お前だろ
みこ
お前だろ
「人数合わせでいいからさ」
合コンに誘われた。合コンに誘われただけなら行く理由はないが、誘ってきたのがよりにもよってお前だとは。彼女が欲しいのか。そうか、彼女が欲しいのか。
そんなあからさまに彼女が欲しいアピールされると、悲しくなる。……彼氏じゃダメなのだろうか。俺を選んでくれれば、なんだってやらせてやるのに。
よりにもよってカズに誘われたので、行かざるを得なくなる。
飲み屋に4対4で座るわけだけど。まさか、合コンで前に座る女の子よりも隣の男の方が気になるとは。
ふっと目の前に座る女の子を見て、「えっ」と声を上げた。
前に座った子と目が合う。「うっわ」と声が上がった。幼なじみで今でも仲がいいアヤカだった。全く、よりにもよって。アヤカは俺とカズとを高速で見比べた。唯一、カズのことを話している人物でもある。……そういうあからさまなのやめてくれ。んで、はぁ……とため息ひとつ。そりゃあそうか。合コンで前に座ったのが、男との恋愛相談してる幼なじみとその意中の相手だもんな。座った瞬間、不作だーとか思われたんだろう。
それでも外ヅラだけはいいやつだから「友人なのー。ぐうぜーん」なんていつもより高い声で言いながら、ニッコリと笑う。
「え、お前ら知り合い?」ってキョトンと話すカズ。かわいいな。
それからは、流れで3人で話した。酒も入って気安くなる。
「えっ!カズくんて彼女いそうなのに〜」
……もう名前呼び。いいけど。
「いや〜、もう別れて2年になるかな」
いたのか。彼女。
グッサリくる。やっぱ相手は女じゃなきゃダメなのかな、とか。色々考える。
「あたしも、そのくらいかな〜」
「お前の元カレって、元ヤンのな〜」
「元ヤンではないし」
「あっはは、お前らってホント仲いいのな」
「腐れ縁ってやつだろ」
カズのこと知れて嬉しいけど、過去のことを知れば知るほどモヤモヤとする。
それでも、顔に出すわけにもいかず、笑顔を貼り付けながら、普通の飲み会みたいな気分で、あっという間の2時間が終わった。
当たり前のようにアヤカと帰ろうとすると、
「えっお前ら一緒?」
カズが声をかけてきた。アヤカはニヤニヤと、「カズくんと帰れば〜?」とか言ってくる。そのあからさまなのやめろ。
仕方なくなんだかなんなんだか、お持ち帰りできなかったグループみたいな空気にされ、カズと二人で駅へ向かった。
「今日ありがとな」
「カズだってあんま女の子と喋れなかったんじゃん?」
「いいんだよ、俺は。セッティングしてくれって言われただけだし」
「へぇ」
そんなこと、する奴だったんだな。
「アヤカさんと、上手くいくといいな」
「そんな関係じゃないって」
勘違い、されるのは、けっこうキツい。
ここで告れればどれだけいいか。でも、言ったら迷惑、だもんな。同じ仕事場にいて、気持ち悪がられるのは……。考えるだけでも、動けなくなりそうだ。
「俺は、お前らのこと応援できないけどな」
「へ?」
びっくりして、顔を上げた。
「カズ、お前……アヤカ狙い……?」
「違うよ」
カズが足を止めて、俺をまっすぐにみた。
「そっちじゃないよ」
「え?」
暖かな、夜風が吹いた。
お前だろ みこ @mikoto_chan
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