第8話 聖女と魔女
『貴女は何者なのかしら?』
「そうね、私のガーデンにある結社員名簿にも貴女に該当する人がいない、でもガーデンの仕様を見る限り貴女は私のいた世界の結社関係者だと思う」
魔女の部屋にお泊りで来たのだがいきなり質問攻めにあっていた。女子会というものだろうか?
「記憶喪失だしなんにもわからないんだよね」
「そっか〜、貴女が何者でも大丈夫だけど少し気になってね……異空間収納に入ってるものから特定できないかな?」
――私も気になってた!
異空間収納リストを表示して内容を閲覧した。膨大な数の品々が収納されているようだ。
予備のローブや着替、あとは刀や杖、箸、他にもこんなに?と思ってしまうほどの種類と量の食料が入ってた。食べ物が意外にも多いのは嬉しい誤算だ。
――あれ?これは?
その名前を念じそれを2つ出してみた。
「これは……ミルクレープ?」
魔女は知っているのだろうか?
夢で私にソックリな女の子達が食べていたケーキだ。
『ミルクレープ……久々に見たわね』
聖女も知っている様だ。
「食べよう?」
私も食べてみたい
「「『おいし〜』」」
「久々に食べたけど美味しすぎる」
『ドテールのより美味しいわね』
「初めて食べたかも?いや食べたことあるような?記憶喪失だしわかんないや……でも美味しいね〜これ」
「でも綾子姉さんが向こうでよく作ってたレベルのものだしやっぱり結社の関係者で間違いなさそう、他には?」
「あとは刀が20本?」
ガシャガシャ……
「予備のローブに……」
バサ
「あ!レイワ堂のチョコ!わ!段ボール3箱分!やった〜!私これ好きなんだ〜!」
ドサドサドサ
他にも日本製のお米とか調味料が山の様にあるけどこれらを出すと収集つかないしやめて置くことにした。
「ん〜、刀は結社で使われてるのだしローブも……なんだろう?よくわからないね……」
『これ……月詠ノ叢雲じゃないかしら?話に聞いていた結社ってこんなの量産出来るのね……あとさっきレイワ堂のチョコっていったのかしら?』
「うんそうだよ、私これ好き」
『結社って凄いわね、これも再現できるのね?』
「あ、これは多分日本の『食べていいかしら?』
――多分、結社製ではないけどまあいいか。
「いっぱいあるしいいよ」
「綾子姉さんこんなの作ってたかなあ?」
『リナ、これを食べなさい!早く味わいたいわ!』
魔女はリナという名前らしい。
聖女はとにかくチョコが食べたいみたい。
「え?うんわかった」
美味しいね!なんていって女子会はエスカレートしていく。
このあとは何故か異空間収納にあった手作りポテチと炭酸飲料を山程食べた。誰が作ったのだろう?特に魔女ことリナはポテチを涙流して食べていた。
「美味しい……もう食べれないかと思ってた……美味しいひっぐ……グス」
リナはポテチが好きみたい。
私もポテチは好きだけどケーキの方が好きな為に泣くほどにはなれない。けど話を聞くに結社の人間らしくこの子も日本人なのではないだろうか?まあベールで涙も顔も見えないんだけどね?
『貴女の正体がわかったわ』
「わかっちゃったの?記憶喪失だから私はピンとこないんだけど」
「私もなんとなくだけどわかっちゃったかも」
リナとアインスはわかったみたい。
「『貴女の正体は』」
――ドキドキ……私の正体は……?
『ズィーベンね』「綾子姉さんね」
――どっちだよ
「『え?』」
ズィーベンって誰だろう?Gペンのことかな?と色々な想像が頭に浮かび弾けていった。それに綾子姉さんってリナは前から言ってたけど誰だろう?私はその名前が妙に懐かしくは感じる。綾という部分だろうか?
