第1話 生徒会

 恐る恐る生徒会室の扉をノックする。


「どうぞ」


 光先輩の合図を聞きドアを開けた。


 この学校は生徒会の権限が非常に強い。

 それだけあってか学長室かと思うぐらい豪華な生徒会室だった。

 社長が座るようなリクライニングチェアには光が座っていて、重々しい机には生徒会長 水嶋光と書かれたプレートが立て掛けられている。

 会長の机の前には、テーブルとソファーが配置されていて、いち生徒の部屋とは思えないドラマに出てきそうな学長室や社長室のかのような雰囲気だ。


「来たか」

 仁王立ちしている副会長を前に恐る恐る聞く。

「あの、何か」

「君に生徒会に入って貰いたいと思って、呼び出したんだ」

「はい?」

 言ってる意味がさっぱりわからない。

 なぜ今日会ったばかりの人達から生徒会役員のオファーを受けているのか。


「いや、どうして僕なんですか。今日会ったばかりで、面識も」

「面識か。ちょっと待って。入ってくれたらって訳じゃないが、これを」

 副会長がおもむろに鞄から一枚のパネルを出してきた。


「こ、これは!?」


 すみれ副会長が出してきたのは、風魔の表紙、挿し絵を担当している、ばいおれ先生の直筆原画だった。


「なっ、何でこんな所に、絵師ばいおれ先生の原画が。いやこ、こんな貴重なもの貰えません」


「これでもだめか。それじゃ」


 そう言ってすみれはおもむろに鞄からマジックを出してきて、貴重な原画に何か書こうとし始めた。


「や、やめてください。な、なにやってるんですか!」


 思わず叫んでしまった。


「なにをって、いやサインをだな」

「え?これ、ばいおれ先生のサイン?」


 はっと気がついた、わかってしまった。

 そうか、副会長立花すみれ。

 すみれ。英語でヴァイオレット。

 ばいおれ。


「すみれ先輩。もしかしてばいおれ先生なんじゃ」

「ん?」

 すみれ先輩は何か話が噛み合ってないことに気付き、光会長に質問をする。

「会長。この子はどこまで知ってるんですか?」


「えーいやー。何も、知らない」


「・・・はい?どういうことですか会長」


「いや、言おうと思ってたんだよ。でもなかなか言うタイミングが。ははは」


「はぁ。口止めの為に生徒会に抱え込もうとしてた意味」


「口止めとは」

 半ばやけになったのか、ばいおれ先生改め、すみれ先輩はこう叫ぶ。

「ああ!もう!水嶋光会長は・・・左ライトなんだよ!」


 ・・・・・・・・・・


「え!!!!!!!」


 1番好きな作家、左ライトは水嶋光だった。


 面識はあったのだ。

 Web上で繋がっていた。古参のファンと小説家と人気イラストレーターだったのだ。


 そして俺は生徒会に雑務担当として入ることになったのである。


 元々は会長と副会長の正体を周りから隠す為に引き入れるつもりだったようだ。

 理由はそれだけではなく、副会長は夏と冬が忙くなるらしく、というかコミケで学校どころじゃないということで、正体を知っていて、活動を理解している者を生徒会に入れたかったようだ。


 それにしてもなぜ会長は正体をあの時に言わなかったのだろうか?


 ちなみに左ライトというペンネームは左利きの光からだとか。


「あの時、言わなくてごめんね。つい私の小説の感想を忖度なしで聞きたかったから」


「いえ、こんな近くに憧れの、作家さんとイラストレーターさんがいるとは思いもしなかったので、嬉しいです」


「それで私達でガッカリしなかった?」

 恐る恐る光は聞いた。

「とんでもない。こんな魅力的で綺麗なお二人にガッカリするわけがないじゃないですか。」

 光とすみれの顔が真っ赤になっていく。

「お、煽てたってサイン入り原画以外はもうでないぞ」

「そんなつもりは無いですよ。原画で十分です」


「これから宜しくね、JUNくん」

 なんか不思議なもんだ。こんな形でネットのいちファンがこうして会うのは。それにネットのハンネである、ジュンと呼ばれるのも少しムズ痒い。


「私たちは、すみれと光と呼んでくれていいぞ。決してライトとかばいおれとかで呼ばないようにな」


 すみれに言われて気付く。危うくその呼び名で話しかけそうだった。


 それと、1つ会長と副会長に生徒会加わるにあたって、お願いをした。


「友人の進にだけは会長、副会長の正体を教えてもいいでしょうか?」

「進というのは、千渡進か、君への生徒会勧誘にあたって友人関係は調べていたが、なぜだ?確かに千渡は元天才子役と呼ばれていたが、今は引退してるだろう?君と同じで生徒会に入ってもらうことにもなりかねないのじゃないか?」


「表向きではそうなんですけど、先輩達とで。なのであいつから漏れることはないです。」

「ん、同じ?」

 先輩達は不思議がっている。

 とりあえず事情を話して、進にその事を伝える了承を得ないと。

 少なからず今後、先輩と進がなんらかの関わりを持つことになっても不思議じゃないことなのだ。



































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