第5話 マリリンの美貌+アインシュタインの頭脳+バオバオの能力

博士の研究室が突如として激しい揺れに見舞われた。天井からは研究の成果物が雨のように降り注ぎ、書棚はその重みに耐えかねて崩れ落ちた。地震だ。しかし、ただの地震ではない。これは大地震だった。


バオバオが目を開けると、その瞳は古代の秘密を宿したように輝いていた。


「みんな逃げるんだ、ここから離れよう。ホウたのんだぞ。」アインシュタイン博士は叫んだ。声は震えていたが、その決意は揺るぎなかった。


ホウはまた、謎の白い粉をみんなに吹きかけた。それはまるで魔法の粉のように、周囲を包み込む。


意識が薄れる中、私はまた気を失った。目を覚ますと、そこは大きな川のほとりだった。水面は穏やかで、陽光がきらめいていた。しかし、その平和な光景とは裏腹に、胸の内は混乱に満ちていた。


「ここなら安全、あの島はバオバオが目を覚ますとともに、火山が大噴火したよ。」声のする方向を向くと、マリリンがいた。彼女は若い少女の姿をしていたが、その目は数千年の時を経たような深い悲しみを秘めていた。


「え、火山の大噴火って・・・。」


「そうじゃ、わしの研究所もあとかたもなくなってしまった。島そのものがなくなったんだよ」


私はスマートウォッチでAIアシスタントのユミに尋ねた。「島がなくなってほんとなのかい。」


「はい、Yahooニュースによると、昨日午後18:00に北センチネル島は火山の噴火で島が海に沈んでしまったそうです。」


そして、この場所がどこなのかも聞いた。


「現在の場所は、タイ東北部のサコンナコン県バーンラオ村でメコン川の近くです。」


私はまたタイに戻っていた。しかし、この状況の中でマリリンとバオバオの関係が明らかになりつつあった。


「バオバオはどうしたんだろう。」私はマリリンに尋ねようとしたが、その前に背後から声が聞こえてきた。


「おい、ちび、何をぶつぶつ言ってるんだ。」そこには、5メートル近い身長のバオバオが立っていた。顔はワニのようで、下半身は人間だった。彼の装束はエジプトの古代の王が纏うような貴重な布で作られていた。


「ちび、私をどこかで見たことがあると思っているんだろう。」


「エジプトの神様・・・。」


「そうだ、ちび、私はセベク神だ。」


その時、マリリンがバオバオに声をかけた。「お父さん、何をつまらない話をしてるの、早くパヤナーク様を探さないと。」


え、お父さんって、何を言ってるんだ。そして、マリリンの大きな瞳は、確かにバオバオの瞳に似ていた。爬虫類の瞳だが、何か優しさを秘めているようだった。


”私の名前はレンというの。私はマリリン・モンローとアインシュタイン博士とバオバオの遺伝子組換えで生まれたの。”


”遺伝子組換えって?”


”私は戦士の一人なの。”


川の流れは静かで、時間が止まったかのように感じられた。しかし、その静寂を破るかのように、地平線の向こうから黒い雲が立ちのぼった。それは、ただの雲ではない。バオバオの眼差しは遠くを捉え、彼の口からは重苦しい声が漏れた。


「パヤナークが目覚めた。これはただの噴火ではない。世界の均衡を保つために、我々は行動を起こさねばならない。」


そして、バオバオは巨大な翼を広げ、空へと昇り始めた。彼の姿はまるで神話の中の生き物のように、圧倒的な存在感を放っていた。マリリンも彼に続き、空を舞う。


私は一人残され、次の章への扉が開かれた。バオバオとマリリンの旅に同行するか、それともこの地で新たな運命を見つけるか。私の冒険はこれからが本当の始まりだった。


夕焼けが川面を赤く染め、私は未知の力に導かれるように、バオバオとマリリンの後を追った。しかし、前方にはただの空ではなく、異界への入り口が待っていた。それは輝く光の渦で、私たちを別次元へと誘っていた。バオバオの言葉が頭の中で響く。「パヤナークの目覚めは、ただの始まりに過ぎない。」


そして、新たな章が静かに幕を開けるのだった。

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