第6話 バンファイパヤーナーク
私の名前はレンというの。私はマリリン・モンローとアインシュタイン博士とバオバオの遺伝子組換えで生まれたの。レンの声は、夜風に乗って不思議な響きを持っていた。
「遺伝子組換えって?」私は驚きのあまり、口をポカンと開けたままレンを見つめ返した。
「私は戦士の一人なの。」レンの目は、遠くの星々を見ているかのように輝いていた。
すでに太陽は沈みかけ、あたりは暗くなっていた。夕闇が徐々にメコン川の周辺を包み込み、静寂が辺りを支配していた。
「あれを見ろ。」アインシュタイン博士が叫んだ。その声は、夜の静けさを突き破るようだった。
メコン川の川底からいくつもの火の玉が夜空を目がけて昇っている。火の玉は、まるで生きているかのように躍動しており、その美しさには言葉を失った。
「あれはパヤナーク様の子どもたちが、宇宙からの侵略者を攻撃してるのだ。」バオバオが夜空を見上げて言った。その声には、誇りと尊敬が込められていた。
私は天に昇っていくたくさんの火の玉を見つめた。その火の玉は確かに空中で何かにぶつかり、爆発していた。まるで目に見えない敵と戦っているかのようだ。
「目に見えない宇宙からの侵略者がやって来てるのだ。」バオバオが言った。その言葉には確信が込められていた。
「私はパヤナーク様の子どもたちに会ってくる。」バオバオは川に飛び込み、水中に姿を消した。その勇敢な行動に、私は心から感動した。
「私には見えるの。巨大なUFOが浮かんでる。」レンは星空を指さして言った。その目には、不思議な光が宿っていた。
私には巨大なUFOは見えなかった。私が目にしたのは、たくさんの火の玉をのんきに見物している地元のタイ人や観光客たちだけだった。彼らも巨大なUFOや天から降りてくる宇宙からの侵略者は見えていなかった。
「みんなはバンファイパヤーナークと呼んで、珍しい自然現象としか思っていないの。」レンが言った。その声には、少し寂しさが感じられた。
私は、スマートウォッチのAIアシスタント、ユミにきいてみた。
「バンファイパヤーナークって何ですか。」
「ウィキペディアによると、『バンファイパヤーナーク(タイ語: บั้งไฟพญานาค)は、タイ東北部のノーンカーイ県およびウボンラーチャターニー県、ラオスヴィエンチャン県のメコン川上で見られる火の玉現象。火の玉は水面からすぐに数百メートルまで上昇し、消える。火の玉は赤みを帯び、大きさは火花のようなものから最大バスケットボール大まで様々である。報告された火の玉の数は、一晩に数十から数千と幅がある。地元ではナーガによる現象と信じられており、陰暦11月の満月の夜には祭りが行われている。』だそうです。」
私たちはしばらくこの火の玉を見つめていた。その光景は、この世のものとは思えないほど幻想的で美しかった。
「私たちもパヤナークの子どもたちといっしょに戦いましょう。」ホーはそう言うと、マントラを唱え始めた。その声は、力強く、しかし優しく響き渡った。
レンもうなずき、同じようにマントラを唱え始めた。二人の唱えるマントラは素早く、何を唱えているのかは私にはわからなかった。でも、二人の唱えているマントラは違うものだということはわかった。
するとどうだろう、二人の体はどんどん巨大なものになり、人間の姿ではなく、巨大な黒い犬と金髪のライオンの姿に変身した。そして、巨大な黒い犬にもライオンにも大きな翼があった。その姿、その大きさは、まるでエジプトのスフィンクスのようだった。
私は目の前で起きたことが信じられなくて、ただ夜空に飛び立った巨大な生き物の姿を見つめていた。その瞬間、私たちの冒険は新たなクライマックスを迎えていた。
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