第15話 みこちゃんを救え

 樫木家パーティー以降、生徒会は団結力を高め、夏を迎える。

 夏休みを間近に立ちはだかるのは期末テストだ。

 別に勉強することは嫌いじゃないし、予習復習は毎晩やっている。

 まあ部活に入っているわけではないから、ゲームか読書するくらいなので勉強もさほど苦ではない。むしろ楽しんでいるくらいだ。


 明日からテスト期間に入る為、生徒会は暫く休みになる。顔出しに生徒会室を訪れる。


 放課後、進とみこちゃんとで生徒会室に入るといつものようにすみれ先輩はアトリエでペンタブレットとにらめっこしていて、カナンはギターの弦を張り替えていた。

 会長はというと、頭を抱えている。

 また行き詰まっているのだろうか?

 いつもの光景ではあるがとりあえず会長に一声かける。

「また何かトラブルですか?」

「ええ緊急事態よ、期末テストよ、期末テスト」

 何でもパーフェクトな会長がテストで狼狽えてるのは謎だ。


 うちの高校は試験の結果を順位付けして校内に貼り出すなどはしない。

 去年から無くなったという。

 順位は個別にテスト返却時に渡される。

 俺は、学年15位と悪くはない。

 進も要領がいいのか特に勉強を普段やってる訳ではないが30位だったと聞く。

 カナンも普段からバイト、バンド活動、家事の合間で復習してるらしい。

 なかなか出来ることではないと感心している。

 当然ながら会長もすみれさんも学年トップ成績に君臨しているだろうと思ってるんだけど、何か様子が違う。

「会長もテストとか心配するんですね。やはりトップならではの悩みなんでしょうね」


 すみれさんはため息をついた。

「トップに君臨ねー。准弥は会長が成績トップだと思ってるんだな。まあそうだよな」

「トップじゃないんですか?」

「厳密に言うとトップではない。トップは私だからな」

「厳密にとは?」

「会長言ってもいいですか?この際生徒会委員には知ってもらってた方が良いのでは?」

「そ、そうね」

 会長の了承を得ると、すみれさんは口を開いた。

「さっきも言った通り、私が学年1位だ」

「すみれさんがトップ成績ですか?それじゃ会長は2位くらいですか?」

「いや、2位は文芸部の矢野愛佳だ」

「矢埜アイネ先生ですか」

「そうだ、アイネは会長の正体を知らないが、会長と左ライト双方をライバル視しているからな、そろそろ気付けよとは思うがな。一番にチヤホヤされないと気がすまない性格だから厄介なんだよな。ほんと目障りだ」


「すみれさん、本音がダダ漏れですよ・・・。んじゃ3位ですか?」

「世間体では私が3位ということになっている。」

「えーと本当は1位なんですよね?どういうことですか?」

「3位はつまりそ先生だ。つまりそ先生は順位なんてものはそもそも気にしないからな。図書室に献本してくるれるならと口裏合わせ快諾してくれた。変態は変態なんだがな」

「いや、変態は余計ですけどね。それじゃ会長は?」

 すみれさんは咳払いをし、言いにくそうに答えた。

「390位だ」

「んーと普通科2年生って何人でしたっけ、、、?」

「マンモス校だからな普通科で440人だな」

 ん?赤点じゃね?もはやマンモス校の意味なくね?と思いっていたが。即座に否定した。

「心配しなくてよいぞ、赤点はなんとか免れていた。今回はわからないが。」

 えーとそれダメじゃね?

