——反省点——
五人は一緒にジョーが持って来たおにぎりを食べる。
「少なくないっすか?」
ブルが一人一個のおにぎりにクレームを入れる。本来は二個ずつだったが、ジョーとモモがつまみ食いしていた為、数が少ない。
「この時代、美味しいおにぎりが食べれるだけでも感謝しなくちゃね!」
合計四個目のおにぎりを頬張るジョーが言う。ブルは納得した様子だったが、レンが弁当箱の違和感に気付いて反論する。
「何か半分くらい減ってねぇか?」
弁当箱の片方に寄って並んでいるおにぎり、明らかに空白部分におにぎりが置いてあった形跡があった。
「それにお前のお母さんの
ジョーとモモの母親、彼女の
師匠に鋭く突っ込まれ、視線が泳ぐジョー。その様子に確信を持つレン。
「……食ったな?」
低く鋭い言葉にジョーの心臓が大きく弾む。
( やばい、師匠のゲンコツもあたるんだよね)
逃げ出そうとジョーが考えていると、モモの叫び声が聞こえてくる。皆一斉にメルの方を向く。
「あっ」
モモに飛ばした飛行機を思い出し、食べかけのおにぎりを握りしめ、逃げ出すメル。
「後でまた掘り出すからねーーー!」
ジョーがメルの背中に投げかける。
♦︎♦︎♦︎
レンはトモダチノ国に必要な材料をリストアップしていく。
「こりゃかなり材料が必要だな。ジョー、この国にトラックはあるか?」
レンが隣を歩くジョーに質問する。
「軽トラックならあるよ! ただ道は車が通れるような状態じゃないんだよね」
四人はコモリンのいる門の近くまで移動する。そのまま山道を少し下ると、そこは土砂で塞がれていた。
「こりゃひどいな」
「ここに来た時からこうだったんだ。お父さんは、大雨で土砂崩れが起こったんだろうって言ってた」
ジョーが父親から聞いた情報を話す。
「なるほどな。ここが廃村だったからほったらかしか……」
当時のお役所仕事を思い出し呟くレン。
「よし、ココは課題で残すか」
レンは踵を返し、トモダチノ国へと戻っていく。
♦︎♦︎♦︎
四人はケン先生の住む、小学校のグランドに来ていた。レンがジョーに戦闘訓練をすることになっている。
「よしジョー、まずはお前の
レンがジョーに、最適な指導法を模索する為に質問する。
「待ってました! やっと僕の
ジョーは脚に力を溜め、五秒チャージで蹴りを放つ。目にも留まらぬ速さの蹴りが空を切る。そのまま両拳に力を込め溜める、五秒程で右、左と連続して拳を突き出す。突き出された拳の風圧で、コウとブルのリーゼントが揺れる。ジョーの動きの速さにパチクリと目を見開く双子。
「どう? 重たい物も持てるし、速く走ったりも出来るよ。凄いでしょ師匠!」
「あぁ、コリャ想像以上だ。良い矛と盾を持ってるな」
クシャクシャっとジョーの頭を撫でるレン。
「じゃまずは俺と戦ってみるぞ」
レンは腰道具を下ろし、首を左右に振り、ゴキゴキッと音を鳴らす。ゴム手袋を手にハメ構える。
「えっ? えっ?? えっ!?」
困惑するジョー、レンの事は尊敬していたが、負けるとはカケラも感じていない。
「やめようよ師匠! 僕空手習ってたから強いって」
レンと戦い勝つことより、レンが双子の前で負ける姿をさらすのが嫌なジョー。
「心配するな、勝てるか分からんが、負けはしない。倒すつもりでこい」
ジョーの気持ちを察したレン、挑発する様に強調して発言する。
「「兄貴っ!」」
先程のジョーの動きを見て、不安になる双子。
「まぁ見てろって。俺とやった後、お前らにも戦ってもらうからな。自分で戦い方を決めとくんだぞ」
「どうなっても知らないからね!」
ジョーが後屈立ちの体制で構える。右手と右脚に力を込めながら。
「こい」
レンの合図と共に右脚で地面を蹴り、一足飛びでレンの懐に入り、そのまま右の拳を突き出す。
「あれ?」
当たると思っていた拳は空を切っている。目の前にレンの姿は無く、シールドの発動が攻撃されたことをジョーに知らせる。
前に転がって直ぐ立ち上がる。今自分が立っていた場所を見ると、レンが右拳を突き出した状態で立っていた。
「ちょっと攻撃の意思がのっちまったか?」
シールドに阻まれ、反省するレン。あまりに無防備だったジョーの後頭部に、思わず力が入ってしまっていた。
「反省点一」
すかさずジョーが両手両足に力を溜める。
「反省点二!」
一瞬でレンが距離を詰め、今度はシッカリとジョーの顎を振り抜く。カクンッと膝が折れるジョー。
「アレレっ!?」
ジョーは左手で顎を押さえている、そこにはズキズキと痛みが広がっていた。立ち上がろうとするが、膝に力が入らない。脳が揺れ視界も揺れている。
「反省点三だな」
レンがジョーの頭をクシャクシャっと撫でる。
「俺の勝ちだ。どうだ、師匠として充分だろ?」
レンはジョーが回復するのを待って説明を始める。
「まず反省点一、攻撃が直線的過ぎる。溜めてから攻撃を放つ際、お前真っ直ぐしか攻撃出来ないだろ?」
レンはジョーの動きから、攻撃の動き出しにだけ注意して意識を向けていた。腰が僅かに沈んだタイミングで横に避け、ジョーの攻撃を交わしている。
「反省点二。溜めに時間をかけ過ぎだ、あんなもん殴ってくれって言ってるようなもんだぞ」
攻撃の際の溜め、ココを狙ってレンはジョーを倒した。
「最後が一番重要なんだが、反省点三。お前シールドに頼り過ぎだ、避けようと思えば避けれる攻撃すら避けない。この癖は絶対に直せ、いいな」
三つの注意点を聞き、
「おいおい、男が簡単に泣くんじゃねぇ。言っとくが今のは全部俺がお前の
ジョーの涙にフォローを入れる。がっしりと肩を抱き慰める、心優しいレン。
「あっ、あっ、ありがどうっ!」
ヒクヒクと泣きながらお礼を言うジョー。
「よし、次はコウとブルに戦ってもらうぞ。構えろジョー!」
結構スパルタなレンだった。
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