18話 過ぎたるは及ばざるがごとし……ふたつの意味で
ジュリーさまの火照ったお顔ジュリーさまの濡れて乱れて体じゅうに張り付いてる金色の髪の毛ジュリーさまの慎ましやかなお胸ジュリーさまのおへそ、ジュリーさまの………………………………。
「………………………………ふぅっ。 ありがとう、リラ」
「いえ。 いつものことですから」
おっと、顔に出ると……表情筋が息していないから大丈夫だと思うけど、でも、これを続けるためだ、煩悩退散。
「ほんとう。 力もほとんど入れないのに、こんなにもすごいわねぇ、リラの、これ……、はぁっ」
ジュリーさまの荒い息づかいもまた大変によろしちがうちがう今はダメだ、あとであとで。
「悪くなっていないところは、……初めのころはどこもみんな痛かったのだけれど……でも、悪いところだけが痛くなって、悪くないところはくすぐったい……というような感覚で、うまく表現できないのだけれど。 運動をしたように息も苦しくなるし、大変なのだけれども。 ですがおかげで、ほとんどの服を仕立て直さなければならないほどに腰周りがすっきりしたの。 もちろん体が良くなったのはいいことですけれども、それとは別に嬉しくって。 ほんとうに、ありがたいですわ」
一糸まとわぬ姿で……最近ようやくに、終わるたびにタオルで隠されるというとてもとてもとっても悲しくなることをされなくなられたジュリーさまは、ヨガマット(偽)の上で、だるそうに体を起こされる。
「たしかに。 初めは、信じられなかったものですけれど……でも、ほんとうに楽になるのですよね。 リラが、南方の国の健康法として教わってきたと言う、………………………………。 ………………………………どのような名前だったでしょうか?」
「『足ツボリンパ流筋膜はがしヨガストレッチその他マシマシ』療法です、ジュリーさま。 もっとも、ことばがちがう国からのものですゆえ、ただ発音をそのまま持ってきたものですが」
「あ――……そのような感じのものでしたわねぇ。 あーすぃとぃぼ、………………………………む――……? ……ごめんなさい、やはり私には発音できません」
「お気になさらず」
だって、わざとバレないように日本語で、しかも早口でだもんな、当然だ。
この国のこの地方のことばとはかけ離れた発音だし……フランス語っぽいしな、ここの言語……あとは本当の南の国の健康法にはないっていうの、バレちゃまずいし。
まぁ実際に行って似たようなもんがあったし、いざとなれば組み合わせたオリジナルです、でいいはずだけどな。
てきとーなししょーを仕立て上げておけば、一子相伝とかで問題ない世界だし。
ジュリーさまは荒い息を整えながらゆっくりと立ち上がると、お湯に浸かっていく。
もちろん僕も、……もちろん僕もすっぱだかで、お供させていただく。
だっておふろだもん、体を隠すのはマナー違反ってものだもんうへ。
そーゆーもんだって信じ込んでくださったんだもんなうへへへへ……。
残念ながら僕の肉体は第二次性徴が始まっていない幼女そのものだけど、だからこそ未だに警戒されることなくはだかの付き合いというものをできている。
うへ、うへへへ………………………………。
「……リラは、すごいです。 これをしてもらうと、毎日の疲れも……不機嫌だったりする気持ちも、風邪っぽくなったときでさえ……すべて、吹き飛んでしまうのですから。 すごいです、……ええと、あーすぃとぃぼ……」
「それはなによりです。 せっかく覚えた技、ジュリーさまにこそ必要です」
