第8話 水族館パーティ
俺は、立ち上がり残っていたオムライスを完食したが、味が無くなっていた。いや、味はあったのかもしれない。ただ俺の舌が味覚を失っただけだ。
(完璧な人間しかいらない)
これは、邦彦の口癖だった。俺は幼い時から父親の願いを叶えるためなんだってやった。
そして、成功し、いつだってその度毎回褒めてくれた。
だが、ある時がきっかけで俺は父親に捨てられた。その原因は俺にある。
それは、小学二年生の時だった。
ダンスの発表会の時余りの人の多さに俺は緊張と動揺を隠せずにその舞台でスポットライトを当てられたまま立っているだけだった。頭が真っ白になり、人の目線が怖い、そして体が動かなかった。
俺は恐怖と緊張が限界に達して舞台の上でその場で吐いてしまった。
当然ながらダンス発表は中止となった。
「ごめんなさい、ごめんなさいお父さん。」
「たとへお前がいくら謝ったところで現実は変わらない、大切なもの一つ守れない奴に育てた覚えはない。それに言ったはずだ駿.....。
と邦彦は、膝をつけていた俺の、前に五歩ほど離れた先で振り返り言った。
「完璧な人間しかいらない。」
と.....。
そして、邦彦はまだ幼い俺と香澄を残し一人海外へ行ってしまった。
勉強をしていると携帯が振動した。お母さんからだった。私は通話ボタンをタップし電話に出た。
「久しぶり結実」
「お母さんどうしたの?」
「新しくリニューアルオープンする水族館知ってるでしょ」
例の水族館の事だろうきっと
「うん」
「そこでね、開園前日もかねて水族館で前夜祭のパーティをする事になったのよ。それでね実結も行かない?」
行かない。と答えかけた時に次の母の一言で私の答えは、180度回転した。
「あぁ!そういえば、駿くんも来るらしいわよ。」
「え.....!」
電話越しからでも分かるお母さんのニヤニヤ顔が、はっきり浮かんだ。
「行く.....。」
「えぇ〜声が小さすぎて聞こえない〜。」
くっ.....。私のお母さんは本当に本当に!
意地悪すぎる。
「行く!行きたいぃぃぃぃぃぃぃぃ。」
「あらあら分かったわ。じゃあ今週の金曜日にやる予定だから。また詳しいことは今度話すわ。」
と言いお母さんは通話を切った。
(駿と一緒に水族館.....。)
心臓が、ドキドキ音を立てて高鳴っている。
凄く嬉しい。だって大好きな人と一緒に水族館でパーティでぎるんだよ?
こんなの幸せすぎるじゃない!
そんな妄想をし続けて、当然勉強もはかどることなく、私は顔を真っ赤にしながらベットにの上で横になり、声を上げながら身体を左右に揺らし
悶えていた。
『俺は白鳥と
私は駿と
水族館へ行かなければならない
水族館へ行きたい』
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