第八十回「宝」 未来の僕らへ
「こんにちは、荷物をお届けに来ました」
どうも、と挨拶をする運び屋に、僕は会釈をする。はて、誰からだろうと差出人を見ると、そこには自分の名前が書いてあった。辛うじて名前が読めるその文字に、僕は十年前のことを思い出した。
自分の宝物を未来の自分に送ろう、と同級生と企画したんだ。
「そうか、あれから十年か」
しみじみと呟いてサインを書くと、運び屋はにこりと笑った。
「思い出もご一緒にお届けできたなら幸いです」
「どうもありがとう」
自室に戻り、早速箱を開ける。掌に収まるほどの大きさの箱には、一冊のノート。表紙には僕と、妻の名前が大きく書いてある。当時の甘酸っぱい思い出が蘇ってきて、運び屋の仕事に感謝した。
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