初恋の女の子
キュルキュルキュルン♪
ドキドキキュルン♪
魔法使い マリン♪
わるい奴らは私が退治しちゃうぞ♪
ある日の夕方
懐かしいアニメの再放送。
「俺の初恋聞いてくれる?」
すっごいめんどくさい質問。
あんたの質問なんてどうでもいいわ。
まぁ、私は大人だから聞いてやろう。
「どんな初恋だったの?」
「俺が五歳くらいだったんだけど、ばあちゃんの家の近くにあった海に行ってたわけよ。そこで、白いワンピース着た同じ歳くらいの女の子に会ってさ、、もうめちゃめちゃ可愛くて!!いやーいま思い出しただけでも一目惚れしてしまうわ。」
ニヤニヤが気持ち悪い。
「なんて名前の子だったの?」
「海ちゃん。」
「海で会ったから?」
「いや、自分でうみって言ったんだよ。白いワンピースに真っ赤なリボン付けてさ、、
一緒に砂で山作ったり、波打ち際でかけっこしたりして遊んだな~。ほんと淡い夏の思い出って感じ。」
「その日しか会えなかったの?」
「うん。1日しか会えなかったな。だから余計に恋しくて、寂しくてさ、、。あ!そういえば俺、その子にほっぺにチューされちゃった。それで思い出に残ってるんだよ。俺の初チュー。」
ほっぺただろ!
まあ、これで私がその女の子だったら
運命だねってなるんだけど。
そんな上手く運命の歯車は合わない。
私の名前うみじゃないし。
小さい頃この男に会った記憶もない。
まあ、いま隣にいるわけだし、それでいい。私にだって初恋はあるし、もちろんこの男ではない。
「でさ、最近思ったんだけど。この前、あなたの実家に行ったでしょ。その時にさ、お義母さんから小さい頃の写真見せてもらってさ。」
「え!?いつの間に!?変な写真ばっかりだったでしょ!!え、恥ずかしい!!」
「まあまあ落ち着いて。これ覚えてる?」
一枚の写真を電話台の引き出しから取り出してくる。
当時好きだったアニメの主人公の格好と同じものを着ている幼い頃の私。
テレビには、その主人公がちょうど映っていた。魔法使いマリン。この子の変身前の格好が白いワンピースに大きな赤いリボン。
正直、この時のことは思い出したくないほど痛い記憶がある。
毎日マリンと同じ白いワンピースと赤いリボンをつけて保育園に行っていたし、
自分の名前じゃなくて、マリンの変身前の名前である海を名乗っていた。私を海ちゃんって呼んでと周りに言っていた。そして、マリンちゃんが大好きなしょうくんにほっぺにチューするのをマネして私はいろんな男の子にチューしていた。
消したい暗黒の幼少期。
あれ、、。
いやいや、そんなはずないよ。当時そこそこ人気だったからマリンの格好する女の子いただろうし。
「俺の初恋の相手、あなただったみたいよ」
「いや、いやいやいや。ちがうって。だって小さい頃海に行ったことないよ。」
「それが、あるんだって、ほら。」
もう一枚写真を見せてくる。海を背にして、白いワンピースを着た私と見知らぬ男の子。
この写真初めて見た。
「これ俺の家にあったやつ。お袋が撮ってたんだって。それで、この前あなたのお母さんにも確認したら行ったことあるって。ただ忘れてただけなんじゃない?海ちゃん。」
「やめてー!その名前で呼ばないで!」
その写真が動かぬ証拠だ。
まさか、ほんとうに?
「これって運命かな、奥さん?」
結婚して三年目の話
あおのころ 小鞠 @ko-mari
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