第42話 そろそろ行かなきゃ
時間が経つのもあっという間でこの世界に来てから20年が経った。人生の半分以上は既にこの世界で過ごしていることにいつの間にかなっていた。
私の年齢は……――やめとこうかそういう話は……
そろそろである。
私がこの世界から巣立つ日も近い――はずなんだけど?沙汰は追ってこない。
「アーニアさん……私達、いつこの世界を出ていくの?」
「あ、あ〜……――それなんだけどね?ツムギちゃんがまだって言っててね……――。なんかあっちの世界の準備が終わってないんだって?よく私もわからないんだけど……」
「あ、そうなんだ……――まあ、シズルちゃんもまだ目覚めてないし……まだいいのかな?」
「そうだね〜」
シズルちゃんがある日を境に眠りについた。別に死んだと言うわけじゃないけどね……――目を覚まさない。
イロハちゃんが言うには『お仕事』をしに行ってるらしいけど詳しいことは教えてくれない。アヤネも同じ様に眠っていたんだけど半年ほどで目覚めていた。
なのにシズルちゃんはまだなのだ……。
身体はここにあるのに、どこかへ行っているらしい。
もう2年も経つ――どこへ行っているのだろう?私寂しい
「シズルちゃん、まだ戻ってこないね」
「ハイエルフ綾子……」
「なんでハイエルフ綾子なんて呼びづらい方で呼んだ?エルフ綾子でいいじゃん」
「ハハハ、いやあ、ついね。」
エルフ綾子は魂と身体を得て、私とは独立して動いている。まあ分離したわけではないから私の中にもエルフ綾子は眠っているけどね。
正確には写身でエルフ綾子が表層となっている。だからエルフ綾子の中にも私が眠っている。
「エルフ綾子どう?そっちは準備終わった?」
「うん、まあ私は元々次の世界に行く途中でドロップアウトしたからね〜……――、イロハちゃんが言うにはレイちゃん達、先に着いちゃってるらしいよ。」
「そっか……、あ、遅れてくならレイちゃんに先こされないように……」
「うん、わかってる……」
最近、レイちゃんについて色々とわかってきた。親友ではあるがそっち方面では侮れない最大の強敵である。
「私も準備は終わったんだけどね〜、まだみたい……」
「あとは私達だけか〜」
セカンドも女神綾子も次の世界へと旅立ってしまった。
◆
セカンドはね
「先輩綾子〜!ファースト先輩!お先に〜!またね〜!二人のおかげで今があるよ。あ、女神綾子の悪い方が私を攫って先輩綾子に入ってたからか〜!女神綾子もありがとう!」
「元気でねセカンド、また機会があるなら会えるといいね、がんばってね〜」
「うん!まあアヤネもいるし大丈夫!ほら行くよ!アヤネ!」
元気ハツラツなセカンドだけど目元が紅い。盛大に泣いたのだろう。私も出ていくときは泣いちゃうかも……今生の別れと大して変わらないしね。
「世話になったわね、みんな。セカンドの綾子ああ見えてドジだから私がフォローするし安心するのよ。」
セカンドとアヤネ、なんでか凄い仲良しでアヤネもいつの間にか付いていくことになっていた。まあセカンドがアヤネの世話を何故かしまくっていたのだけどね。見ていて微笑ましい光景だったけど少しシュールだった。
ちなみにアヤネ以外にブラッドエルフ数名が「姫達のお世話をする」とか言い出してついていった。せっかく結社に取り込んだ貴重な人材であるブラッドエルフが減ることもありアーニアさんが少し嘆いていたけどね。
セカンドとは二人でお馬鹿なことばっかりしてたけど楽しかったなあ。
女神綾子についてもイロハちゃんがハイエルフの身体を用意してくれたそうだ。そして女神の部分を封印したそうだ。どうやら女神状態のワタシというのは因果だったかなにかが良くないらしい……――けどなんの話かよくわからなかった。
女神を封印した女神綾子、最初は記憶が混乱していたけどまあ融合体綾子から得た戦闘ノウハウ、知識などはそのまま、何故か権能もある程度使えたりチートだった。
融合体綾子は女神綾子に統合されたのかもういないらしい。余談だけど融合体が別の世界で暴れていた時は、特にそこのワタシやアヤを死なせてはいないみたいだけど迷惑をかけたこともあり本体が各世界へ謝罪して回るという案件が裏で動いているらしい。まあそこは私はよくわからないので、気にする必要もないだろう。
「お世話になりました!本当にありがとう……――では、私も幸せになってきますわ〜!さようならですわ〜!」
なんて言って旅立った。
ちなみに女神綾子にはノワールちゃんってフェンリルの子がついていった。ゴスロリの服お互い好きで仲良くなったみたい。ノワールちゃん、実はシロさんの妹なんだって。アーニアさんが優秀な部下が減るのは……って焦って引き止めてたけどまあ……ツムギちゃんがノワールちゃんの同行を許可している以上、強くは出れないみたい。またまた残念だったねアーニアさん。
◇
「うちらだけになっちゃったね〜……」
「ワタシはまだいいじゃん……、私一人ぼっちで行くんだけど……向こうにはレイちゃん達いるけど……」
「あ〜、そうだよね〜」
確かに、みんな誰かしら付いてってるのにエルフ綾子一人だもんね……
「どうしたの?しんみりしちゃって」
「イロハちゃん、いやなんかね……そろそろこう卒業シーズンみたいな雰囲気もそうなんだけどね……エルフ綾子に誰もついてかないね……って」
イロハちゃん、これで身体3体目である。
最初とその次の身体はエルフ綾子と女神綾子にあげちゃったからね。ただ今回は成長しない様にしたのか、ただでさえ小さい私達より少し小さい。
「エルフ綾子に誰もついていかないの?ふ〜ん、なら私がついていくよ」
「え?イロハちゃんが?なんで?」
別にエルフ綾子と仲は良いけど、そこまで濃い関係でもない様には見えていた
むしろ何故か別綾子につきまとってウザがられていた。
「え、あ〜まあアヤネじゃなくてごめんだけど、エルフ綾子の行くべき枝が一度燃えた件、現地で調べたくてね〜。」
あ〜そっかなるほど、仕事熱心だね!
