第6話私の知らないところで最悪の勘違いが起こっている件について
須賀の乱入に長野は絶望していた。こんなことならこれから弁当を持参して教室で食べようかと、今までの食生活を改めようか考え直すほど彼女は絶望した。
ちらっと須賀を横目で見ると、長野は「どこか他のところへ行ってください」と拒絶の声を漏らすとするが。
「全然いいよ! ほら、奈々の隣空いてるから座って座って!」
そんなことを言う前に、隣の友人が嬉々として厄介者を受け入れてしまっていた。
「ちょっとのえ! なんで座らせるの!?」
ひそひそと須賀に聞こえないように長野は平泉にそんなことを言う。他の誰が来よう長野は快く迎え入れたと思うが、須賀だけにはどうしても拒絶的な反応が出てしまう。
そう思わずにはいられないほど、長野は須賀のことが嫌いなのだ。もはやアレルギーの域である。
しかしそんな長野の気も知らない平泉は、嬉しそうに。
「いいじゃんいいじゃん。学園一のモテ男と一緒に食事が取れる機会なんてそうそう無いんだしさ」
ホクホク顔の友人を見て、もうどうでもいいやと長野は全てを諦めて須賀と一緒に食事をとることを決めた。
須賀に対する怒りを鎮めるために、長野は軽く深呼吸をして目の前の食事を無言で食べ始める。
「ねぇねぇ須賀くん。どうして食堂に来たの? いつも教室で食べてるよね?」
何気ない雑談のつもりで聞いた平泉の質問だが、須賀にとってはかなり答えに困る質問だった。なぜなら彼は長野と一緒に食事を取りたいがために、わざわざ今日親に弁当ではなく現金をもらってきたのだから。
しかしここで「長野さんと一緒に食べたかったから」なんてことを彼はいえない。
彼は努力せず大抵のことを常人以上にこなしてきた超がつく天才である。それ故にプライドも人並み以上あり、意中の相手と一緒に食事を取りたかったためなんてことは言いたくないのである。
「うーんと……今日はちょっと寝坊しちゃってね。それで食堂で食べることになったんだけど、そしたらたまたまかわいい女子を見つけたからさ。だから混ぜてもらおうと思って」
恥ずい。聞いてるこっちが恥ずかしくなるような歩く共感性羞恥心のような彼だが、それでも彼の容姿に魅了された女子にとってはそんな発言すらもカッコイイと思ってしまう。現にそんなことを言われた平泉は、頬を赤く染め。
「ねぇ、私たちかわいいだって!」
なんて言ってはしゃいでいた。しかし長野は全く嬉しそうな様子ではなく、むしろまた嫌悪感を抱いていた。「なんでこんな痛い発言してるのにのえは嬉しそうなんだ?」と疑念を抱かずにはいられないほど、困惑もしていた。
「う、うん。そうだね……」
平泉に対して苦笑いで返すと、長野は残っていたカレーを全て食べきり。
「じゃあ私先戻るね……」
1秒でも早く須賀から離れたかった長野は、そそくさと教室に戻っていった。そんな彼女の姿を見た平泉は首を傾げて。
「奈々、どうしたんだろ?」
と、ひとり言を漏す。その発言に須賀は食いく。
「長野さんがどうかしたの?」
「え? いや、なんな須賀くんがきてからちょっと様子がおかしかったようなきがしてさ……。もしかして奈々……須賀くんに惚れてるとか?」
年頃の女子というものはなんでもすぐ恋愛につなげてしまうものだ。そんな彼女は、長野のおかしな挙動を恋によるものだと断定する。
「ねぇ須賀くん。奈々って須賀くんのこと好きだと思うんだけど、須賀くんはどう思う」
「うーんどうかな……。でも確かに、長野さんの僕に対する扱いは他の人と違う気がするけど」
「やっぱり! なんだよ奈々。友達なのに水くさいな」
なんと本人のいないところで、謎の勘違いが起こってしまった。この会話を聞いたら長野は怒りでぶっ倒れそうであるが、そんな長野の気持ちなど知らない脳内お花畑の平泉と勘違いナルシスト野郎の須賀は、勝手に自分たちの都合のいいように話を進めた。
このことがきっかけで、須賀の勘違いはさらにひどくなっていくのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます