17話 今だけは、僕だけのジュリーさま


さて、僕が無事にジュリーお嬢さま専属の妹、兼ケア担当になってから、ひと月ほどが経ち。


僕がジュリーさまに救われて、んでもってメンタルケアができるって証拠をあのあとにこれでもかって出して………………………………そんでもって、説得が効き過ぎて言ったことなんでもはいはい聞いてくれちゃうようになったもんだから、軽ーく提案しただけでどっしりと……建物ごと作ってもらっちゃった、この大浴場。


わざわざ、わざわざひとりの娘のために……すっごいもの建てるって、さすがは公爵さま。


もっとも、そこに僕も入っているあたり……ほんとにいい人なのか、それともまだまだ僕のかわいそう属性が抜けないのか。


いや、僕も今や正式に公爵令嬢らしき存在なんだけど、いまいち実感はないかなぁ。


ともかく、突貫工事で……見ていた限りじゃ手抜きとかはしていないっていうか、しちゃってばれたら公爵家総出でのおしおきだからしないか、たぶん。


とにかくさすがは公爵さま、お金はケタ違いに持っているらしい。


この前、ジュリーさまのお父さんに……「おとうさま(ちょい舌っ足らずな感じに)」って呼ぶと、とってもごきげんになるちょろ、いい人なんだけど……ごきげん取りをしてたら、おもむろにリラちゃんおこづかいほしいかい?って、軽ーい感じで差し出されたそれは、現代換算で1000万を優に超える金額の「おこづかい・公爵さま基準」。


まー、お貴族さまだもんなぁ。


僕がお金転がしで……少しは苦労して稼いだことのある金額をぽんって軽ーく渡されて、嬉しさと悲しさを足した感情になったっけ。


まぁ、もちろんもらったけども。


それはそれ、これはこれだし。


財産がぜーんぶ……この体と、わずかに残った遺品と、あとは調査中らしい燃えちゃった家と、他の何軒かに分散していたのにそれをぜーんぶ黒おっさんに持ってかれていた……まだまだ戻って来そうにないものだけだし。


「や、そこはぁ………………………………っ、り、りらぁ………………………………」


うむ。


と、いうわけで、きれいなお声を聞きながらぐるりと内装を見てみる。


たとえて表すなら………………………………けっこういい温泉の内風呂って感じ?


なんていうか、……そう、明るいサウナ系の温泉って感じ?


天井は吹き抜け……ガラスなんて危ないからつけないとなんとか……だから、お空が見えるおかげで昼間はとっても明るい。


だからジュリーさまの裸体が、余すことなく、細部に渡って楽しむことが、おっと観察して悪いところを探すっていうお仕事ができるわけだけども。


で、ともかく。


もちろんレンガ造りだから外は見えないけど、っていうか見えたら大問題だからダメ。


だから空からの光で……夜はたいまつだから暗くて悲しい……こうしているわけだ。


ジュリーさまの素肌は国宝だ、断じて関係者以外に見せるわけにはいかぬ。


僕?


だって僕はジュリーさまの義妹になった、かわいそうだけど有能な「こども」だし?


だから問題はまったくない。


だって、「同性」だもん。


少なくともガワは。


……で、艶やかなお声についても心配ない。


屋敷の敷地内とはいえどその敷地は馬車で移動するレベルのもんだし、さらにはジュリーさまの入浴中に不埒な輩が来ないよーにって、奥まった森みたいなとこにあるから、よっぽど近づかれない限りには聞かれることはないはず。


護衛の人たちも女の人で固めてあるしな、少なくともここに来るときには。


だから………………………………存分に啼かれてくださいな、もといリラックスしてください天使ジュリーさま。


………………………………あ、こーんなところにちっちゃなホクロが。


覚えておかねば。


「………………………………あ、りら、そこはくすぐったくっ、……っ」


………………………………まぁ、見るとしたら、僕以外はアルベールくんだからいっか。


だって、僕はジュリーさまのご結婚まではここにいて、アルベールくんのとこに行くタイミングで僕もまた別のところに行くつもりだし。


もちろん、絶対に悟られないようにするつもりだけどな。


なまじ気に入られちゃったもんだから、僕が別のとこ……南はあったかくていいんだよなぁ、温泉もあるし…………に行くなんて言ったら、絶対に止められるだろうし。


で、出て行く理由だけど、そこまで大げさな理由があるわけじゃない。


いや、僕としては大事ではあるけども、別にイヤだから家出するわけじゃない。


「はぁ、………………………………んぅっ」


まずひとつには……1、2年後に控えているという女神ジュリーさまと王子アルベールくんの結婚が確定しているっていうのがあって。


こんなにも狂おしく慕っている天使ジュリーさまがお嫁に行って、……ヘタするとそこに僕まで妹として招かれて、おふたりのいちゃいちゃ新婚生活を眺めるなんてのはムリっていうもの。


だって、実質NTRだぞ?


