三節 「寄り添う」

 僕はさらに、これまで関わった人を再び思い返すことにした。

 愛に生きた人、夢に生きた人、自分の足で未来を見つけて再び歩き出した人。

 確かに彼らは孤独を感じた。

 心が折れてしまった時もあった。僕まで心が苦しくなるほど辛そうだった。

 でも、必死に孤独と闘っていた。

 僕はその人たちが亡くなってしまうことを止めることは一度しかできなかったけど、その人たちの心の支えに僕はなれていたのだろうか。

 彼らの思いにちゃんと寄り添えていたのだろうか。

 僕がいることで、孤独と感じる時間が少なかったかははっきりとはわからない。

 確かに素敵な顔を僕に見せてくれる人もいた。生きたいという思いが段々強くなったのを感じた時もあった。

 でも、人の心の中は、その人にしかわからないから。

 一方で、彼らに出会うことで、僕が教えられることもあった。それは、愛情や夢や希望という思いや感情の強さだ。どんなに辛くても、彼らはそれをずっと信じていた。それらがあったから、生きることに自ら終止符を打つという選択をしなかった。それらの思いや感情は、人に生きる力を強く与えるものだった。

 彼らの懸命に生きた姿は、僕の心の中にずっと残っている。

 忘れることは決してないだろう。

 でも、いまだに看取り方について後悔は残っている。

 もっと彼らのために何かできたのではないかと思う。僕の配慮が足りなかったのではないかとも思う。

 看取ることは、ただ最期の瞬間に立ち会うというだけではない。

 その人の痛みを知り、残りの人生を今まで生きてきた時間よりも素敵なものにすること。そして、生きてきてよかったと感じてもらうこと。

 看取ることには、それらのことも含まれていると僕は彼らを看取って強く感じた。

 もちろん、看取る人も一緒に辛くなる時もある。暗い感情を近くでずっと受け取っているのだから、そうなることはおかしなことではない。

 看取ることは、誰しもできることではないのかもしれない。

 でも、その人が本当に大切な人なら、自分を必要としてくれるなら、孤独な思いを少しでも軽減させる行動をしてほしいと僕は思う。

 僕は一番大切な人に孤独な思いをさせてしまったから。

 僕にはもう彼女に思いを届けることはできない。彼女の今の気持ちを知る術もない。

 大変なこともあるけど、できることをしないままお別れをすると心にずっと後悔が残る。

 僕、そして彼女のような思いを、他の人にはしてほしくない。

 今孤独を感じているなら、僕がその孤独をなくすために何度でも寄り添う。

 僕は、寄り添うことを諦めない。

 今美優さんと会う約束をしている場所に向かっている。彼女との関係は今も続いている。

 空を見上げると、まぶしすぎるぐらいに太陽が光り輝いていた。

 孤独の先に生まれた新しい関係性が、この太陽のようにずっと輝くことを僕は願った。

 


 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

寄り添う者 桃口 優/ハッピーエンドを超える作家 @momoguti

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