空手部を貶す脳内格闘家二人組。

 私の出身高校は空手の強豪校だった、体育館に入れば坊主頭の道着を着た集団がガニ股で正拳突きを繰り返していたり、形を練習していたり、組み手をしていたりと言った光景が毎日見れたのだ。


 当時、陸上部だった私は空手部の練習を体育館で着替える時に毎日見ていた。そして、その度に妄想していたのは、他の格闘技を使って彼らをボコボコにする事だ、正に格闘技の経験もない脳内格闘家の妄想である。


 大体、脳内の私が使用する格闘技の種類は以下の通りである。



 1 ムエタイ


 2 ブラジリアン柔術


 3 MMA


4 テコンドー


 5 柔道


 6 極真空手



 1、2、3、5はネットでの情報を漁り得た格闘技最強説による発想だ、"実戦的な格闘技"と言うブランドを振りかざし、マウンティングのような形で空手部を圧倒するダークヒーロー風ストリートファイターの自分を妄想していた。


 ちなみに彼(脳内の私)は風格があり、まるで地球来襲時のベジータのような圧倒的なカリスマ性と強さを備えているニヒルな男である、正にコミュ症とクールの区別もできないコミュ症の負け組が勘違いで親近感を持つ対象である。


 4、6は寸止め伝統派空手に対するアンチテーゼ的思想の元に生まれた発想である。


 極真空手はまさに彼らの習っている伝統派空手に対抗して、沖縄から来た空手を別の方向に競技化させた格闘技であり、そこからさらに枝分かれしたフルコンタクト空手がk1の元になったこともあり、やはり今のスポーツ格闘技に通ずる部分があり、違和感がない。

 やはり、顔芸とバカにされる形や押忍と言う挨拶、スパルタな雰囲気ながらも寸止めと言う実戦性を感じさせないルールや武道特有の現代人に理解しがたい"精神論"や顧問と会話する際に"正座をするなどと言った礼儀作法"など伝統派空手には私の鼻につく貶したくなる要素が山ほどあったのだが、上記5つにはそれがなく、勝った物が正義の競技(ゲーム)それに沿って作られた技術(戦闘術)、そして実戦性、それに追求して作られたこの5つはとても私にはクールでビューティフルに見えたのだ。


 気持ちがテコンドーに向いていた時期に関しては実戦性と言う部分でマウントを取る気はなかった。


 だってそっち方向の話になると、テコンドーの方が叩かれているからマウント取れる立場ではなくなるからだ、じゃあ、空手よりテコンドー が優れている点は何かと言うと、格好良さと競技として成功しているかと言う点だ。


 先程言ったように寸止め空手はとにかく武道色が強い、西洋の戦闘術が競技化したボクシングに影響されたMMAやキックボクシングなどに見慣れた私からすれば頭が堅く、滑稽でじじ臭い、老害が好みそうなものに見えた、映画イップマンで中国武術の形を見て、イギリス人のボクサーが滑稽だと鼻で笑うシーンがあるが私も空手部の形を見た時に同じリアクションをしたのを覚えている。


 一方で、テコンドーはどうだろうか?宙を舞い相手を蹴り飛ばす様や片脚を上げて、フェイントを掛けてからのバックスピンキック、空手なんかに比べてとてもクールに見えたのだ。


 そんな感じで私は自分の好みや理想、そしてネット情報からの勝手な分析で本来は格闘技界のヒエラルキーで自分よりも圧倒的に上にいるはずの彼らを勝手に下に見ていた、習ってもない格闘技や縁もゆかりもないその道のプロを持って来てだ、"虎の威を借る狐"とは正にこの事である。


 しかし、実際、格闘技界のド底辺のクズは当時の私のような輩で溢れている、そう感じたのは私の一つ上のある先輩の存在と知恵袋や2chを見始めてからである。


 陸上部の先輩で私と同じような格闘技オタが1人いたのだが、なんせ頭が悪い、格闘技界底辺である"チケットも取らずテレビやネットで格闘技を観戦し、習いもせず語るだけの格闘技オタ"をさらに細分化しても彼はそこでも底辺である。


何故か、それは我々"底辺のゴミクズ"の唯一の格闘技においての取り柄である知識も散々な物だからである。


 彼は、映画"トーナメント"を観て、そこに登場する架空の格闘技、"空水流"を実在すると信じてさらに最強の格闘技だと言い張ったのだ。


 そして、それを使えば空手部なんて余裕で蹴散らせると、、、。


 その発言はすぐに広まり、部活中だけでなく、空手部の耳にも届き、案の定裏で笑われていた。


 空手部は突っかかると思ったがそんな事はしなかった、今思うとヒエラルキー上位が最底辺の戯言に腹を立てるだけ時間の無駄だったのだろう。


 そもそも、あの映画を真剣勝負だと思い込んで、空水流が実在すると考える時点で"素人以下"なのである、底辺にしても洞察力があまりにもなすぎるそんな目でどうやって選手の強さや格闘技の強さを見極めるのだろうか?


 結局、会話して見てわかったのだが彼も私と同じで好みや理想、ネットで得た情報で語っているのだ、2chや知恵袋などを見ても私やその先輩のようにどうせロクにやったこともないくせに選手や格闘技を比べて、優劣をつけて、馬鹿にし始める底辺共が沢山存在していた。


 今思うと格闘技界の最底辺の人間は私も含め、バカにされて当然で改心するまで文句を言えないのである。


 別に「チケットを買わず、格闘技を習わない癖に格闘技を見るな」とは言わないが自分がその世界の底辺だと言う事をもっと自覚する必要があると思う。


 私や先輩、ネット民のような奴は尚更であり、何度も言うが馬鹿にされようが仕方がない。



 言動には気をつけよう。



 


 



 


 

 

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