ちゃぷちゃぷとジュリーさまの元へ近づいていくと……ん、と抱きかかえてくださり、僕の体はわきの下のくすぐったさと一緒に持ち上がって、僕の、無い胸のあたりまでお湯が引き……僕の背中にはジュリーさまの控えめだけれどもそれは体格に比べてだからつまり僕にとってはふにょんふにょんなお乳がふにょんふにょんと当たる。
うむ。
後ろから抱っこされて……おしりはジュリーさまのおなかやふとももに優しく包まれるという、しかも肌と肌を重ねているという、僕にとっての至福の時間だ。
これを思えば、毎日たかだか30分1時間(前世換算)のマッサージ、しかも全身をくまなくなで回して体をくねらせるジュリーさまを眺めながら、声と感想を聞きながらできるんだから、ごほうび以外の何物でもない。
……この世界、娯楽なんて。
ましてや僕の大好きだったはずで大好きなものなんて、官能小説とかヌードの絵くらいしかないんだ。
しかも僕の求めるレベルには、到底に届き得ないものだし。
だから…………ジュリーさまに出会う前までは、飢えていた。
前は、とっても飢えていたんだ。
だから今は、とっっても満足しているんだ。
これだけで産まれてきた甲斐があるというもの。
「これだけのことをしてもらっているのだもの。 ほんとうはリラにも、なにかお返しができるといいのだけれど」
「いいんです。 それに、これなら僕自身でもある程度はできます」
「でも、背中とかは難しいのでしょう? だったら私が」
「ジュリーさま。 これは医療行為です。 医療行為なのです。 ですゆえ、人体の仕組みを知る者でないと、逆に怪我をさせかねないものなのです。 申し訳ありません」
「そうですか……残念です。 いつも悪いと思っているので、と考えたのですが」
ぎゅ、とああお乳がふにゅふにゅと潰れながら接地面積を広げている感覚とともに僕を抱かれている腕が気持ちいい程度に僕を包み込むああお胸がおなかがふとももが!
………………………………………………………………………………………………。
ふぅ。
僕は正常だ、正常。
で、できることならジュリーさまにはぜひとも僕の体を、おんなじようにまさぐっていただきたい。
それはもう、すっごく思う。
けど、前にすこーしだけ試してもらったところ……力のお加減が、お優しすぎて。
その上にぎこちない手つきで全身をまさぐられて。
これでいいのですか?とか、私、リラを気持ちよくさせられているのですか?とか、ささやかれ続けて。
うん、あれはヤバかった。
うっかり反応でもしちゃったりしたら、あ、これってもしかして……って気がつかれる可能性がちょっとあるんだし。
幼児同様ゆえ反応はしないはずだけど、そのタイミングで目覚めちゃったらばれかねんからなぁ。
残念、非常に残念、誠に残念だけど遠慮しておかないと。
ぐぬぬ……。
「……あ。 お湯のおかげんはどうですか。 このままでいいですか」
「えぇ、ちょうどいいですわ。 ……と言いますか、リラだって一緒に入っているのですから、毎回確認しなくてもよろしいのですよ?」
「体温、ちがいますゆえ。 薪の数と入れる間隔、このままでいいと伝えておきます」
「ありがとう……けれども、いつも氷のように冷たいものね、リラ。 それは言いすぎかしら? ……けれど、寒いのならばもっと着込んでもいいのですし、お湯だって私だけに合わせなくても……」
ああ、お優しいジュリーさま……。
けど、体温が低いっていうのはなぜなんだろうか。
少なくとも疑問に思う時点で、前世ではふつーだったんだろうし。
………………………………………………………………………………………………。
もしや、ほぼ同い年なはずなのに年が離れた妹にしか見えない、この童顔低身長ろりろりな肉体と何か関係が?
