——俺はなる!——
「良かったね師匠!」
アニメの質問に答えられず、漫画の意見に同意出来なかったレン。あれよこれよと答えを言っても認めてもらえず、最後はモモが助け舟を出した。
「コモリン、この人の
モモはレンに目で合図を送り、理解したレンが手の平からティッシュを出す。
「……ティッシュじゃ無くて【ちり紙様】だって言ってるだろ、ったく」
鼻をかむにもお尻を拭くにも使える貴重な紙。トモダチノ国では慢性的に不足しており、調達部隊が持ち帰る数少ないチリ紙を分け合って使っていた。それも最近ではあまり見つからなくてなっている。コモリンに取っても絶対に手放せない生産系
ジョーを先頭に村の中に入る一行。得意げにジョーがすれ違う人を説明してくれる。
住人の殆どが『クラッパー』と呼ばれるタイプの人間だった。元々は使えた能力だったが、今は意味がなくなり、皮肉を込めたスクラップと、その状態に
「この国だけでも世界一のお金持ちが十人は居るよ!」
「今は
必死に重い水バケツを運ぶ中年の男性を見て、レンがボソリと呟く。デクが中年の男性が持つバケツを、自分が運ぶと言っていた。
「いやいや大丈夫ですよ。コレは妻に頼まれた水なんです、自分で出来ることは自分でやる、コレがこの村でのルールですから。気持ちだけで充分です、ありがとう」
頭を下げ立ち去る男性。
他にも株価を当てる
「あっ! アチコさん!」
モモが手を振り駆け寄る。
「こんにちはモモちゃん。今日は随分と……、特徴的な人達を連れて帰ってきたのね」
「良いのよアチコさん、オブラートに包まなくて」
清楚で知的な印象のアチコ、楽しそうに女子トークに華を咲かせている。ジョーがみんなにアチコのことを紹介してくれた。
「アチコさんはこの村で一番凄い
ジョーがアチコに尋ねる。
「フフッ、もう決まってるんでしょ? そのまま真っ直ぐ進んでケン先生の所であってるわよ」
お上品に笑い、アチコが道の先を指差す。
「アチコさんの
母親の所に行こうかケン先生の所に行こうか迷っていたジョー。殆ど決まっていたが能力を見せたくて質問していた。
アチコはこの国唯一の、自らの足でやってきた人間だった。安全に暮らせる場所を探し、一人でコモリンの質問にもパスしている。普段はケン先生の助手をして働き、ケン先生と二人でこの国の進むべき道などを模索している。
「フンっ、大したこと無い
メルがアチコの
「アチコさんの凄さが分からない時点で、アンタの底が知れるのよ。次何か言ったら、一週間畑の横にカカシ代わりで埋めるから」
ヒイッと声を出すメル。ジョー達はアチコと一緒にケン先生の家を目指す。
そこには古い木造の学校が立っていた。横に長い平家の建物で、校長室を住居として利用しているケン先生。
「コンコンチワーっす! ジョー入りまーす」
ジョーが独特の挨拶で声をかける。扉のノック音と挨拶を掛け合わせた、ジョーオリジナル挨拶。
「はい、コンコンチワス。今日も無事帰ってきたねジョー君、モモちゃん」
真っ白な白髪と、長い口髭をたくわえ、ケン先生が優しい笑顔で迎え入れる。
「ケンちゃん大工さん見つけて来たよ!!」
ジョーはレンや双子、デクとメルなど簡単な経緯と能力の説明付きで話す。不足分はモモが補っていた。
「凄いじゃないか。今最も必要な大工だけで無く、電気や水道まで連れてくるとは」
「おいっ、オレ達の名前は電気や水道じゃねえ! 次言ったらぶっ飛ばすぞ!」
「あぁ、すまんすまんつい興奮してね。コウ君、ブル君許しておくれ」
頭をポリポリとかき謝るケン先生。
「それにメル君? だったかな」
あまり見た目に似合わぬ名前に確認してしまう。
「……そうです」
否定しようかと思ったがカカシになるのが嫌で受け入れるメル。
「実に素晴らしい
やっと自分の
「さすがご老人、良く分かってらっしゃる。どこぞの小娘とは違いますね!」
メル、一週間のカカシ生活が決定した瞬間。
「ねっ、ケンちゃん。大工さんは見つかったから次はどうしたら良い?」
ジョーは次なるミッションに心躍らせる。
「そうだなぁ、ちょっと待っておくれ」
ケン先生は瞼を閉じ、思考に耽る。脳内では様々な書物が飛び交い、答えのある一冊を導き出す。ケン先生の
「大工を仲間にした。すでにコックは居る……航海士はアチコさん、考古学者はまぁ私がするとして次は……医者か音楽家じゃな!」
トモダチノ国には医者がいない。今の所ケン先生の知識でどうにかなっているが、今後のことを考えると医者は必要だった。
「アチコさん、先に探すはどちらかな?」
アチコが
「医者です」
「そっか! じゃどっちに進めば会える?」
ジョーがアチコに尋ねる。アチコは今度は
「北ね、でもちょっと遠いから今回は私も着いて行くわ」
道案内としてアチコが立候補する。
「アチコさん行くなら私も行く」
心配元のメルも埋めるし、レンも居るから大丈夫だろうと安心するモモ。
「僕も絶対行くよ!」
ジョーが手を上げ、医者探しのメンバーが決まる。出発は一週間後に決まった。
「ところで大工だとか航海士とかってマンガの……」
コウとブルが疑問を口に出す。最後まで言い終わる前に、ジョーとモモが止める。
「思っても口に出してはダメ! もし口に出したら最後……、この物語は終わるわ」
口を自分の手で塞ぎ、コクコクと頷く双子。
危ない危ない……。
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