まあエルフ綾子とセカンドでアヤネを取り合っていた節はあるから、エルフ綾子はアヤネの方がいいなって思っていそうだ。
アヤネ、意外にも人気なのだ。
「本当に?よろしくねイロハちゃん!これからもよろしくね!」
「うん!仲良くしてね〜!それにアヤネも一度、本体に経験反映してるからエルフ綾子の方にも写身を送るらしいし、そのうち会えるよ」
「本当に!?」
エルフ綾子とアヤネ、因縁の2人だったけどこうも仲良くなるんだね〜。まあアヤネは保護欲を掻き立てるのかね?
◇
半年後、エルフ綾子とイロハちゃんも旅立った。なぜかまたブラッドエルフが2名ほどついていったけどね。そのせいでアーニアさんとひと悶着あったけどまあ何とか落ち着いた。
他のみんなの時もそうだったけど……――エルフ綾子の送別会の時は特に泣いてしまった。だって私の半身のような存在だ。
お互い仮分離もできない様に処置もしているし下手すれば一生会えない気もする。
亡霊だったエルフ綾子がまたこう身体を得て旅立つ嬉しさの反面、寂しい気持ちも大きかった。
「またね、ワタシ」
そう言って、旅立った。
またね、ってまた会える人に言うセリフなんだけどね……。
うう………。
◇
結社のとある一室にて
「あ〜、これで私がこの世界に来た当初のメンツになったんだね、まあ別綾子は別として。」
「綾子〜、私達も楽しみだな〜」
レイちゃんいるし寂しくない……!
「そうなのだぞ!綾子様!また模擬戦をやらないか!?」
シロさんまた!?ここ数年、会えばそればっかり!
「シロやめるニャ、綾子様が困っているニャ」
「ナツ様は黙っていてくれ、レイ様も戦ってくれないか!?」
ナッちゃんは一応結社では偉いのでシロさんも様付けで呼ぶがどうも扱いが雑だ。ちなみにナッちゃんも私に様付けである。
「はぁ〜、本当に馬鹿犬」
そしてこの口が悪いのはノアだ。私に似た顔なのにレイちゃんにも似てるなんかズリい存在だ。そのレイちゃんパーツ私にも分けてくれ!!
「なんだとノア!!表に出ろ!」
「はあ……、姉さん躾けていい?この馬鹿犬」
ちなみに、私達は次の世界にいくメンバーなので仲良くなる為に行動を共にしている。世界中を旅したり特務を受けたり特使として色んな国にいったり、ある意味なんでも屋のチームみたいなもの。
ノアは私に対しては生意気な感じもなくなり結構な時間は経ったけどシロとは折り合いが悪いみたい。犬龍の仲である。
「喧嘩したらご飯は抜き、食堂の魂核決済もできない様にするし各部署にも通達するし、私も貴女達のご飯は作らない」
「綾子様もこう言ってるニャ、大人しくするニャ、特にシロ」
こっちのナッちゃん、アーニアとあっちのナッちゃんの関係みたくフレンドリーではなく何故か忠臣の様な振る舞いである、もっと仲良くならなきゃね……。
「うぐ……、わかった」
「ご飯抜きになったら本当に怨むからね……馬鹿犬」
「く……」
仲良くならないねえ……この子達
「私が模擬戦してあげるから、こっちに来るのよ」
アーニアさん側のシロさんが何かを嗅ぎつけ唐突に現れた。
「あ……、いや……少し体調が悪いのだ……!?」
「ほら、こっちに来なさい」
うちのシロさん連れてかれちゃった。
うちのシロさんが怯えるほどの模擬戦らしい。それにしても喋り方も性格も違いすぎて同一人物なのか本当に怪しい。性格的にはノワールちゃんの方が向こうのシロさんみたいに思える時もある。ノワールちゃんは敬語だったけどね、しっかりしてる。
「綾子、ワタシを借りていくわね〜」
「あ、お手柔らかに〜」
「綾子様!助けてくれ……!うぉおお―――」バタン
扉がしまり声も消えていく。
静かになったね……
「ノアも挑発しないでよあまり、シロさんあ〜なるのはわかるでしょ」
「むう……わかったよ、でも姉さんも仲良くなりたければシロさんなんてさん付けはやめれば?」
「ぐぬぬぬ……、が、がんばる……」
どうもさん付けしてしまう。
なんというかそういう見た目なのだ。
あんな尊大な言葉遣いや雰囲気なのに髪も肌も白くて超美人でお嬢様にしかみえないお姉さんだよ!?萎縮しちゃうわ!
その後は色々とあってシロちゃんって呼び方で落ち着いたけど、古参のシロさんの方からは微妙な目で見られた。
人付き合いってむずい〜
◇
そして1年が経過したとある日――
シズルちゃんが目を覚ました
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