別にそんなことしないし、そもそもそんなことをするモノがついてないけど。


けど、そんな光景を見続けていたら、きっと僕は、おかしくなる。


「どうですか、ジュリーさま。 お加減は」

「………………………………んぁ、………………」


「ジュリーさま?」

「………………………………………………………………ぁ。 え、ええ、そうね、きょうもとてもいいかんじで、え、きっと、おわったらきのうよりもっとからだが、………………………………ひゃっ」

「それはよかったです。 なら、このあたりを重点的にしますね」


ふむ、どうやら今日のジュリーさまは少しだけ胃腸の調子がよろしくないらしい。


ならば内臓を、……恥骨からあばら骨までの、おへそとくびれがすばらしいこの鼠径部からみぞおちまでを、優ーしく優ーしく揉んで差し上げよう。


他のところはもうやったしな。


「……あ、り、らっ………………………………そこ、が」

「ここ、固くなってます。 消化、悪いですか?」


「………………………………んっ、そ、そう、なの」

「お体のことは、些細なことでも教えてください。 まだまだ快復にはほど遠いですので」


そう、決して僕の煩悩だけでやってるんじゃない。


これでもいちおうは現代の知識を活かして、そう、整体というものをしているんだ。


もっとウケがいい感じにすると、……JKリフレだ。


お相手もJKだけど。


この見た目じゃJSリフレになっちゃうけど。


いや、それはそれで需要があるのか?


新おっさんみたいなお相手に。


まぁ、もちろん資格なんて持ってない……けど、この世界にはそれ自体がなくって、実際に効果があるんだから文句は言わせぬ。


あくまで身内相手ってことになるしな、少なくとも今は。


と、ジュリーさまが目をつぶって、僕が押すのに合わせて息をするのに集中しはじめたのを見つつ、僕が出て行く理由のふたつめをば。


ふぅ、ふぅっ………………………………と、落ち着いた感じに、目をつぶられて僕の手の感覚に合わせて深い息をされているお姿もまたお美しい。


じゃなくって…………そう。


ジュリーさまと出会う前までの僕の目標だった、最低限にして最大の目標。


男と、結婚しない。


まちがってもぐへへってな目に遭わない。


そういうことをするのなら、女の人。


そういう目標。


そういう願望。


それが、この手のひらの中に。


「………………………………ふ、ぅっ……っ」

「はい、少し強めに押しますので、もっと深ーく息を合わせてください」


「わかりまし、………………………………ん、あぅっ………………………………や、ぅ」


まぁ、当然でしょ。


男っていう自覚と意識と記憶があって、そんでもって……ジュリーさまみたく立場上結婚が逃れられないわけでもなく、ツテとお金と権力がそろえば、こーんな中世でも結婚しなくていい状態が作れるんだ、それなら努力するほかないもんな。


だって、結婚したら………………………………男のモノを、ここに受け入れるんだぞ?


ぜっっっっったいに、むり。


むりむりむりむりムリムリムリムリ。


するくらいなら……ほんっとにどうしようもない場合を除いて、死ぬくらいの覚悟だ。


実際に新おっさんのときとショタっ子のときには覚悟したんだけど……それで死ぬって考えていたかって言ったら……やっぱ死ぬのはこわいよなぁ、って感じだったかも。


やっぱ、むりだけど。


「ひゃんっ!?」

「はい、それでは腸の流れに沿って、回します」


「ん………………………………ふっ、やっ、………………………………ぁっ」


それにしてもジュリーさま、はじめは慣れてなくって鈍感だったのに、今は立派な敏感肌だな。


うむ。


女性にとって、大切なこと。


きっと夫婦生活にも満足されるでしょう。


とと、また逸れた。


んで、こうして天使さまっていう女性を弄……ケアして差し上げているのが嬉しい以上、その逆を男にされるのは断固として拒否。


だから、何年も前に、いろいろと調べた。


もう死んじゃった両親がしょっちゅうお見合いを持ってくるのをがんばって退けつつ、そりゃあ必死になって探した。


そして、見つけた。


こんな……立派な町でも、中は前世基準じゃきちゃないしドブ臭いし、ホームレスっていうか日雇いの人であふれてるっていう……幸いにしてお貴族さまの行くところはみーんなきれいで、ほとんど馬車で移動するから最近はすっかりご無沙汰だけども……中世でも、職業と身分次第で、女の身でも、独身でも平気なものがあるんだ。


