アイドルにドッキリその二

 石畳で出来た部屋をみんなで出ると、想像もしていなかった光景が広がってたの。

 大勢の人たちが、私たちに向かって膝を地面に付けて、頭を垂れていたのだ。

 こうべをたれるって分かる?

 コンサートで埋まるお客さんぐらい多くの人が、私たちを見てみんな同じ角度で地面スレスレまで頭を下げてたんだよ。

 私たちはドッキリであることも一瞬で吹き飛び、流石に戸惑ったんだ。


「えっと、どういう状況? ナナ分かる?」

「流石の私でも、どういうリアクションが正解なのか分からない」


 セイラもナナも状況が飲み込めないみたいだ。

 それだと私には分かるはずがない。

 ディレクターは私たちをどうしたいんだ!

 それに目の前にいる人たちをよーく見てみると、日本人じゃない。

 ヒスパニックや黒人の人たちが沢山いた。

 よーくこんなに集めたなぁ。

 私たちが石になって固まっていると、群衆の中から二人がやって来た。

 二人ともイスラムの人たちが纏うような民族衣装風のスカーフを装っている。

 彼女たちは何かを話している。

 そして嬉しそうに泣いている。

 何で泣いてるの?

 えっと、言葉は何語だろう。

 英語? うん、英語だ。

 英語だけは得意だから分かるんだ。えっへん。


「何言ってるか分かる?」

「今英語だけは得意やって、心の声漏れてるで」


 くそう、やっちまった。

 でも、そんなミユキも私の服の袖を掴んでる。

 ミユキってこういうところずるいよね。

 可愛いんだから。


「私たちは神に見捨てられました。しかし、祈りを捧げること三万日。開かずの扉がようやく開き、私たちの目の前に女神たちが現れたのです」

「ええ。やはり伝承は事実だったのです。これで森の神の怒りを鎮めることができるかもしれません」


 えっとどういうこと?

 神?? 開かずの扉?? 伝承??

 そりゃあファンの人たちから見れば、私たちは女神かもしれないけどさ。

 だってディアーナって『月の女神』ていう意味だし。

 するとスカーフの老齢の女性は、突然私たちの前で跪いた。


「女神様、私たち無垢で脆弱な民をお救いください!」


 彼女たちだけじゃなく、多くの民衆みたいな人たちも動きを合わせ、何やら頭を地面に付けている。

 暫く変な沈黙が訪れた。

 私たちは彼女たちの言葉を聞いて、一斉にナナを見た。

 ナナは頷くと、皆を代表して決意に満ちた目でこう言った。


「状況がよく分からないので、もう少し説明をお願いします」


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