第6話 バンファイパヤーナーク

”私の名前はレンというの。私はマリリン・モンローとアインシュタイン博士とバオバオの遺伝子組換えで生まれたの。”

”遺伝子組換えって?”

”私は戦士の一人なの。”

すでに太陽は沈みかけ、あたりは暗くなっていた。

”あれを見ろ。”アインシュタイン博士が叫んだ。

メコン川の川の底からいくつもの火の玉が夜空めがけて昇っている。

”あれはパヤナーク様の子どもたちが、宇宙からの侵略者を攻撃してるのだ”

バオバオが夜空を見上げて言った。

私は天に昇っていくたくさんの火の玉を見つめた。

その火の玉は確かに空中で何かにぶつかり爆発していた。

”目に見えない宇宙からの侵略者がやって来てるのだ。”

バオバオが言った。

”私はパヤナーク様の子どもたちに会ってくる。”

バオバオは川に飛び込み、水中に姿を消した。



”私には見えるの。巨大なUFOが浮かんでる。”

レンは星空を指さして言った。


私には巨大なUFOは見えなかった。

私が目にしたのは、たくさんの火の玉をのんきに見物している地元のタイ人や観光客たちだけだった。

彼らも巨大なUFOや天から降りてくる宇宙からの侵略者は見えていなかった。

”みんなはバンファイパヤーナークと呼んで、みんなは珍しい自然現象としか思っていないの”

レンが言った。

私は、スマートウォッチのAIアシスタントのユミにきいてみた。

”バンファイパヤーナークって何ですか。”

”ウキペディアによると、「バンファイパヤーナーク(タイ語: บั้งไฟพญานาค (Bang Fai Phaya Nark))は、タイ東北部のノーンカーイ県およびウボンラーチャターニー県、ラオスヴィエンチャン県のメコン川上で見られる火の玉現象。火の玉は水面からすぐに数百メートルまで上昇し消える。火の玉は赤みを帯び、大きさは火花のようなものから最大バスケットボール大まで様々である。報告された火の玉の数は、一晩に数十から数千と幅がある。地元ではナーガによる現象と信じられており、陰暦11月の満月の夜には祭りが行われている。」だそうです。”


私たちは、しばらくこの火の玉をみつめていた。


”私達もパヤナークの子どもたちといっしょに戦いましょう”

ホーはそう言うと、マントラを唱え始めた。

レンもうなずくと同じようにマントラを唱え始めた。

二人の唱えるマントラは素早い速さだったので何を唱えているのかは私にはわからなかった。

でも、二人の唱えているマントラはちがうものだというのはわかった。


するとどうだろう、二人の体はどんどん巨大なものになり、人間の姿ではなく、巨大な黒い犬と金髪のライオンの姿に変身した。そして、巨大な黒い犬にもライオンにも大きな翼があったのだ。その姿、その大きさは超古代文明の時代に作られたエジプトのスフィンクスのようだった。


私は目の前で起きたことが信じられなくて、ただ夜空に飛び立った巨大な生き物の姿を見つめていた。

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