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あ、これはさっきと同じだ! と私は思った。石に触って、光に包まれて、不思議な感触があって、――そして魔法少女に変身するんだ!
くまに言われた通り、瑞希は石に近づいてそれに触れる。そして――やっぱり光が瑞希を包んだ。眩しくて思わず目を閉じてしまう。光は次第に薄れ、私は目を開け、そこには瑞希が立っている。
でも――。やっぱりそうだ。そこに立っていた瑞希は今までの瑞希じゃない。かわいいひらひらした服を着た、かわいい魔法少女だ。
――――
「かわいいー!」
私は思わず瑞希を抱きしめていた。だって、ほんとかわいい。瑞希は元がかわいいので、魔法少女の恰好をすると、本当にかわいくなる。
私の服と似た感じではあるけれど微妙にデザインが違って、そして私は赤系だけど、瑞希は青。石の色と同じになるんだね。見た目はお人形さん的だけど、気の強い瑞希にはすっきりとした青がよく似合う。
「やめて」
瑞希は私を押し戻した。我が身に驚くべきことが起こったというのに、クールな態度である。私は離れ、でもまたも言った。
「かわいいよ~。こういう服、よく似合うね」
瑞希はいつもシンプルな恰好をしている。性格的に、ひらひらと乙女ちっくなのはあんまり好きじゃないんだろうなあ。でもそういう可憐な衣装がよく似合う。
「……やっぱり、夢なのかな?」
自分の身体をまじまじと見まわして、瑞希は言った。
「夢? どっちの?」
すかさず私が聞く。すかさずくまが反論した。
「だから夢じゃない」
夢じゃないとしつこく言うので、そういうことにしておこうか。これは現実だって。ずいぶんと楽しい現実だけど。
「――私もほのかもすっとんきょうな恰好になっちゃったわけだけど。それで。これはどういうことなの?」
瑞希の質問に私が答えようとすると、横からくまがしゃしゃり出てきた。そして、瑞希に今までの事柄を説明したのだった。
魔法少女のこと。二つの世界のこと。この世界と異世界のために、戦わなくちゃいけないこと。それを瑞希は真面目な顔で聞いていた。
「……まあ、やれと言われればやりますけど」
くまの話が一段落して、瑞希はぶっきらぼうに言った。あまり嬉しくはないみたい。かわいい恰好になっただけで、私はテンション上がったというのに、この違い。
「頑張ろうね!」
横で私が言う。瑞希は私をちらりと見た。
「できる限りはね」
「ねえ、この恰好嬉しくない!? こんなかわいい服着るの初めてだよー。ていうか、顔もかわいくなってない!? 何割か増しに!」
「……うん、まあそうだね……」
テンションが低いやつだな。
くまがちょっと咳払いをして、私たちに注意を向けさせた。
「それぞれの石は一人の魔法少女に対応している。赤い石はほのか、青い石は瑞希。まだ他に二つあるから、あと二人魔法少女が残っていることになる。石が光り微かに熱を帯びれば、その石の持ち主である魔法少女が近くにいるしるしだ。残り二人の仲間を集めてほしい」
「頑張ります!」
他にもう二人魔法少女がいるんだ! 仲間集め! 楽しみ! どんな子が仲間になるんだろう……。わくわくしてると瑞希が言った。
「それ、私たちの仕事なんです?」
くまは無視した。無視して先を続ける。
「それぞれの魔法少女には固有の魔法がある」
そうだ! 魔法だ! 魔法少女なんだから魔法が使えて当然だよね! 期待でくまを見つめていると、くまは私にそっと言った。
「手を開いて、念じてごらん。そこに見えるものがあると――魔法の力で――生まれるものがあると……」
両手をおわんのようにして、私は念じる。思い描いてみる。何かが――何かが出てくる。たぶんきっと。それが何かわからないけど。出てきたらいいな。できれば、よいものがいい。魔法の力で、現実じゃなくて、はかないものであったとしても――。
掌の上に、揺れる何かが見えた。赤いもの。それは少しずつはっきりしていく。見つめているとゆらゆらとしたまま形がクリアになっていく。炎だ。赤い、小さな炎!
「すごい!」
私は叫んだ。ちっちゃなかわいい炎。でも不思議と熱くないな。きゅって手で包み込みたくなるけど、炎は炎だし、やけどするかもしれないからやめておこう。
「それが君の魔法だよ」
くまは言った。炎から目を離さぬまま、私は答えた。
「火の魔法なんですね。私、赤だから火属性!」
「そうだよ」
くまが笑ってる。瑞希の声がした。
「じゃあ私は?」
「同じようにやってごらん」
今度は瑞希の番。瑞希の方に気を取られていると、いつのまにか炎は消えていた。瑞希の手から生まれたのは、青色のほやほやした球体のようなもの。これは水だ。水が集まって頼りない形を作っている。
「青だから水属性!」
私は嬉しくなって言ってしまう。瑞希が苦笑いした。
「ちょっと単純だね」
「そうかなー」
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