第11話 聖女と魔女と皇龍姫
私達に髪の色以外ソックリなその子も私達を見上げ呆然としていた……漸く口を開く。
「い、いや〜お腹すき過ぎて死ぬかと思っちゃった!あ、思っちゃったのじゃ……ありがとうなのじゃ」
ありがとうとは言ってるけど与えた覚えはない
「いや……それリナのポテチだし……それに強奪してたよね?いいの?自分の写身の現身だよ?間接的にも娘みたいなもんじゃん?リナ泣いちゃったよ?」
誰も反応できずにいたがゼクスがツッコミをいれた。
リナが涙目になっていたのは気付いていたけどとうとう泣き出してしまった。
そんなにポテチ食べたかったの!?
でも写身の現身って?
「リナ!?リナ!?会いたかったよ〜!!向こうで見守ってたけどようやく会えた〜!!ママって呼んでみて!?ねえ!?ほら」
いや泣いてる子にその接し方はどうかと思うな私は……まずは謝れ
ママかあ……子供がいればこんな感じなのかなあ?
「え……!?え!?誰なの!?私とソックリだけど」
そうなってしまうよね。
知らない人に突然お前の親だとか言われたから誰だって困惑する
歳も見た目も同じにしか見えないから猶更だ。
「私は……その……リノアなのじゃ」
「え!?リノア姉さんもこっち来たの!?でも……ゼクス姉さんがさっき……」
来ているのはリノアではない……とゼクスは確かにそう言っていた。
「あ〜リナ、この子は確かにリノアの記憶を引き継いでるけどまあ同じではあるけど別人かなあ……リノアはリナにこんなに関心なかったよね?」
リノアが誰かわからないけどなんとなく話は飲み込めた。
「それはほら……私もみんなみたいに綾子みたいな存在が羨ましかったんだもん……あ、羨ましかったのじゃ」
のじゃっ娘はキャラ付けだったのか素の口調は私やゼクスと大して変わらない様だ。
キャラ被っちゃうじゃん!
「リノアの真似してキャラ付けしても慣れてないならやめたら?」
「む〜、それだと私のキャラみんなと変わらないじゃん!リノアみてたらコレだ!って思ったんだけどな〜」
みんなって……みんなキャラ違うけどね?他にもいるの?
「はいはい、みんなに自己紹介しようね」
「一体誰なのかしら?」
「私には記憶ないワネ」
アインスやフィーアは知らないらしい。
この差はなんなのだろう?
「……ここにいるみんなには言っても平気なの?私の存在そのものを」
キャラ付けはやめたんだ……嫌だなあキャラ被っちゃうから'のじゃっ娘'に戻って
「大丈夫、因果の影響は極小。そこにいるアーニャはまあ少しあるけどいずれ通る道だし」
「アーニャ?静寂じゃなくて?」
私は……誰なんだろう
「一応ね……はい!自己紹介」
「ごほん、それじゃ……妾は皇龍姫じゃ。まあ【暴食】の木の女神の写身じゃな。リノアの経験も回収しているしまあリノアと呼んでくれたら嬉しい……練習通り噛まずに言えた!!」
のじゃっ娘でいくらしい……いいぞ!がんばれ!しかし……女神とな?
「じゃあリノア姉さんってことでいいの?」
リナも女神と聞いて動じてないし割と身近なものなのかな?
