第17話 法務大臣と摂政③~ソーワ王国の女性 前編~
人間は珍しい者を好み、珍しい者を拒む。
ドナルド殿は大統領として人気があり初当選から今まで落選することはなかった。任期終了近くなると毎回選挙が行われる。
それに常に当選していた。
今、都市部から離れた郊外に住んでいる様子から恐らく何年も当選していない。勿論、議員も落選しているはずだ。
再度外にいるソーワ王国の女性を見ると女性の近くに彼女と同じ髪色の幼い少年がいた。
使用人が自分の子どもを職場につれてくるか?
それとも奴隷であった彼女を使用人したのではない……?
すると……。
「ソーワ王国の女性はドナルド殿の二人目の妻……?」
口してみたが考えすぎかと思い首をふる。
しかし、ドナルド殿顔をみると目と口を大きく開けて固まっている。先ほどまで険しい顔していた母が大笑いしている。
伯母の表情も先ほどより柔らかくなっている。
「面白いわね。屋敷内の事柄からそこまで導き出せるとは」
大きく息を吐いて椅子に座り直す伯母を見て「更に僕の想像話いいですか?」と前置きをいれるとドナルド殿は何度まばたきをしている。
母は楽しそうだ。
先ほどのように大笑いはしていないが笑いはとまらないようである。
伯母が頷くのを確認すると僕は話を続ける。
愛妻家と話を聞いてたドナルド殿が2人目の妻を貰うということは確実に第一夫人が関わっている。
つまり……。
「奴隷女性を連れてきたのはホワイト夫人ですね」
恐らく、奴隷女性は彼女が助けないと命に関わる状態であったのだろう。
しかし、闇市奴隷の彼女が隣国で生活するのは難しい。我が国ほどではないと思うが島国特有の外部を拒む特性は隣国にもあるはずである。
結婚そして出産が一番早く安全性に居場所を手に入れる事ができる。
しかし、それには信頼できる男性が必要であった。それもこの国の権力者かいい。
それなら誰も女性に手を出ない。
ホワイト夫人はドナルド殿を慕っているはずであるが他の女をあてがうなんて。奴隷女性にそれほどの価値があるのか。
違う。闇市出身の奴隷女性だからこそ価値があるのか。その代償払ったとしても……。
「政の世界から追い出された理由はそれですかね」
ドナルド殿は「参った」と頭をかきながらまた大きなお腹を揺らしている。
母たちは相変わらず楽しそうに僕の話を聞いている。ここまで突っ込んだ事を聞いていいのか迷う部分もあったが雰囲気で話してしまった。
「ほとんど正解だよ。まぁ、もう少ししたら政界に戻るよ」
「ちょうど現大統領のボロが出ている。ドナルド殿以外の大統領は不祥事が多かったな」
にやついた母の顔はなんとも言えない。大人の世界は色々あるのだろう。触っただけで誇りがでる人もいる。
きっと手段を選んでいるとドナルド殿に勝てないのだ。
後は彼女の容姿を受け継いだ子どもが幸せになってるといいと願う。
「ドナルド殿はあの方が好きなんですか?同情ではなくですか?」
ドナルド殿も奴隷女性もお互いに好きあって一緒にいるのか疑問に思った。生活のためとは言っても感情のない結婚はさみしいと思う。
予期しなかった質問であったようで、ドナルド殿は咳き込み頭をかきながら頷くドナルド殿は耳まで赤くなっている。
母たちがニヤニヤしてドナルド殿を見ている。馴れ初めを知っているだろう。
ドナルド殿のその反応で解答はわかったため、もう話はよいかと席を立つ事にした。
僕がいない方ができる話もあるだろうと母の顔を見るが相変わらず、ニヤニヤとドナルド殿を眺めている。
「ドナルド殿、第二夫人とお話してきてよろしいでしょうか」
ドナルド殿の承諾を得るとゆっくり立ち上がり母たちに挨拶をして部屋を出た。
あの三人から離れた事で緊張がとけ、胸をなでおろす。
ある程度この国の事を聞く事ができたし、そろそろ退室する頃合いだと感じた。護衛なしのお忍びでの入国。
恐らく僕に聞かれたくない話もあるだろう。
照れるドナルド殿はなんだか可愛かった。
ドナルド殿はあの女性の事が好きなんだろうが女性はどうなんだろう。
仕方なくドナルド殿と結婚したのなら可哀想だ。周囲の者は丁寧に接しているようであるが第二夫人である。
一夫多妻は我が国では考えられないが、その代わり妾や不倫をするものいるから同じだと思ったが、妻とした方が権利がもらえるから有利だと感じた。
国より規則が違うのがとても面白い。ここにきた意味があった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます