——あぁ無情——

 戦闘を終えハイタッチするレンとジョー。コウとブルは駐車場にてのびている。


「凄かったねレン! Giveギヴもカッコ良いしケンカも強いんだね!」


 レンの戦いに大喜びのジョーは、レンを褒め称える。


「分かってるじゃねぇか。俺の【ちり神様】は便利で奥ゆかしく、そして強い」


 レンはクシャクシャっとジョーの頭を撫でる。


「それにしてもお前ら」


 突然拳を振り、ジョーを殴ろうとするレン。シールドが攻撃を阻む。


「やっぱり防御系Giveギヴか、二人とも全く警戒心無く、俺の戦いを見てたもんな」


 レンは幼い二人を守る意味もあり、一人で戦った。しかし戦闘中もお菓子を食べながら観戦する二人を見て、仮説を立てていた。


「そうだよ。でもコレは僕とモモねぇのGiveギヴじゃないんだよ。お父さんのなんだ」


「ジョー!!」


 突然の攻撃に警戒するモモ、呑気にGiveギヴの説明をするジョーを止める。


「大丈夫だってモモねぇ、お父さんのGiveギヴはバレたって問題ないよ。だって壊されるの見たことないもん」


 一度攻撃を受けたにも関わらず、未だに座ったまま話すジョー。


「そうかもしれないけど、今日初めて会った人にベラベラ喋るんじゃないの!」


 モモは、本日六度目となるゲンコツをジョーに食らわせる。レンはそれを見て理解する。


「痛い痛い痛いっ! もう、そのすぐ人を殴る癖直さないと結婚できないよ!」


 頭をこすり、やっと立ち上がりモモから距離を取るジョー。


「ハハっ悪い悪い、お前らをどうこうしようって気はないんだ。ただ気になると確認しないとすまない性分でね」


 レンは攻撃したにも関わらず、気にせずにジョーとモモの間の位置に座る。それを見てジョーもレンの横に座る。


「だからレン、僕にはGiveギヴある、モモねぇにもね。だから多分、レンより強いよ」


 ニコニコと悪気なく話すジョー。


「そうか、Giveギヴが二つ、そりゃ確かに分が悪そうだ。親に感謝しないとな」


 レンは笑い、濡れた道具の手入れを始める。


「それよりもレンってさ、いつも何してるの?」


 モモは一旦怒るのをやめ、レンの隣に腰掛ける。


「俺か? そうだなぁ、別に何もしてないが、強いて言うなら居なくなった親方を探してる。ただ普段から良く消えちまうから、そんなに心配はしてないんだがな」


「ほんと? じゃ暇なんだね!」


「暇じゃねぇよ……まぁ暇か?」


 レンは普段の行動を思い返し、暇人かもなと考える。


「じゃあさ、僕達のにおいでよ! 今みんなで作ってる最中なんだ。でもちゃんとした大工さんがいなくて困っててさ、レンが来てくれるならすっごい嬉しい」


 パアッと笑顔が広がるジョー。同じことを考えていたモモ、黙ってレンの返事を待つ。


「あぁ良いぜ。おりゃ元々作るのが好きだからな」


 両手を上げて喜ぶジョー。女性にとって死活問題の紙事情を解決するレンのちり神様に、心の中でガッツポーズをするモモ。


「ただし条件が二つある」


「分かった良いよ」


 即答のジョーに、先が思いやられるレン。


「いいから聞け、まず一つ。ジョー、お前は俺から戦闘訓練を習うこと」


「なんで?? 僕そんな事しなくても最強だよ! 痛てっ!?」


 ジョーはの拳骨を頭にくらい、顔をしかめる。モモはその様子を驚いた表情で見ていた。


「やっぱりな、その父親のシールド、万能じゃないだろ?」


 モモ以外の人からの攻撃を初めて食らったジョー。顔中にハテナマークが浮かぶ。


「コレは俺の仮説だが、今ので確信に変わった。その父親のGiveギヴ、それは相手の敵意から身を守る能力、そうだろう? だから今のように、俺が油断してるお前を注意する気持ちで殴ったから発動しなかった」


 モモはある程度予想していた為、それほど驚いてはいなかったが、ジョーはビックリするほど口が開いている。


「モモの拳骨がお前に当たるのは、そこに愛が含まれているからだ」


「ナイナイそれは無い」


 ジョーが否定するが、気にせずに続けるレン。


「それに、自然災害や、間接的な攻撃なんかも当たるんじゃないか? ジョーはまだ子供だが、いずれ家族を守っていかなきゃならない。だから今日からお前は『弟子』で俺が『師匠』だ。それが一つ目の条件」


「ビックリした……、レンって頭良いんだ」


 もう一度殴られるジョー、一日に何度も殴られ馬鹿になると心配になる。


「話し方は今のままでも良いが、俺のことは師匠と呼べ。習うべき相手を呼び捨てにしてたんじゃ、覚えれるもんも覚えられないだろ」


「分かったよ……、それで二つ目は? 師匠……」


 師匠の響きを噛み締めるジョー。最高の呼び名だと喜ぶ。


「何ニヤニヤしてるんだ? まぁ良い、二つ目はアイツらを連れて行く」


 駐車場で伸びるブルとコウを指差す。


「工事に人手はいくらあっても良いからな、アイツらは部下として連れて行く」


 正々堂々と戦ったコウとブルを気に入っているレン。


「もちろん大丈夫だよ師匠! ねっ、良いよねモモねぇ?」


 モモに許可を取る。いつも自分勝手に行動するジョーも、最終決定はモモに委ねていた。


「レンさんが来てくれるのは私も嬉しい、頭も良いしGiveギヴも最高だしね。あの二人も……」


 気絶するコウとブルを見て続ける。


「三色揃ってないとね」


 ド派手な髪色の三人。信号機が、国の秩序を守ってくれそうな気がするモモ。

 

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