「そうなのじゃリナ、あとママと呼んでも良いのじゃぞ?」
「よろしくねリノア姉さん」
「あ……あの……リナ?その……」
「リノア……食べ物の恨みって怖いのよ?」
リナと親しいアインスだからこそより思うところはあったのだろう。
まあこればっかりは仕方ない……永く食べ物とは無縁だったとは言え食い意地を張りすぎても良くない。
それが率直な感想だった。
「で、リノアは穴の中で何してたの?」
「ふむ……、よくぞ聞いてくれた。妾はこの【混沌】が開けてくれたこの穴からこの世界へ渡ってきたのじゃがな……余りにも侵略者が多くてな……食い止めておったのじゃ。褒めてくれてもいいのじゃぞ?」
「まあ、偉いね……ありがと」
「でも場所がね……まあ仕方ないわね」
公都が20年もあんな状態になっていたことから当事者であるアインスは思うところがあるのだろう。
「まあ、討ちもらしが多少あったかもで申し訳ないのじゃ……弱体化はさせたのじゃが……」
「まあ被害は確かにあったけどここまで最小限になったのはリノア姉さんのおかげなんだね!ありがとう!前の世界だと侵略者が現れると大騒ぎだったから!」
「……リナ〜!!なんていい子なのじゃ!誰に似たのかのう?!誰に!?」
「……まあ向こうの世界の姉さんかな……」
「あ……そう……まあそうだよね……」
「まあ、リノアもがんばりなよ!」
ゼクスがフォローする。
「でも戦っていたらいきなり浄化されのじゃが、【静寂】達がやってくれたのかの?」
「私達は……サポ……ート」
「やったのはアーニャだよ」
「……アーニャは【静寂】なのかえ?それとも綾子なのかえ?」
「どっちだとしても【静寂】だから今はなんとも、ただ結社を経験してるとしか……」
「そう……しかし流石なのじゃ……一気に今回の波が消えてしまったのじゃ」
「いや〜それほどでも〜あるかな?ハハハ」
「アーニャ姉さんかわいい!綾子姉さんを思い出す!」
「え……今回っていったのかしら?」
「うむ、少し時間おけば、また来るのじゃ」
「え〜」
「まあこれはいつも通り【秩序】と【規律】辺りの仕業じゃろうな?写身を有り得んほどに送り込んできた。【混沌】の補助なしだと写身も化け物に変異してしまうがな……」
「嫌がらせが本当に陰湿だよねあの子達」
「ほんと……いつ…ま……で続け……るんだろ……」
女神同士の争いなのかな?少しスケールが大きいけど。
静寂、暴食、混沌、秩序、規律、それらは女神を識別する名前だと何故か理解していた。話の流れ的に私は静寂に関わるなにかなのだろうか?使徒的な?
それは一旦おいといて!
「じゃあ穴とじちゃおうよ」
「うむ、アーニャのおかげで落ち着いてる今のうちにやった方が懸命じゃな……ほれ」
リノアが片手を翳した途端、バイオレット色の魔科学とは違う原理の紋様が光を放射し浮かび上がり、穴を包み込む。
光の終息と共に、穴が閉じる
「わあ、リノア凄いじゃん」
流石、女神の写身とやらだね。
「これは【混沌】のところでの研修の成果だね、私はここまで穴の制御速く出来ないし」
ん?ゼクスって女神なの?聖女じゃなくて?
「【静寂】はなんでも出来ると思っておったのじゃがまあ……ふふん私も成長しているという事じゃ」
「はいはい」
「で?アルティメットドラゴンは?」
ほえ〜、強そうな名前!
「最優先事項じゃしこの世界換算で400年前に送り出しといたのじゃ?【静寂】がいるということは筋書きは進んでダーリンは生きておるじゃろ?」
ダーリン?くんくん……なにか匂う話ね
「あ、そうなんだけど〜、アルティメットドラゴンの居場所がわかんないんだよね。子飼いにして防衛に使えたらって思って」
「ふむ、ダーリンに肉を分け与えたらまあ放逐されるからのう。とはいえどこかで大人しくすしてるはずなんじゃが」
「どんなドラゴンなの?」
「黒いドラゴンじゃぞ、そうじゃなイメージのホログラムを出すとこうじゃ。まあ最初は虹色に光ってたはずじゃが目立つから役目を果たすとこんな感じに色にしてるのじゃ。まあブラックドラゴンとの違いは角が二本ってところじゃな」
リノアがまた謎の力でドラゴンのイメージを立体的に見せてくれた。
「あ……角が二本……」
「どうしたのじゃ?アーニャ」
「あ、その……あ〜…………倒して食べちゃった……」
「……へ?」
ダメだったのかな……?
「いや、ちゃんとノルくんやみんなにわけてだけど……やだな〜全部私が食べられるわけないじゃ〜ん」
「あ、いや……食べたなら仕方ないのじゃが一応、エンシェントドラゴンなんか比にならないくらいの力は与えておったのじゃが……世界すら滅ぼすくらい」
え……ヤバイじゃんそんなドラゴン野に放ってたの!?
