【神話】因果
「私も暴虐もこの世界にやって来た時、いまおもえば頭おかしい人みたいな感性で動いてて、黒歴史を作ってたんだけど……――なにかわかる?人と長いこと話してないコミュ力低下、にしては少し変だなあって……」
私、いま思うとなんであんな行動してたんだろう……?別綾子の身体のっとり、あげくはめちゃくちゃにしてこの世界に来た。
暴虐もエルフ綾子の身体を乗っ取るつもりもなくイタズラ的に自身も写し身(現身)を作り一緒に行こうとしたら同じ身体に入っていたそうなのだ。同じ身体に入ってしまったのは単にミスだったらしいけど。その後の行動については木の外側、いわゆる神の世界からやめて〜って言いながら自分を観ていたそうだ。
「私は、ワタシ達はこの世界に写身を送る時に1人の存在がそうであることを忘れる様にしたんだよ。もしそれを覚えたまま行くと禄でもないことになった過去の戒めだよ。でもまあその黒歴史はマシな方だよ。貴女達は覚えてないだろうけど。説明出来るのはそれくらいかな?」
混沌が言うには本体は覚えているらしいけど、写身の私達はとある人の一部分を忘れているらしい。
ソレに関連する全ての記憶、知識、価値観すら葉抜けの様に欠落し、その結果黒歴史を量産したらしい。一つ忘れるとソレに繋がる全ての記憶が無くなる。
暴虐の場合、前回の様にならない様に、とにかく価値観、知識が消えない様に、ソレに関連しない様に自分に植え付けた結果、ブラッドエルフを人形にする程度で済んだらしい。
でも、とある人のことを『全て』覚えていると――絶対に碌なことにならなかったらしい。
「まあ、よくわからないけど納得はした――でも、混沌はなんで覚えてるの?」
「いや……、一応、この木の女神だからね。条件に合致しなければ消す必要ないんだよ。それなのに貴女達は律儀なのか考えなしなのか、消して行っちゃったんだよね。そもそも今の私達は写身の存在としてイレギュラー過ぎるんだよ。だから消す必要はないかな?覚えてた方が寧ろ良い気もするけどね?」
「え〜、なんで私に教えてくれなかったのよ」
勝手にこの世界に来た私はともかく、混沌公認で来た暴虐には教えてもいいと思う。
「あ〜、覚えてないかも知れないけど2人もいるし、『あの綾子』にも迷惑かけるかもって今回の手段を選んだのは貴女なんだよね」
「そ、そうなのね……――でも覚えてないからよくわからないのよね」
「ん〜……――もう!!面倒くさい!!貴女達は問題ないから本体からその記憶を反映すれば?」
混沌はなにか面倒になると投げやりになるよね……。まあ、でも消えた記憶を保持して良いならそれを知りたい。
「わかった、じゃあ本体達に話して貰っていい?本体達と連絡はとれるのは混沌とツムギだけでしょ?」
神と対話できるのは、この世界の神の写身か巫女機能として存在する『ツムギ』だけである。ツムギは何故か大聖母に仕えてるけどね。
「わかった、じゃあ早速いくね……―――はい、いま反映させるってさ」
「あ、痛……」
「痛い痛い痛い、なんなのよこれ!」
激痛と共に膨大な情報が流れこんでくる。
あ、あ〜……――そうだった……わね。
永く永い女神の時間としては途方もないくらい前のことだけど。
ってことは、あの綾子は……
「混沌の、わかったよ。確かにそうだったね〜。はあ……、これを覚えてたらみんなに迷惑かけることなかったのに」
「静寂の、そうでもないじゃないか。貴女の言う黒歴史っていうもののお陰で今がある。因果ってものは凄いだろう?」
「だけど……、他にも人生を棒に振った人たちもいる」
ケビンパーティの面々は私のせいでもある。『魅了』なんてスキルを与えた為に。
「ケビンのことなら仕方ないよ。まあ『魅了』やエルフ汚染以前に他の世界でもケビンはこうなってしまう因果なんだ」
そ、そっか……。
