい女だぞ! その気があれば妻にしてもいい!」
それでもカイン王子は食い下がってくる。
「しつこいなぁ。ユフィ、頼む。魔法かなにかでこの王子を黙らせて」
「え? いいの?」
「俺だと殺しちゃいかねない。この王子にそんな殺すほどの恨みがあるわけではないし」
「わかったわ。雷撃魔法(ライトニング)!」
バチバチバチ。雷が王子を襲った。
「ぎああああああああああああああああああああああああああああ!」
「「「王子!」」」
ビーストテイマーとサポーターは声をあげる。
「王子を連れて王国に戻ってくれ。それじゃあな」
「王子! しっかりしてください! 王子!」
俺達は黒焦げになった王子を尻目にトリスティアに戻っていった。
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