第八十八回「洗う」 鱗街

 太陽にもっとも近いその街は、洗濯産業で発展している。雲の上にある街には、曇天も嵐も雪もないからだ。

「こんにちは、お届け物です」

「あら、運び屋さん。こんなところまでお疲れ様です」

「いえいえ、これも仕事なので」

 運び屋が持ってきた大きな箱を、受付担当が開けて中身を確認していく。

 衣替えをした服、汗を吸った布団、ぺしゃんこになった絨毯、色褪せたぬいぐるみ。

 彼らは太陽の下で、ほかほかになるまで日向ぼっこをするのだ。

「はい、確かに。では、終わるまでお待ちください」

 ほかほかになるのは、洗濯物だけではない。蒼天の下でたなびく洗濯物を眺めながら、運び屋はまったりと日向ぼっこを楽しむことにした。

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