——多種多様——

 レンはコウとブルを起こす。最初こそ抵抗していたが、目にも止まらぬゲンコツを食らい、力量の差を思い知る。単純な二人はすぐさま、敵意が尊敬に変わっていた。


「分かりました! 俺達兄弟、師匠に一生ついて行きます!」


 頭を下げるコウとブル。


「弟子は一人で充分なんだよ。お前ら二人は俺の仕事の部下として連れて行く」


 ポンポンと二人の肩を叩く。


「ではアニキ! よろしくお願いします」


 声がハモる双子。ジョーとモモとも挨拶を交わし、ジョーを先頭に五人はを目指す。



♦︎♦︎♦︎



「あっ」


 ジョーとモモの声が揃う。そこには地面に突き刺さったままの骨ポマードと、それを掘り起こそうとするデクの姿があった。


「ゲゲゲっ!! あの姉弟が戻ってきた。デクっお前がチンタラやってるから、あのバケモノ姉弟が来てしまったではないですか、このバカっ!」


 骨ポマードが地面に刺さった状態で、偉そうにデクを叱る。立ち上がり両手を広げて骨ポマードを守ろうとするデク。


「お願いです、何でも言うことを聞きますから殺さないで下さい」


 デクは必死にモモとジョーに訴えかける。


「殺すつもりならとっくにやってるっての。ジョー、出すの手伝ってあげなさい」


 そう言って、モモは近くにある石の上に腰掛ける。


「ったく、どうやったら人間が地面に埋まるんだよ。おいブル、アイツの周りの土を濡らして柔らかくしてやれ」


 レンはブルに指示を出し、デクとジョーを手伝う。五分程で骨ポマードの救出に成功した。


「……お礼は言いませんよ! 元々埋めたのはそちらの野蛮な女性ですからね!」


 骨ポマードは、身体に付いた土を払い、モモを睨む。モモはその言葉を聞き、骨ポマードに踵落としをくらわせる。


「お礼は言え、アタシにじゃなく掘ったコイツらにね。それと埋められた原因はあんたでしょ、ナイフをか弱い乙女に投げた野蛮な骨ポマードは誰だったかしら?」


 言い返そうとする骨ポマードをキッと睨みつけるモモ。渋々お礼を言う骨ポマードと泣きながら頭を下げるデク。


「まぁまぁ! もう済んだことだし、恨みはブル君の水で流れたってことで!」


 ジョーの発言で、場の空気が少しだけ緩む。


「ところでお二人さん、行くところないならウチに来る??」


 骨ポマードとデクを誘うジョー。


「はぁっ!? コイツらも連れて行くの?」


 驚くモモ。


「良いじゃん、こっちのデク君は力持ちだから師匠の仕事手伝えるし、コッチの骨ポマード君は……、何が出来るんだろう?」


「何が出来るかですって!? 偉そうにこの……、お坊ちゃん。私はそこのデクより数倍凄いG iveギヴの持ち主なんです! さっきはナイフを投げましたが、私が投げたモノは何だって」


 デクより低い評価に怒り出す骨ポマード。聞いてもいないのにG iveギヴの説明を始める。


「何だってナニ? 車でも飛行機でも投げれるの?」


 モモが冷たく言い放つ。


「……私が手で持てるモノ限定です。でも一度認識した相手なら、必ず当てることが出来る凄い能力なんですっ!!」


 どうにか自分の評価を、デクより上げたい骨ポマード。


「そっ、じゃあんたウチに来たいならメッセンジャーやって」


 モモが思いつきを口にする。


「メッセンジャー!? 何ですかそれ!?」


 キーキーと甲高い声で聞き返す。


「メールよメール。手紙書いてあんたに投げさせたら、相手に届くんでしょ。出来ないの?」


 雑な扱いをしようとするモモに、ドン引く周りの人間。


「でっ、出来るに決まってるでしょう!」


「じゃ決まり。さすがに骨ポマードじゃ悪いから……、あんた今日からメルね、決まり」


 有無を言わさず話を終えるモモ。私の名前はとか行くとは言ってないとかブツブツ文句を言っていたが、ジョーの一言で諦める。


「モモねぇが決めたら文句言っても変わらないって、だってワガママなんだもん。ヨロシクね、メル!!」


 いつか復讐してやると、心に誓うメルだった。


♦︎♦︎♦︎



 林道からそれ、山道へと入る一同。歩きながらジョーがみんなに説明する。


「僕達の国はね、あっ! 国って言っても五十人くらいなんだけどね。その国のある場所は、お父さんが見つけたんだ」


 みんな慣れない山道で、ヘトヘトになっている。特にメルは後ろからデクが押さないと歩けない程バテていた。唯一余裕のあるレンが返事を返す。


「結構いるじゃないか。住む場所はあるのか?」


「元々あった村? 集落? みたいなところで、ちょっとだけ家もあるよ。超古いけど」


 ケラケラと楽しそうに笑うジョー。


「ただ全員は入り切らないから、テントとか交代で泊まったりしてる。僕は楽しいんだけどね、テント!」


 ジョーの家族は、交代のメンバーには入っていない。だがジョーだけはいつもテントで寝ていた。


「おう、結構やることありそうだな」


 レンは久しぶりの大仕事にワクワクしている。


「それと門番がいるから絶対気に入られてね、じゃないと入れないからさ!」


「何だそれ? 門番のG iveギヴか?」


 レンが質問する。


「そうそう。コモリンって名前なんだけど、世界がこうなる前は自分の部屋に引きこもってたんだって。今は僕達の国に引きこもってて、認められた人間以外は入れないんだよ」


 コモリンと呼ばれる人物を想像するレン。後ろを振り返る。そこにはヤンキーの双子とでかい図体のデク、それに全身真っ黒い服装のメルの姿が映る。


「俺はともかくコイツらは厳しいんじゃないか?」


 レンが後ろを指差してジョーに聞く。


「あははっ、多分師匠が一番怪しいよ!」


 納得がいかないレンだった。


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