有力、かつ僕がいいなって思ってるのは、聖職……用語はちがうけどシスターってやつとか、あるいはお貴族さまや王族さまの若いお嬢さま、ジュリーさまみたいな方たちのお付きってやつ。


シスターになると基本贅沢できなくって、お付きメイドになるとお給金はあるけど自由な日が少ないって欠点もあって、まだ決めてないけど。


とにもかくにも、処女性……最低でも、途中で身ごもったり結婚したりして退職とかご遠慮してくれます?っていう職業、ひとり身なのが当然っていうお仕事ならば、僕の希望に叶うことになる。


………………………………別に、そこにこだわらなくても……たとえば僕の家を再興して女主人としてやっていくこととか、そういう方面もあるんだけども。


でも、なぁ。


「……では、ジュリーさま。 仕上げに入ります。 全身、悪いとこもういちど、こんどは強めに行きます。 がんばってください」

「これで、終わり………………………………んぅっ!? ……なのね、分かった、……あぅっ」


もみもみと、すべすべと、ねちょねちょと。


うむ。


ぐにぐにっと。


ふぅ。


……こうして女の人のマッサージとかでも充分にやっていけはするんだけどな、たぶん。


と、意外と選択肢はあるんだけど。


……いろいろとでっかいスキャンダルだっただけに、生き残った僕に対する同情は相当なものみたいだから、やろうと思えばすぐにでも、かつての取引先とかお客さまとかがついてくれるだろうし、こういうマッサージとかの知識で、選択肢自体はたしかにいっぱい、ある。


けど、それでもやっぱり「女」だから。


……若いうちに結婚して、こどもをたくさん産むっていうのが当たり前な生きものに生まれ変わっちゃったもんだから。


んで、そういう世界に生まれちゃったもんだから。


それをしない……それも、一家全滅な以上僕がこどもを残すのは当然だし僕もそれを望んでいるだろうって、僕を知る人たちはみんな思っていて。


だから、結婚しないでいたらきっと「なんで?」が押し寄せてきて、気をつけないとあっという間に親切心に外堀埋められて、よさげなヤロウと結婚させられる。


それは、いけない。


僕が、精神的に死ぬる。


あんな思いなんて、もうしたくないもんな。


なにが悲しくって、ジュリーさまみたいな女の人の女体といちゃいちゃするんじゃなくって、男にいちゃいちゃさせられなきゃならないんだ。


選べる以上、断固として拒否の構えだ。


徹底抗戦だ。


「……あぁっ! ………………………………ね、ねぇ、り、りゃ、………………………………そろそろ、……」

「分かりました、それじゃ今から行きます。 お力を抜いて――――――――――」


けど、まだまだ時間はあるんだ。


具体的には4、5年くらいかな?


行き遅れ、になってくる……前世では大学生、JDなんだけどなぁ……歳ってことで、善意からなんとかしようとされる歳になるまでの未来。


だから、それまでに僕は、こうしてジュリーさまのお体を、今までのストレスでけっこうに悪くなってるこのお体を治すついでに敏感にして差し上げて。


……性的興奮を覚えている状態で触られたら、気持ちよくなれるようにして差し上げて。


子作りが、……多くの女性にとっては、少なくともはじめてからしばらくは苦痛でしかないそれを、最初っから気持ちのいいものにするために、できる限りに開発をして差し上げて。


今は興奮してないから気持ちよさは……頭なでなでされたりぎゅーってハグされたり、あるいはかゆいとこ思いっきりかき続けたりすっごく眠いのをガマンした先の寝落ちくらいだろうけど、でも、その感覚はちょっとずつ鍛えないと育たないものだから、………………………………今のうちに。


「こう、………………………………です」


おへその下と脚のつけ根を、こう………………………………ぐっと。


高まりきったこの状態で、最後の一押しをして差し上げる。


「………………………………~~~~~~~~~~~!!!」


……そしてジュリーさまはそのまま大きくのけぞり、しずくがぽちゃぽちゃと、したたり落ちた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る