第3話 学園
進は生徒会との話が終わった准弥と合流することになった。
「で、なぜ会長と副会長も一緒にいるんだ?」
「それは・・・」
〈生徒会室〉
「えっ。ほんとなのか?」
すみれは驚きのあまり目を見開いている。
進に了承を得た後、光とすみれに進がHANAUTAであることを伝えたのだ。
「すみれちゃん、いや副会長はHANAUTAの大ファンなのよ」
数分前に会長と副会長が左ライトとばいおれだった時の俺の驚きと同じだろう。
しおりはコンクリからの大ファンで、作業中、移動中常にHANAUTAを聴いてる筋金入りのファンだ。
「今から進と合流するんですけど」
「そうねぇ、私たちもそろそろ帰りましょうか。あ、そうだ良かったら私たちも」
「いやなんでですか!」
しおりが慌てて止めようとする。
「良いじゃないの?サインしてもらいなよ。CD持ってるでしょ?」
あのクールな副会長の耳が赤くなっていく。
「いや持ってるのは、持ってるんだけど。」
「じゃあ決まり!准くんも良いかな?」
「別に大丈夫ですよ」
なんか面白そうだ。
とそんな訳で連れてきたのだが。
「それで、すまんが俺はラノベってのに詳しくないのだが、要は会長と副会長が准弥の好きな本を書いてるライト師匠とヴァイオレンス先輩だったから生徒会に入るってことになったんだな」
「いや漫才の大御所みたいな感じで呼ばないで。」
「ヴァイオレンスではない、ばいおれだ」
「それで俺がHANAUTAってことは准弥から聞いたんだよな?」
「ええ、それで来たのよ。さぁほれ!」
光はすみれの腰をポンと叩く。
ゴソゴソと鞄からCDを出してきた。
「こ、これにサインして貰えるか」
すみれは発売されたばかりのCDを進に手渡した。
「これは俺の。もちろんだ」
進も嬉しさを隠しきれてない様子だ。
「今、フリーで配信で聴ける。それなのにCDまで買ってもらって、ほんとにありがとう」
進は満面の笑顔をしおりに向けた。
「ありがとうだなんて、そんな」
「よし。入るよ」
「入るって」
「生徒会だよ。人手がいるんだろ?」
「それは大変ありがたいのだけども、どうして?」
「だって俺は会長と副会長の正体を知っている、そして会長と副会長は俺の正体を知っているそれだけで理由にならないか?」
「まあ、准くんも当初はそれで入ってもらうつもりだったけど」
「じゃあ決まりだな。で生徒会役員はこの4人だけなのか?」
「1人書記をやってもらってる子がいる。私や会長よりパソコンの扱いに慣れているのでな、記録事はその子に任せてある。君たちと同じ一年生だ、そのうち紹介するよ」
一年生か。その子にも裏の顔があったりするのだろうか。
俺の通っている高校、私立涼陽学園は自由な校風を生かした活動をしていて、著名人の子供、芸能活動をしている子達が通う高校だ。
ただ芸能特別科の生徒には脚光を浴びているスターなどはまだおらず、弱小事務所だろうが、町長の息子だろうが入学することができる。その辺は結構ゆるい。
そのため総生徒数はとても多いマンモス校である。
しかし逆に、なぜか普通科の生徒の中に大物が混ざっている。
光先輩、すみれ先輩、進のような人達が良い例だろう。
俺は別に父親は普通のサラリーマンだし、母親も専業主婦だ。
すみれは俺にこう問いただした。
「それにしても、樫木はどうしてこの高校に入ったんだ?君は見た感じ、その、普通の子だと思うのだか」
「そうですよね。俺にもよくわからいんです。中学の時に推薦状がきて、進にも芸能科から推薦があったみたいなんですけど、進はもう芸能界の人間じゃ無いってことで普通科を受けたんです」
「推薦状か、私や会長にも推薦状が来たんだよな。それで自由な校風ってのもあってここを選んだんだ」
うん何故か仕組まれたように感じる。
進はすみれにこう答えた。
「いや、准弥が1番普通じゃないよ」
「どういうことだ?」
「いや、僕は何か芸を持ってるわけでも才能があるわけでもないので、至って普通です」
「いや、普通じゃない。まあこれから付き合って行く中で普通じゃないことがわかるよ」
どういうことだ。俺が普通じゃないとは。
新生徒会、なんだかんだ何があるかわからない。あまりワイワイするのが好きではないが、意外と楽しいかもしれない。
「私、実はファーストフードって初めてなのよ」
「そういえば会長と来るの初めてだな」
「すみれちゃんは初めてじゃないの?」
「初めてではない、というか公の場ですみれちゃんって言うのやめてください」
「良いじゃんもう学校じゃないんだし」
こうして、四人が集まったハンバーガー屋は生徒会への契約会になったのだった。
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