第9話 魔術実践
「君が使える魔術にはなにがある?」
「付与魔術に炎、氷結、防御術、移動術、クリアですかね」
「使徒化とは言わないのだな。それでいい。魔術は秘匿するものだ。これから君が相手とる者達は魔術協会に属する狩人となるだろう」
「狩人? そんな連中がいるんですか?」
裕樹の間の抜けた態度に琴乃が「私を守るんでしょ」と頬を抓った。
「術師狩り専門の魔術士達だ。君の死は琴乃の中の使徒を暴走させる。覚えておきなさい。君たちは一心同体なんだと」
「はい」と返事をし食事を始めた。
それからは美羽への説明に入った。邪気に殺害されたことから始まり裕樹が魔術師になるまでのいきさつを話し、人体蘇生を使ったことまで話終える。美羽の反応は薄く、まるでどうでもいいかのようで父も琴乃も適応力にびっくりしていた。
昼過ぎに帰り支度を始めだすと父が突然「魔術師の戦闘を教えよう」と切り出した。場を庭に変え裕樹は用意していたマグをポケットから取り出す。
「ではいくぞ」
父の手には手袋がはめられていた。両手を合わせるなり青い光が地形を変え裕樹はとっさに飛び乗った。お次と指こすり合わせる動作があった。腹部で発熱を覚えた裕樹はマグで父の背後に回り錬成が付与された指輪を身に着け地面に手を当てる。華奢な刀を生み出しマグは崩れ落ちる。握った刀で振りかぶるが腕に阻まれた。
(切断できない腕だと)
「人体の炭素強度を上げた。その程度のなまくらでは傷一つつけられんぞ」
確かに父の全身は茶褐色に変色していた。初老とは思えぬ軽いフットワークに翻弄され右から左からと拳をもらい二回目のマグでは防御壁を張った。練習の成果か拳を受けるだけの強度になっていた。だが数発持たず崩壊し、さらにポケットからマグを取り出した。
「君はマグの作り込みが甘い。動作が必要な魔術など拳で十分だ」
さらに頬を殴られマグで拳に防御壁を張り反撃の一撃を懐へ飛ばす。そこからは移動魔術、発火などと様々な戦略で攻めるが一向に0距離にもっていけず一方的な展開は続く。
「模写の魔眼で記憶するがいい。魔術には遠隔技もあるってことを」
手袋が視界を舞い爆発を起こした。
「遠隔術式は目印をつけてしまえば追尾も可能。ゼロ距離しか土俵を持たない君にはきつかろう」
「では俺の思いつき見せましょう」
裕樹はスマホを取り出し義父へ投げつけた。義父は片膝をつき これも魔術かいと問うてきた。
「要はスタンガンですよ。電気を文明物と過程しマグに変換したんです」
「そんなカードを君はもたないはずだ」
「魔術は秘匿するものなのでしょ? 対人では効果的みたいですね」
さらに戦闘は加速する剣を生成した義父と模倣した裕樹は剣を打ち合あった。裕樹の剣は強度が低かったのか数回の斬り合いにあっけなく砕け散った。拳を握り父の剣にぶつけるとあっけなく拳の防御壁も崩れる。
「もっと魔術を勉強しなさい」
リュックサックを背負う美羽の姿が目に入り気持ちだけが駆け足になった。錬成痕から槍が生まれゼロ距離での立ち回りに入る。切り上げの動作に反応して柄でガードを図り突きのモーションに入った。刃先が腕に巻かれ体が宙をまう。
「これにて終わり」
そういった父は二人のそばに向かった。
(勝算があるように思った。錬金を覚え美羽を取り戻しても俺は俺のままか)
ゆっくりと空を見上げる。夏が近づいたのか晴れ渡った空は自分の心を映し出しているようでなぜか心苦しかった。
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