「両方違うんじゃない?」
『でも貴女、認識阻害してるわよね?』
「え、わかんない」
「私も綾子姉さんが認識阻害で別人になっている様な気がする……なんで認識阻害しているのかはわからないけど」
「そういえば……」
みんな私の髪の色を茶色と言っていた。あれは認識阻害により本来の私の姿に見えていないのではないだろうか?
「みんな私の髪を茶色っていってたね」
『茶色に見えるわね、それに初めてみる顔に見えるわ』
「それに物理的に存在するアーニャさんと私達が見ているアーニャさんにズレがある気がするの……私は空間系術式得意じゃないから勘というか感覚だけどね」
『まあリナの顔見せてあげたら?』
――リナの顔をみたらどうなるというのだろう?
なんて思ってはいたがリナの髪の色が実はずっと気になっていた。
だって、私と同じ髪の色なのだから。
「うん、じゃあベールをとるね」
そういい彼女はベールを脱いだ。
やっぱり、というかなんというか……
私は部屋にあった手鏡で自分の顔を映し、リナの顔と比べた。
「私と同じ顔じゃない?」
こうも同じ顔の人がいるんだとは思う程だった。
「やっぱりアーニャさんにはそう視えるの?」
「うん、びっくりしちゃった」
『じゃあ貴女は認識阻害してる何かが掛かっているということね』
「そうみたいだね……でも」
――なんで?
『まあ記憶喪失なのも謎だしわからないことばかりね……』
「ともかく何者だとしても便宜上アーニャ姉さんと呼ぶ事にするね、よろしくねアーニャ姉さん」
――なぜ!?
リリスの事も姉さん呼びしてたしそういう子なのだろう。そう思うことにした。
でもリナは私とソックリだし夢でみた双子の妹ということもありえる。
――私は姉だったのか……?
『認識阻害解除出来ないかしら?リナ』
「ん〜、これ確かになにかあるね。アインス姉さんの権能みたいなのと術式のハイブリッドになってるみたい……高度過ぎて私には無理だね」
『私は術式あまりわからないから無理ね』
――私に掛かっている術式とな?
私も体の表面に張られているなにかを感じていた。これが認識阻害の術式なのだろう。
「う〜ん、あ!わかった!認識阻害の術式よ〜♪とっとと♪とっとと♪滅びてしまえ〜♪」
なんてやってみた、大概これでなんとかなりそうな気がしてはいたけど。特になにも起こらなかった。
「ハハハ、アーニャ姉さんかわいいねそれ」
『……』
「おかしいなあ……オマジナイでどうにでもなると思ってたんだけど認識阻害だけじゃないのかなあ……」
『貴女、それはズィーベンである証拠よ……でもリナのいた結社に関わることを貴女が知っていたり術式やガーデンを使えるのかが不思議ね、私は使えないもの』
――ちょっとちょっと話勝手にすすめないでくれる!?話がついていけないよ!
「わ、わかんない……ズィーベンって誰?それに証拠って……?」
『はあ……記憶喪失なのがやっかいね……さっきの「滅びてしまえ」って良くないものを滅するオマジナイ、アレは権能よ?ズィーベンは……まあそれは現状だと言わない方がいいのかもしれないわね、因果に関わるし』
アインスの言うことがさっぱり謎だけど私の使っているオマジナイは権能らしい。
ふ〜ん、まあいいかと思ってしまっていた。心の奥底から「気にするな」そんな事を言われた気がしてそれに不思議と従い、気にしなくなる。
「ま、そのうちなんとかなるでしょ」
『それならいいんだけどね……』
「まあそのうちね……それよりなんかお腹空いたね……」
「私も……アーニャ姉さん他に何かない?」
何かないかなと異空間収納リストをみていた。
――お、これは?『綾子バーガー』?なんだこれ?数が100食……これも凄い数だね
備考のメモ書きには「大事に食べること」
なら1個ずつかな?
