隣の席の、うざい奴
第2話隣の男子生徒が痛すぎる件について
新学期。新しい学年になり心躍らせる学生たち。彼らは初めての後輩ができることへの責任感や、重圧。そして、また一歩大人に近づいたという成長感を感じながら、新たな扉を開く。
ガラガラ! と大きな音で扉をあげると、女子生徒の歓声のような、熱狂的な叫び声が教室中を包み込んだ。そう、この学年……いや、学校一有名である
「やぁみんな。おはよ」
「きゃー須賀くんが私におはようって言ったー!」
「なに言ってんのよ! 私に言ったのよ」
「いや私よ!」
彼の挨拶一つで、女子生徒は言い争いをしてしまうほど、彼には影響力がある。
「まぁまぁ。喧嘩しないで。僕はみんなに挨拶したんだよ」
須賀は優しく女子生徒たちをなだめる。すると先ほどまで言い争いをしていた女子生徒たちは急にしおらしくなり。
「はーい! 仲良くしまーす」
肩を組み、先ほどまで言い争いをしていたとは思えないほど嬉しそうな表情をする。これか須賀の力。彼の笑顔の前には、どんな女性も即落ち2コマである。
その美貌に抗うすべはなく、ほとんどの女子生徒は彼に心臓を撃ち抜かれてしまう。だがその中にも例外はいる。家族や熟年の女性にも例外ではない彼の美貌が、たった一人にだけ利かない女子生徒がこのクラスに存在した。
「いやー相変わらずかっこいいね〜須賀くん」
「別に。他の男子生徒となにが違うのかよくわからないんだけど」
「いやーそんなこと言って、菜々も本当は意識してたりして。ほら、須賀くんとも隣の席だし」
「そんなのは絶対ないよ。そもそも須賀くんにあんまいいイメージ持ってないしね」
「しかし彼と二、三言会話を交わした菜々は、もうすでにメス落ちしていたのだった」
「なにそれ。そんなの天地がひっくり返ってもありえないよ」
そんな会話をしているのは、本作のヒロインである
「ほら、もうすぐホームルーム始まるから席戻りなよ」
「うん、須賀くんに惚れたら昼ごはんおごりね」
「はいはい」
そうしてチャイムがなると、彼と彼女のファーストコンタクトが取られようとしていた。
「おはよ。長野さん」
「あ、おはようございます」
塩! かつて彼にこんな塩対応をした人間はいないだろうというぐらいの塩っぷり。こんな反応されたのは彼も初めてなのか、少しだけ困った顔をする。
しかし、すぐにいつものにこやかな表情に戻すと。
「照れてるのかい? 可愛い子猫ちゃん」
なんて、お得意の痛い発言をしてしまう。しかしそれでも彼は許されてきた。その圧倒的容姿による暴力で。しかし彼のことをなんとも思ってない、むしろ若干苦手意識を持っている長野は、彼の言葉に嫌悪感を抱いていた。
その証拠に、長野はひきつった笑みを浮かべている。
今の彼女の心境は、「やべーキモすぎだろこいつ。なんでこんなキモいのが人気者なの? もしかして集団催眠!?」である。
こうして彼は、ファーストコンタクトで好きな女子生徒に嫌悪感を抱かせてしまったのであった。
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