…………いや、ただの体質だろう。
父さんたちも、兄さんたちもみんなでかかったしな、ふつうに。
深く考えてもしょうがないしなぁ。
「…………そういえば、ジュリーさま。 先ほど連絡が入ったのですが。 明日の朝からの予定でしたシルヴィーさまのご訪問及びお泊まりは、明日の夜からとなるそうです」
「あら、そうなのですか? 珍しいこともあるものですね、人目が……お付きの方の目がお嫌いなあの方ですから、こういうときにはなるべく早く着くようにと、日が昇る前から発つのが常ですのに」
シルヴィーさま。
ジュリーさまのお友だちで、銀髪の美しい髪の毛を……ひと房だけ結ったものを左右のどっちかに垂らしている、サイドテール……だっけ?っていう髪型をされた、たいそうにお元気で勝ち気なお方。
そしておっぱいはおっぱいだ。
……じゃない、でっかいんだ。
つまりは銀髪巨乳というやつ。
金髪長身スレンダー系なジュリーさまとご一緒だと、とても目の保養になるお方。
すべてが対になっているお姿は、それはそれは、もう。
……………………………………………………………………うむ。
で、そのお方が明日に来るんだ、またまた、……さぞや楽しいお泊まり会になるんだろう。
「こちらのお酒や料理を食べながらおはなししたいからと、いつも御者の方を急かせていると言っていますのに」
「はい。 なんでも急用が入ったとのことです」
「そうですか。 ならば仕方がありませんね……」
頭の上から振ってくるお声は、少しだけ残念そう。
だけど、シルヴィーさまもまたお貴族さま、ご令嬢だ。
お貴族さま特有のお話し合いだとか、パーティーだとか、領地を回っての慰撫だとか、そりゃあもういろんなお仕事がある。
日にちがずれたり、しばらくムリってならなかったぶん、まだマシな方だ。
………………。
と、いけない。
僕の発言のせいで、ジュリーさまが落ち込まれてしまった。
これはいけない。
このままでは僕が腹を切らなければならなくなる。
「……ではジュリーさま。 そろそろ出ましょうか」
もぞもぞと動いてお肌を堪能し、ついでにさりげなく腕でふにゅんふにゅんという感覚を味わいつつ振り返り見上げる。
どさくさに紛れて、ごく自然にお肩とお胸……の、ちょい下を掴んで。
ああ、水分で満ちておられるそのお顔もまた…………………………。
「……リラはいつもお湯に浸かっている時間を気にしていますが。 そんなに熱いものでもありませんし、もう少し長めに入っていてはいけないのですか?」
「長湯はよくないのです」
じっ、と見上げてお顔をお目々を見つめる。
いちど体を、メンタルをあそこまで崩されたジュリーさまだ。
長湯は交感神経を活発にさせすぎることがあるから、ほどほどにしておかないとな。
ジュリーさまの健康管理が僕の使命なんだから。
「はぁ……、仕方がありませんね」
僕を抱きしめつつ、抱っこしながら……ああおしりにふとももの裏にジュリーさまのお手々がああああああ……ざば、と立ち上がられ、すとんと下ろしてくださる。
もうすっかり慣れてくださったその動きはごく自然で、重さでよろけたりもしないし……僕を下ろして立ち上がられたジュリーさまも、平然としていらっしゃる。
……僕、たぶん、体重……30キロないんじゃないだろーか。
20キロ代……前半とゆーことはないと思うけども。
けど、だって、特に鍛えてなんかおられない、高校生くらいのお歳のご令嬢なんだぞ?
背が低いからっていうのもあるけど、こう軽々と持ち上げられるなんて、どう考えても軽いってくらいしか心当たりがない。
……食欲、ないもんなぁ、この体………………………………。
「おふろ、という健康法。 熱と湯気ではなく、お湯に浸かるという、南方でしかないという、これを持ち込んでくれた貴女の言うことですものね。 あーすぃとぃ……もそうでしたし」
「はい。『過ぎたるは及ばざるがごとし』です」
「……不思議な響きのことばですね。 南方……。 遠くて広い、未知の世界ですものね」
「です」
東方だけどな。
もちろんこの世界のじゃなくって、どっか別の方向の。
ああいや、健康法の大半はたしか天竺な方面からだから、案外に合っているのかな……?
ま、どーでもいいや。
ジュリーさまを治すついでのごほうびな知識でしかないんだしさわさわして嬉しくってうへへへへへ………………………………。
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