第5話
「と、いうわけで、メイド喫茶で働くことになった」
「言ってる意味がわかりません」
1学期の期末テストを終え、結果も返却され、終業式までの、正直よくわからない期間。
それでも学校に
課題となるプリントは配布されるのだが、自習時間と変わらない。
そんな無法地帯ゆえに、自習時間ならぬ、自由時間と化し、教室内は
夏休み直前ということもあり
「どうしてメイド喫茶なんですか⁉ これから補習で忙しくなるというのに」
光愛はほとんどの科目で赤点をとり、補習対象となってしまった。
この前の休みはその関係で光愛は学校に呼び出されていた。そういった関係があり、俺は1人でバイト先を選んでいたのだ。
なにごともなく、バイト先が決まったかと思ったが、まさか光愛に反対されるとは……。
「まぁ、いいじゃないか。人手不足で困ってるみたいだったし」
「だとしてもです」
どうにか
「あんたねぇ。そもそもなんで赤点補習受けることになってるの。中間では数学以外、大丈夫だったのに」
お
カナメは光愛の親友で、俺が転校してきた時点で仲が良かった。後ろの髪を一箇所に
「しょうがないじゃん」
言い切ってはいるが理由が全然伝わってこない。
「いや、なにが?」
同じことをカナメも感じていたのだろう。疑問を口にした。
「いろいろと、あれがあれで……と、に、か、く! しょうがないの!」
特に理由はなさそうだ。
カナメは
まぁ、そのノートを作成した当の本人は赤点を
「まぁ、人の事をとやかく言うつもりはないけど。補習、頑張ってね」
「え~、
「イヤよ。なんのために試験を頑張ってると思ってるの」
「そんな~」
机に
うちの学校は赤点を取っても、補習さえ受ければ進級・進学できる。とはいえ、その肝心の補習は膨大で、普通に試験勉強してた方が楽なのではないかと思う。
夏休み中に補習授業を受けるのはもちろん。教科ごとにA4サイズで30枚(両面印刷)を休み中にやるようにと渡される。正直、見るだけで嫌になる。
こんなのを去年、やり
これ見よがしに教師が教室にこれを持ってきたときは、赤点なんか取るんじゃないぞ、という圧がすごかった。
それでもお構いなしに赤点を取れるあたり、逆に光愛は大物ではないだろうか。
「いいもん。
「まぁ、
「やった」
「あんたそれでもいいの? 小学生や保育園児の前で補習課題をやるってことだよ。恥ずかしくない?」
「大丈夫だよ。傍から見たら、夏休みなのに勉強頑張ってるお姉さんだから」
「そういうところはちゃっかりしてるのよね」
「というわけで、よろしくお願いします。純慶さん」
「おう」
「……じゃ、なくて! メイド喫茶ですよ。メイド喫茶!」
うまく流せたかと思ったのだが、そううまくいかなかった。
「こうなったら、わたしも、メイド喫茶で働くしかありませんね」
『え!?』
「なんですか、2人して」
「とりあえず、店は燃やさないでね。いや、お皿を割るのも……えっと、グラスならいいってわけじゃないからね」
「店長に
「どういう意味?」
『そんまんま』
「んな!?」
うめき声をあげ、言葉にならないという様子だ。
個人的には
下手に反対すると、それはそれで怪しまれそうだ。変な話だが、採用されないことを
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