第12話
「……
クラスメイトの
からかわれるからバレたくなかったが、結局はバレてしまった。
先日、光愛と光愛のお姉さんが、私が働くメイド喫茶にやって来た日。
あの日は馬の被り物を被ることで、なんとか乗り切れた。
意外とバレないものだと高を
しかし、今日来たのは加奈愛だ。
光愛にはバレなかったが、加奈愛にはそううまくもいかず、ファーストコンタクトでバレてしまった。
光愛と2人で来るもんだから必然的に2人同時にバレてしまう。
「……沙也加ちゃん? なに言ってるの、加奈愛ちゃん。そんなわけないじゃん」
「いやいやいや。どう見ても沙也加じゃん」
加奈愛には完全にバレているようだけれど、光愛にはバレていないよう。
目を
よく目が合うあたり、馬の被り物をまじまじと見ているようだ。
それではいつまで経ってもわからないだろうに。
私が宮中沙也加であるという意見に共感を得られない加奈愛はアドバイスする。
「ほら、体格とか、雰囲気とか、声とか……なにより、沙也加がクラスメイトにバレないようこっそり愛でてるかわいい女の子のストラップつけてるし」
いや、バレてるじゃん。バレないようにしていることもバレてるじゃん。
ていうか、なんで!?
「なんで加奈愛ちゃん、そんなこと知ってるの?」
そうだ! そうだ!
「なんでもなにも……間違えて学校に持ってきたのか、教室でカバンから出すのを見たんだよね。一瞬だったけど。慌ててカバンに押し戻して、すぐさま周囲を警戒してたから、隠してるのバレバレだったし」
「でも、そんな一瞬じゃわからなくない?」
「ほら、あたし、動体視力いいから」
「能力の
なにやってるの、私!
確かにどうしてかはわからないけど、カバンの中に入ってることがあったわよ。
どうせ、どこかに置いたままにしていたのを見かねた母が入れたんでしょうけれどね。
ええ、わかってますよ。母は悪くありません。片付けなかった私が悪いんです。
だからといって、よりにもよって学校のカバンに入れるなんて。
あの1件で母と喧嘩したことを思い出し、
あれがなければ、今だってバレていなかったかもしれないのに。
母がカバンにグッズを入れている様子がフラッシュバックされます。
何度も言うようですが、母は悪くありません。
加奈愛のアドバイスを受け、全身を
これでもうバレるのかと思うも、そんなことはなく、むしろ
大方、加奈愛が先に気づいたのが悔しいのだろう。
これで私が名乗りでなければ、何事もなく、この件を流せる。
できるのだけれど、本当にそれでいいのだろうか。
別にわざわざ私から話す必要はない。けど、こうやってお店に通い始めている以上、いつまで隠し通せるわけがない。
メイド喫茶を辞めようと考えているわけでもないし。
ならば今、話の流れから考えても正直に話すのは決して悪いことではない。
そして、なによりも――
――このむさ苦しい馬の被り物をいつまでもしていたくはない。
でも、学校では委員長というお硬い印象の私が、メイド喫茶というオタク丸出しなところで働いているなんて知られたくない。
「お願いします」
どうしたものかと決めあぐねていると、カウンターのメイドさんに呼ばれた。
仕事だ。
一言、断りをいれ、その場を後にする。
秘密を話すかどうか考える時間を手に入れた。逆に話すタイミングを逃したとも言える。
これでいいのか、自問自答するも答えはでない。それもそう、答えなんてないのだから。
どうするのかは自分が決めればいい。
秘密を話すのか、話さないのか。
考え方を変えると、馬の被り物をつけたままの接客を続けるのか。
……なんか急に秘密にしている事自体がバカらしくなってきた。
溜息を1つ吐き、
カウンターにある商品をお客さんに提供するのを取りやめた。
いや、違う。
別のメイドがその業務を
そう自身に言い聞かせ、光愛と加奈愛がいるテーブルの前まで移動し、馬の被り物を取る。
「加奈愛の言う通り、私よ」
これで、この被り物はお
無感動がしっくり来る気さえする。
これでもう隠す必要はないのか。肩の荷が降り、スッキリだ。
「「……いや、誰?」」
「いや、だから、さっきまで話してたじゃない」
光愛と加奈愛、2人顔を見合わせ、再び。
「「……だから、誰?」」
「だ、か、ら! 宮中沙也加よ! あんたたちのクラスメイトの!」
本来、ご
「「……誰?」」
もしかすると私は、盛大な勘違いをしていたのかもしれない。顔を晒したらバレる。被り物を取ってはならない。
実際はそんなことはなく、被り物なんてしなくてもわからなかったようだ。
自ら名乗ってしまった今となっては試しようもないけれど。そんなにバレないものだろうか。
学校ではメガネで三つ編み。
だけど、メイドになったら、髪は下ろしてストレートに。そして、まるぶちのメガネを外している。
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