——愛と憎しみ——

 次の日、朝日が登るトモダチノ国を眺めながら、ジョーとモモは母親の作ったおにぎりを食べていた。


「うっま! 景色は良く無いけど、やっぱりお母さんの作ったおにぎりは最高だね」


 むしゃむしゃとかじりつくジョー。


「手抜きだけど、やっぱりママのおにぎりは美味しいわ。景色悪いけど」


 古い丸太に腰掛け食べる二人。目の前には住人が耕した畑があり、悪態を吐き続ける案山子かかしが埋まっていた。


「出しなさいこのクソガキどもっ! わわっ、やめろ、アッチにいけ! シッシッ」


 メルを見つめる一羽のカラス。首の動きだけで追い払おうと必死だった。


「一晩中埋まってたのに元気だね」


 モモのことを小娘呼ばわりし、宣言通り畑に埋め、メルを案山子かかしにしていた。


「しっかり案山子かかしの役目果たしてるじゃない」


 おにぎりの残りを口に放り込み、立ち上がるモモ。お尻についたゴミをパンパンっと手で払い、メルへと近付く。


「あのね、クソガキだとか小娘だとか言ってるけどあんた何歳なのよ?」


 地面から、顔だけ出ているメルの前にしゃがむモモ。アングル的に顔が赤くなるメル。


「フンっ! 私は二十歳、成人した立派な大人です」


 首を無理やり九十度に曲げるメル。


「はぁ〜? 私と二歳しか変わらないじゃない、それに大人かどうかは中身で決まるの。自分勝手に振る舞ってる間はコドモよ、子供」


 立ち上がるモモ、コレはコレでマズイアングルだと、視線を戻すメル。


「ったく、男の子ってどうして成長しないのかしら。ジョー! ここの土柔らかいから一人で引っ張り上げれるでしょ。出してあげて」


 一週間と聞いていたメル。一晩で出られることに安堵する。


「おけ! ちょっと待ってて」


 ジョーが二人の側に駆け寄り、土の中に埋まっているメルの両脇に手を突っ込み、掴む。そのまま力を溜めていく。


「ちょちょちょチョットだけ待ちなさい! 今は色々とマズイんです。ナニかとマズイんです! 子供には分からないでしょうが、後にして下さい」


 必死に懇願こんがんするメル。いぶかしげな表情のモモと、ひらめいたジョー。


「それでは元気良く、行ってみよー!」


 一気に足腰に力を入れ、引っ張り上げるジョー。


「ギャァアッ!!」


 悲鳴を上げ、身体をくの字に曲げるメル。


「ウゲッ! そっちか。ゴメンねメル、僕ウンコ漏れてるのかと思っちゃって……」


 痛みが分かるジョー。顔を歪め、自分も痛そうにしている。


「死ねヘンタイ!」


 顔を赤らめ去っていくモモ。


 痛みと羞恥心で苦痛の表情を浮かべるメル。その腰を摩ってあげる、優しい犯人のジョー。


♦︎♦︎♦︎


 ジョーと回復したメルは、共にレンの元へ来ていた。レンはコウとブルの三人で国の中を色々と見て回っていた。


「おうっ、早目に出してもらって良かったな」


 レンがメルの肩を叩きながら言う。ドスドスと肩に広がる衝撃に、レンに逆らう事を諦めたメル。


「……ありがとうございます、レン……さん。一つお聞きしたいのですが、レンさんのGiveギヴ、ちり紙様はメモ用紙のような紙も出せるのですか?」


 メルが恐る恐るたずねる。


「おう、出せるぜ。前に図面ひくのに出してみたら出せたからな。メモ用紙ってどれ位のサイズだ?」


 メルはジェスチャーで大きさをレンに伝える。レンは十五センチ真四角の白い紙を大量に出し、手渡す。


「ありがとうございます!」


 受け取ったメルはコートの内側からペンを取り出し文字を書く。二通書き、それを紙飛行機の形に折り畳み、空に向かって投げた。紙飛行機はそれぞれ別々の方向へと飛んで行く。


「おお! ちゃんと飛んでいったね! 誰に何て書いたの?」


 ジョーが紙飛行機を見て質問する。一つは方向的に見当がついていた。


「私もGiveギヴをこんな風に使うのは初めてで、実験を兼ねてコモリンさんに送りました」


 ちょっとだけ赤くなるメル。紙飛行機の一つはコモリンのいる門の方角へと飛んでいった。


「内容は、その『お元気ですか?』と一言だけです」


 メルの様子に察しがついたレン。ジョーの「何で何で発言」を止めるように、会話に割り込む。


「もう一通は?」


「もう一通は、憎っくき桃色娘にです。『刺され!』と書いて目に向かって投げてやりましたよ!」


 目に刺さり、痛がるモモを想像して笑い出すジョー。懲りない奴だとあきれるレン。


「でもそれ失敗するよ! 多分お父さんのシールドにはばまれちゃうね。次狙う時は『愛』を持って攻撃すると良いらしいよ!」


 ジョーはレンに教わったやり方をメルに教える。


( 憎いアイツに愛を持って攻撃する??)


 相反する感情に複雑な表情のメル。


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