——モモとジョーと骨とデク——

「もっ、モモねぇ! それ折るって言うか死んでない!?」

 

 杭のように地面に突き刺さる骨ポマードを指差し、ジョーが震える声でたずねる。


「死んでないっての、あたしの能力はあんたも良く知ってるでしょう。私のGiveギヴはしっかりと創造出来てる。【自由跳躍フリージャンプ】は好きな高さや方向へジャンプ出来る。でも中途半端な能力者は、着地の際に大怪我ってのは良くある話、その点あたしのは着地の際の想像も出来てるの、もし飛んだ先に人が居た場合もね。の際の衝撃は緩和される、あたしも相手もね」


 読者への説明も兼ねて、しっかりと教えてくれるモモ。ありがたい。


「あんたこそ殺してないでしょうね、五秒以上溜めてない?」


 「あー、溜めた。多分十秒チャージってところ。ゼリーくらいだね!」


 悪戯と約束を破ったことと、しょうもない冗談に三発殴ろうと拳を振り上げるモモ。


「違う違う最後まで聞いてっ! この人達アホでさっ、自分達のGiveギヴをペラペラ教えてくれて、このでっかい人が強化系能力って教えてくれたんだよ。どれ位の想像力か分かんなかったけど、十倍位なら大丈夫かなって思ってやっちゃった」


 ペロッと舌を出しおどけるジョー。


 四発にしようと決めるモモ。


「ケンちゃんだって、強化系相手なら良いって言ってたもん!」


 ケンちゃんとは、ジョー達と一緒に暮らす、老人である。みんなの良心的存在で、豊富な知識と教養で『賢者先生』と呼ばれ慕われていた。だが本人から実は中卒で、豊富な知識はGiveギヴによるモノだと告げられ、

賢者呼ばわりは恥ずかしいのでやめて欲しいと懇願こんがんされた。一度定着した呼び名を変えるのは難しく、苦肉の策として『ケン先生』と呼ばれるようになった。


「何度言えば分かるのっ! ケンちゃんじゃなくて、ケン先生でしょ!」


ゴツンっとゲンコツをくらうジョー。頭を摩り、父親に悪態を吐く。


「ちぇっ! 何でモモねぇのゲンコツは防いでくれないんだよ父ちゃん!」


「愛の鞭だからよ、パパに文句言わないの」


二発目のゲンコツをくらい、涙を浮かべる。


( 絶対愛は無い、俺を殴ってる時のモモねぇ、笑ってるもん……)


「それよりモモねぇ、この人達どうすんの?」


 涙を浮かべ、気絶する二人を指差す。


「知らない、用事が済んでまだいたら考えましょう」


 そう言い残し、町へ続く林道を下り始める。


(あれっ? 思ったより殴られなかったな……まいっか!)


「待ってよモモねぇ!」


 急いで後を追いかけるジョー。お気に入りの靴の恨みも思い出し、合計五発のゲンコツをくらうのは、町に着く直前のことだった。

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