——四人目——

 その日ジョーは、双子と夕方まで戦った。


「エヘヘっ、やっぱり強いや僕!」


 ジョー達四人は並んで家路を歩いていた。その日のジョーの戦績は一敗三十四勝、最初にレンに負けた後は全勝している。


「調子に乗るな、ありゃコイツらの意識が悪い。まだお前を仲間だと思ってないんだろう、じゃなきゃ危ない場面はかなりあったぞ」


 しっかりと伸びきったジョーの鼻を曲げるレン。コウとブルの攻撃は全てシールドに阻まれていた。


「それにしてもジョーのオヤジさんのGiveギヴって凄えな! 俺の水はまだしも、コウの電気まで防ぐなんて思わなかったぜ」


 ブルがジョーを褒める、隣でウンウンと頷くコウ。


「エヘヘ、ありがとう。お父さんも喜ぶよ」


 ジョーは満面の笑顔で返事を返す。父親が本当に好きなんだなと感じるレン。


「そういや昨日、オヤジさん家に居なかったな? どこ行ってるんだ?」


 コウがたずねる。あっけらかんと返事を返すジョー。


「お父さん? もう死んでるよ」


 質問したコウが返事を聞いて固まる。


「悪気は無いんだ、許してやってくれ」


 レンがコウの肩を抱き、フォローする。


「良いよ良いよ結構前のことだし、今は乗り越えてるから気にしないでコウ君!」


 何故かジョーもコウと肩を組む。


「お父さんは、何で亡くなったんだ?」


 レンが穏やかな表情でジョーにたずねる。


「お父さん? 半年位前に、トモダチノ国の近くに猪の魔物が出てさ、コモリンの住まいの近くだったから、みんなで退治することにしたんだ……」


 当時を思い出したのか、沈んだ表情になるジョー。その後の言葉が出てこない。


「そうか、お父さんは立派に家族を守ったんだな……」


 しんみりと返事を返すレン。家族を守り死んでいった父親を想像し、感動する。うっすらと目尻に涙を浮かばせて。


「そんで僕とモモねぇがチャチャっと倒したんだけど」


「んっ?」


「やめなよって言ったのに『猪鍋ししなべだー』って言って食べちゃってさ」


「おいおい、まさか……」


 レンがゴクリと喉を鳴らす。


「お腹壊して死んじゃった!」


 パアッと笑顔になるジョー。騙されたことに気付き、レンと双子の口がポカンと広がる。


「そうか、お父さんは立派に家族を守ったんだな……」


 レンのモノマネをするジョー。ケラケラと一人笑っている。


「アハハッ! 師匠の泣きそうな顔、最高っ!!」


 腹を抱えて笑うジョーの肩を叩き、そっとつぶやくレン。


「明日、俺と百本組手な」


 肩に置いたレンの手が、メキメキと音をならす。


 基本ドMなジョーでした。

 

♦︎♦︎♦︎


「あれっ、メルは?」


 食卓に腰掛け、モモに質問するジョー。


「埋めたわよ。アイツあそこが好きみたい」


 モモは母親の手伝いをしながら返事を返す。


「ジョー、後でおにぎり作るから持って行ってあげてね」


 エプロン姿の母親がジョーに頼む。


「分かった! ねぇお母さん、晩御飯はカレーにして」


 スプーンを構え、注文するジョー。


「ダメよ、カレーは三日前に食べたでしょ。カレーは週に一回。みんなは何が食べたい?」


 各々がジョーの母親に食べたいモノを注文する。次々と目の前に料理が並ぶ食卓。ジョー達三人にレンと双子、それにデクとアチコが食卓に並んだ料理を堪能した。


「シズさん、後片付けは私がやりますので休んでて下さい」


 ジョーとモモの母親であるシズは、夕方になると全員の元を訪れ、食事を振る舞う。疲れていたシズは素直に聞き入れ、ソファーへと移動する。


「じゃ私も。ジョーあんたも手伝いなさい」


 夜七時、八月の外はまだ明るく、バットを持って遊びに行こうとするジョーを引き止めるモモ。


「俺もやる」


 レンが立ち上がり、デクにメルへ食事を届けるよう頼む。双子も立ち上がり、結局全員で食器を片付ける。


「アチコ、今度の医者探し俺も行っていいか? 色々と資材も集めたいし」


 レンが洗剤で磨いた皿をアチコから受け取り、水で流す。


「レンさんがくると、メルのことが心配かも」


 レンから皿を受け取り、タオルで拭きながらモモが言う。


「あー、多分大丈夫だ。双子は置いていくし、コモリンが居るからな」


 モモから食器を受け取り、息ピッタリなコウとブルが棚に並べていく。


「兄貴っ! 兄貴が行くなら俺達もお供するっす!」


 レンに駆け寄り訴えかける。


「ダメだ、お前達には課題があるからな」


「ねぇ! 何でコモリンがいたら大丈夫なの?」


 五人の周りをちょこまかと動き回るジョーが質問する。


「あぁ、なるほどね」


 ウロチョロしてるだけで、何もしていないジョーの頭を殴り、モモが閃く。


「コモリンが、メルから手紙がいっぱい来るって言ってたわ」


 暇な時は、アチコの所かコモリンの所に遊びに行っているモモ。


「俺が通りがかった時に、手だけ出してやったからな。まぁそう言うことだ」


 ジョー以外が全員納得する。


「じゃ、師匠もいっしょ??」


 出来立てのタンコブを摩るジョー。なるべく頭を叩くのは控えてやろうと考えながら、返事を返す。


「ヤッター! 四人で出掛けるの初めてだね、モモねぇ!」


 ピョンピョン飛び跳ねながら喜ぶジョー。飛び跳ねながら、バットだとかトランプだとかを集め、鞄に詰め込む。


「じゃ、食器洗い終わったみたいだから遊び行って来ます。今日はメルの横にテント建てて寝るから、僕の部屋三人で使って!」


 結局最後まで手伝わないジョーが、走り去って行く。


 その晩、ジョーがメルを地面から出してやり、デクと三人でトランプをして一夜を過ごした。





 

 

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