「綾子バーガーっていうらしいよ」
「あからさまに綾子姉さんの名前が出てきたね……やっぱり綾子姉さんなんじゃないの?」
『いや……綾子じゃないわ……ズィーベンよ』
どっちだとしてもまずは綾子バーガーを食べたい。お腹ペコペコなのだ。
さあこれから食べるぞった時に、部屋に誰かが入ってきた。
――えっと……
「そうだね!ズィーベンなんじゃないかな?」
「私も……ズィーベンだと……思うな」
「そうなのカシラ?」
私にソックリな女の子が3人、部屋に乱入してきた。
私やリナが来ているローブとはデザインは少し違うが少し似ている気がする。
「私が3人増えた?」
それにこの子達、なにか違和感がある。
――ん?生物じゃなくない?
いやでも体温もあるし見た目は生きている人間にも視える。
「アインスどうして今回は私達と一緒じゃないの〜カシラ?」
『暴食の写身のこの子が今回はいたし貴方達とは別行動をとったのよ』
――私、おいてけぼりなんですけど〜!?
「アインス姉さん……この人達……いや姉さん達が話に聞いた別の聖女達?」
『そうよ、フィーアとフンフに……私は初めて会うけどゼクスよね?貴女達、不法侵入よ』
「ノルくんにはちゃんといってあるよ~!わあ!流暢な『わよ言葉』!フィーア達と全然違う〜!そうだよ!私がゼクス!よろしくね!」
――え〜どうしたらいいの?全然話がわからん!
「ゼクス姉さん、アーニャ姉さんにどことなく雰囲気似てるかも?」
私が困惑していたからかリナが話を振ってくれた。
ここは私が自己紹介をしてその流れを作るべきだろう。
「は、はじめまして!アーニャです!」
「私はフィーア、ヨ〜」
とって付けたような『わよ言葉』がフィーア
「わ、わわわわわ、わたし……フンフ」
喋るのが苦手なのがフンフ
「そう来たか〜!確かにその状態なら因果は強いし今回で目標は達成出来るかもね〜、私はゼクス!宜しくね!がんばろう!?」
よく喋り、ハキハキした私みたいなのがゼクス
でも……
――がんばるって何を?
まあいっか
「ノルくんがさ〜、また1人で外出しちゃって危ないから私達で追いかけて来ちゃったよ」
ゼクスがそう語る。判断はローブのフード、ちょうど額の辺りにある縦線の数からできる。ゼクスには6本の線が入っていた。フィーアは4本、フンフは5本だ。
――過保護すぎない?
この子達はワルくん……もといノルくんの保護者のような口ぶりである。
『まあズィーベンらしきそちらの子がいるから大丈夫じゃないかしら?』
「やっぱりズィーベンというか今回のワタシだよね?」
――今回の?ワタシ?
それを聞いた途端、私の身体を覆うなにかが弾け飛ぶ感覚がした。
『第一条件クリア、認識阻害解除スクリプトを実行します』
AIルーンの声が響き、視線は私に集まる。
「やっぱりズィーベンだったのね?」
「なんで認識阻害してたの?」
――わ、わかんないよ……
「あら……でも三つ編みが少しだけ癖毛かな~カシラ?」
「まあ混沌のと話してそういう綾子スタイルで来たんじゃないかな?因果も強まるし」
「多分……きっと……そう……」
「わからないけど……第一条件クリア、認識阻害解除スクリプトってルーンが言ってたから……」
記憶のあった頃の私はきっとこうなる様に筋書きしていたのかもしれない。
「……ってこと術式も使える結社員であり静寂の名を冠する最終兵器を投入してきたわけかな?」
そう語るのはゼクスである。静寂?とはいったいなんなのだろう?
――私は最終兵器だったの?
「静寂って確か、シズル姉さんの……」
「そうだよ暴食の子、リナだっけ」
「ゼクス姉さん!私は確かに少し食べたりはするけど暴食じゃないし!」
「ははは、ごめん」
静寂、シズル、綾子、最終兵器、結社、リナの顔、聖女達の顔、これらの情報が錯綜して脳がオーバーヒートをしそうだ。
「ごめん……私、もう寝る……」
「こういうところは本当に綾子みたいね……」
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