第9話 夢
食事を済ませた俺は、自分の部屋に行きベットへ横になった。
「やばい葵衣との水族館どうしよう。」
そんな事をぐるぐる回る頭の中で考えていた。目を閉じて考え悩む。それからどのぐらいたったのだろう気づいたら俺は、深い眠りについていた。
「ここは、どこだっけ」
夢の中だとは、分かっていたがこの場所にはいつの日か来たことがあるような気がする。
その目に写っているのは、横断歩道だった。
俺から見て左側にも車道を挟んで歩道があった。
「でさぁでさぁ光司がまた快人と喧嘩してさぁ」
いつからいたのだろう、目の前に小学二年生の俺ともう1人俺と同級生の子が一緒に歩いていた。
(あの子誰だっけ)
顔に見覚えがあったが思い出せない。分からかった。でもなぜかその子のことが気になって仕方がなかった。
その時だった。
1匹の猫が車道に飛び出してきた。
それを見ていた俺とその子のはその猫をずっとみていた。いや、違った。彼らがみていたのは.....。
「わぁ!猫さんだぁ」
幼い女の子だった。黒猫が綺麗だったのだろう、その子も車道に出てしまい黒猫のに近づいていく。でも猫は早足で逃げてしまった。
そこだった。彼らがみていたのは、1匹の猫なんかじゃないって、その女の子を見ていたんだ。
女の子の両親はどこにいるんだろう?
周りを見てもそれらしき人物はいない。
このままじゃ車が来てしまうかもしれない、気づいた頃にはもう女の子の目の前に大型のトレーラーは来ていた。だがまだ避けられる、運転手は必死にクラクションを鳴らしているが、女の子は一向に動こうとしない。
いや、動けないんだ。
まずい!このままじゃ
は?体が動かない。1歩も前に出せない!?
それは、まるで金縛りのように体全体が動かない。もちろん首も動かない。これじゃ助けることが出来ず女の子が轢かれるのをただ立って見ることしか出来ない。
動けよ!おい、動いてくれ頼む!
そう心の中で叫んでも足は動いてくれなかった。あと、何メートルだろうか、6いや5メートルか?そんぐらい近くまでトレーラーは来ていた。
そんな時、小学生の俺はランドセルを投げて全速力で、女の子のもとへ走っていった。
間に合ってくれ!と願い今度こそそこ願いは届き女の子は俺に背中を押され、間一髪引かれずに済んだ。
だが。俺が轢かれる、でもこれで良い俺は別に轢かれたって構わないさ。女の子を助けられたそれだけで、十分凄いことをした。
あのトレーラーに轢かれたら確実に死んでしまうだろう。
けどこれでよかったんだ。これで、良かっ.....。
そう思っていた。俺の考えに疑問が浮かんでしまった。
生きている。
そう俺は、今高校二年生の俺は生きている。轢かれて無事だったのか、いや、そんなはずは無い。あの大型トレーラーなんかに轢かれたら間違いなく死ぬ、だったら何故今俺は生きているんだ?
嫌な予感がした。絶対してはいけない予感。
だけど悲しいその予感は届いてしまった。
あと1か2メールの時に俺と一緒に歩いていた男の子が、俺の方へと走りその背中を押してしまった。
そんな、あぁ、だめだ....。
そんな事、もうあの子はどうやっても助けられない!あぁ頼むから動いてくれよ。
俺のためなんかに死なないでくれ。
止まってくれお願いだ。
止まってくれぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ
はっ!!
思い出したあの子が誰なのか今やっと
あの子は.....
目が覚め俺は勢いよく体を起こした。
息を荒く吐き出し、背中はぐっしょりと汗で濡れていた。
横には香澄が俺の手をぎゅっと握って心配そうに見つめていた。
額から汗が垂れてきた。頬を通り一滴の雫が
自分の手の甲に落ちた。
いや、汗じゃない。これは、涙だった。
俺は、泣いていた。あの夢を見て泣いていた。
そして、俺は、こう言って笑った。
「ははっ、俺なんの夢見てたんだっけ」
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