 ん、聞かなかったことにしとこ。会長の名誉の為にも。

「そうですか、僕たちは下級生ですし何も出来ないですが。」

「ああ、君達は自分の勉強をしなさい、会長は私がこれからスパルタで教えるから」

「す、すみれちゃんの美少女!女神!鬼!悪魔!准くんた、たすけて」

「いや、誉めるか貶すかどっちかにして貰えますかね。ダメですよ今日から執筆禁止私が、泊まりこみで勉強です!」


 会長の焦りっぷりからして、相当スパルタなんだろう。

「それじゃ僕はここで失礼します」

 そう言うとドアに手をかけた。


「ちょっといいですか?」

 声をかけてきたのはみこちゃんだ。

「?どうしたの?」

「あの、ちょっとご相談が」

「俺に?」

「そうですね、進くんとカナンちゃんにも出来れば。」


 ということで俺、進、カナン、みこちゃんでファミレスに寄ることにした。


 俺と進、対面にはカナンとみこちゃんが座った。

「えーととりあえずドリンクバー4つと俺は山盛りポテトで」

「俺もちょっとくれよ」

「そのつもりで山盛りポテトだよ」

「流石、准弥気が利くな」

「みこ、パンケーキ二人で食べない?」

「う、うん」

「じゃあスフレバナナパンケーキ下さい」


 注文を終えて、本題に入る。

「で、みこちゃん今日はどうしたの?」

「えっとその」

「どうしたのよ。ほら私達友達なんだから、何か悩みあるんだったらの乗るよ」

「と、友達」

「そうだぜ、同じ生徒会の同級生なのも何か縁だ、なぁ准弥?」

「うん、俺達に出来ることなら力になるよ」

 言いづらそうにみこちゃんは口を開く


「あの!私に勉強教えて下さい!」


 そう、見かけによらず勉強が出来ないのは、なにも会長だけでは無かったのだ。

 みこちゃんも成績が良くなかったのだ。

 前回のテスト普通科一年生430人中400位、完全な赤点、補習もあったようだ。

 元々勉強が不得意だったということではなく、Vtuberの活動で毎日配信、そして彼女自身極度の廃ゲーマーになってしまったからだという。


「みこ、あんた暫くゲーム配信やめなさい。テストで休むって言ったら視聴者も納得してくれるでしょ?」

「そうだよね。視聴者の方は事情を話せば理解してくれるよね?」

「そりゃ私も学校が忙しかったり、ライブが近くなるとSNS使って報告するわよ」

「そうなんだ。カナンちゃんは直接視聴者さんと話す訳ではないからそんなことしないと思ってた」

「私にとってもいつも応援してくれる大切なファンだからね、音信不通より一声入れておくと安心するだろうし、私も気兼ねなくライブや勉強に集中できるからね」

「それじゃ今晩、報告してみようかな」

「ついでだからさ、みこってゲーム配信がほとんどなんでしょ?だったら今日は質問コーナーとかしてみれば?」

「そういえばあんまりしたことないですね、ゲーム中のコメントを返すことはあっても。あとスパチャ投げてくれたりとか」

「生々しいわ。さてはあんた、結構それで稼いでるな?私なんてしゃべったりしたら正体ばれてしまうからできないのに」

「そんなにですよ」

「じゃあ最近買った大きな買い物は?」

「バレンタインにパパにアルフ‥」

「あーアルフォートね。あれおいしいよね。下手な手作りより失敗なくておいしいもんね」

「??えっとアルファードです」


 カナンの顔が強張った。


「ア、アルファードってあのアルファード!?」

「私も車のことはよくわからないんですけど、パパがずっと新車のパンフレットを眺めていたのでそのパンフレットにリボン巻いてあげたんです」

「いや粋なことすな、女子高生が・・・さぞ喜んだだろうね」

「今までにないくらい泣いてました」

「みこちゃんすごい稼いでるんだね・・・」

「そりゃそれぐらいなるだろう、俺やカナンのように、決まった日程に撮って編集した動画を投稿するわけでなく投げ銭機能のついてる生配信、しかもチャンネルは100万を超えてる登録者数、ハイクラスの車ぐらいなら余裕で稼いでるだろう」

「やっぱり生配信ってのが大きいのか?」

「そらアイドルの握手会とかと同じで、直接コメントしたらレスポンスが返ってくることもあるし、反応してほしいからこそスパチャ投げて気を引いたりするんだろうな」

「すごい世界だな、でも簡単ことではないよ。みこちゃんの実力あってのことだと思う、魅力があるからこそだよ」

「そそんな、あ、ありがとうございます」

 少し顔を赤らませ喜びの表情を浮かばせた。

 ということで、明日からの一週間のテストまで勉強会をすることになった。


「そういえば、どこで勉強するんだ?」

「確かに毎日ファミレスってのもお金もかかるしな、どこか広くて勉強できる場所か」

「それじゃアジトでいいじゃない?」

「おーそれは良案だな。俺も淳弥の話だけでアジトに行ったことないしな」

「わ、私も行っても大丈夫ですか?」

「あーみこちゃん、ドラゴンヘッドの人達とひと悶着あったもんな」

「それはぜんぜん構わないよ。だってみこが悪いわけでもないし、ザコどもは気にしてたよ。怖がらせちゃったし何かお詫びできればなって」


 ということで、明日からのテスト期間中はアジトで勉強会をすることになったのだ。



























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