「あ、確かにヤバそうな攻撃とか口から爪から出そうとしてたしオマジナイと術式合わせて無効化しちゃった……」
最初、食らうとヤバいなってのはあったから防壁術式で凌いだけど連発してきたから、同等の魔力を位相反転させたフラッピングエーテルで相殺させたね。
「あ……そう……でも……大人しくしてる筈なのじゃが?」
「凄い凶暴だったよ……目が血走ってて狂ってるような感じにも見えた」
「そんな筈は……」
「まあ過ぎたことは仕方ないし穴も閉じたしオヤツを食べ「あのね姉さん!」」
「ごめんね……穴はまだ、もう1つあるの……小さいし特になにもなかった穴だから忘れてた……」
リナが指さす方向をみると……
確かに穴があった。
じっと見ていると
「わ、穴が広がった!わわわ!なんかいっぱい出てきた!キモ!!」
これが侵略者!?
リノアが言っていた通り、異形の怪物が穴から湧き出てきた。
「みんなオマジナイ準備!」
「間に合うかしら……さっきので摩耗して限界だから時間かかりそうね」
私一人での発動も可能だけど、サポートがあれば一瞬だ。どちらにしても時間がかかる。
こうなれば白兵戦で……
「姉さん達!私が食い止めるから準備して」
リナをみれば手脚が龍の様に、尻尾も生えており頭には角が生えていた。
「わ!龍人形態ってやつ?かっこいい!」
「キャー!リナ格好良いし可愛いのじゃ!流石自慢の娘なのじゃ!!この勇姿を……アーニャ!枝の外でみてたから知っておるが結社ガーデンとやらに録画機能が確か……「リノア姉さんも早く穴塞いで!」」
「わ、わかったのじゃ!!」
リノアが速攻で穴を塞ぎ、リナが時間を稼ぐ。
まあ殆どリナが討伐したけどなんとか私達も準備を終え全て浄化することが出来た。
「もう1つの穴小さかったけど、これも【混沌】があけたの?」
「いや違う筈じゃ……」
「じゃあ誰が……」
「それは私とアダムが向こうから渡ってきた時に開いた穴……でも閉じちゃったね」
「リナ……」
リナが遠くをみてどこか哀しい顔をしていた。
と、その時
カランカラン
乾いた音が響き渡る。
音が聴こえた方を向けば球体関節人形の様な物とローブが転がっていた。
ローブには線が一本……
「え?アインス?」
「アインス姉さん?」
限界とは言っていたけど……まさか……短い付き合いだったけど寂しいかも
なんて考えていると
『やっぱりメンテ無しの突貫だとキツいわね〜』
あれ、生きてるの?って元々生物学的には生きていないのか?幽霊……?怖!
「私達の義体も限界かも……」
ゼクス達がガクガク震えている、まるで今にも糸が切れそうな人形の様に。
「アインスはどこから喋ってるの?」
『貴女の中よ』
え!?取り憑かれちゃった!?
「え、やめてよ……プライバシーもへったくれもないじゃん」
『ふ〜ん、なるほどね貴女の中にはいって色々わかったわ』
何がわかったの!?そういうこと言うのやめて!?
「じゃあ、私達もそうするか〜
「私もカシラ〜」
「私……も」
カランカラカラカラン
球体関節人形とローブが追加で三体転がっていた。
他の三人も私に取り憑いたったこと?
「やめてよ〜」
『あ〜なるほどね〜』
なにがなるほどなのさ!
――まあそのうちわかるから受け入れてあげて
そう聴こえた気がした
まあいっか、なんて思えないけど仕方ないか……そんなことを考えていた。
「じゃあ大人しくしててね」
『『『『わかったわ!』』』』
あれ?みんな口調が……統一された?
気のせいかな?
「じゃあ落ち着いたし帰ろうか」
「そうじゃなお腹が空いたのじゃ」
「私のポテチ食べた癖に!」
「違うのじゃ違うのじゃ!」
『『『『食べ物の恨みは怖いのよ?』』』』
アインス達の声が揃って四重に聞こえる。
どうしちゃったの?
「リナ……ごめんなのじゃ……」
漸く謝ったね……と思ったけど時既に遅し
「ふん!」
他人の食べ物は取ってはいけない。
他人のふり見て我がふり直せとはこういうところだろう。
私も気をつけよ
とまあ色々あったけど、なんとか問題は解決した。
地下農場は近い将来閉鎖される。
あれ?私の仕事なくなっちゃう!?
次の日、ノルくんが王都から帰ってきた
スワロウテイル ~高く昇る月と私の異世界冒険譚 ノエル・フォン・シュテュルプナーゲル @noelvonstlpngl
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