『因果』それに抗うのは並大抵のことでは無理だ。いうなれば並の人間が巨大隕石に立ち向かう様なもの。
現に、私達がこんなにも不器用で歪な状況を作りだしているのも宇宙一不幸で愛おしい『あの人』を守る為なのだから。
永い時間をかけて辿りついた『あの人』が永く永く幸せに生きる方法がこれなのだ。
だから私はなんの能力も持ち得ない空っぽのワタシ達に任せているのだ。
そのワタシに任せている限りは強い因果をも跳ね除ける。まあ全て跳ね除けるわけではないから万能でもないのだけど……
どんなチートを持っていても因果には勝てなかった私はそのワタシに託すしかないのだ。
私に出来るのはサポートくらいのものだろう。
「は〜、なるほどよね〜。道理で『あの子』が愛おしいワケね。」
「暴虐同感〜、私もすごい納得した」
「そうでしょ?因果ってすごいでしょ?こうも偶然集まってくるんだもの。悪いものばかりじゃないさ」
そうだね、混沌の言うとおり悪いことばかりじゃない。
「でも、あの子が『思い出さない』様に気をつけてね。思いだすと空っぽの私じゃなくなる……――則ち『あの人』を守る因果が弱まるから」
そうなのだ、だから『あの子』が思いださない様に権能でプロテクトをかけてある。「まあいっか」とどうでも良くなるように。
「うん、わかったよ」
「わかったわ」
「あらあら、お揃いかしら?」
大聖母がやってきた。それに……あれ?
「なんで貴女が……いるのよ」
暴虐が動揺している。この世界では因縁の相手だっけ?全てを思い出してもそれは変わらないのだろう。
「貴女、暴虐っていうんだっけ?なんで私にそっくりなのか?漸くわかったよ。今の私の状態の時だけね。」
「ごめ〜ん!この子凄いから、私の権能が効かないわ!」
大聖母がドヤ顔だ。ということは、全てを思い出したということかな?
「う〜ん、思い出したのは私と同期している方のだよ。本体は木の外側の世界にいるから本体同士で話をしてみて?」
「あ〜、あちらで女神化しちゃったのか、でもあまりその状態は維持しちゃだめだよ?切り札程度にするなら良いけど『因果』が『あの人』を殺しちゃいかねないから。」
混沌が注意をする。
「うん、それはわかってる。でも同期してる子との約束なの……――カクカクシカジカで」
「ふ〜ん、250人の亡霊ねえ……――でもわかってるでしょ?その亡霊はただの『残滓』に過ぎない。本当の亡霊はエルフ綾子やセカンドの様にbranch of originate前に亡くなったり事故にあうパターンなの。女神化した貴女、同期した方の貴女ならわかってるはず。」
「わかってる……、あの子達は切られた枝に残った残滓……――それでも、残滓だったとしても、一人一人に物語があるんだよ?」
残滓は残滓でも稀に自我は残る。
それが残滓型の『亡霊』なのだろう。
「……――悲しいじゃん?残滓だったとしても、だから……デートして幸せになろうって。残滓だから元の世界にはいけないかもしれない……――でも」
デート……?綾子達が最近女神綾子の件でなにか騒いでたのってそれ?
「そうなのよ〜!この子デートなのよ〜!まだ誘えてないみたいだけどね〜!それに綾子がいっぱいいる今なら因果は当分大丈夫よ、私もサポートするし!」
「ママ……、ありがとう」
「ふふ、がんばりなさい」
大聖母が自分のことの様に浮かれている。
まあこの子が可愛くて愛おしくて仕方ないのだろう。
「デートかあ……がんばってね、残滓の件はまたお話しさせてね、それに女神化した方の貴女も『残滓』ではなく『亡霊』だろう?もう3人も4人も変わらないしなんとかしてあげるよ。女神になっちゃった本体はどうにも出来ないから私達の仲間入りだけど……」
「本当ですの?是非お願い致しますわ……ひっぐ……、えっぐ、よがっだ……よがっだよ〜」
ですの?ますわ?
混沌も混沌で『亡霊』と『残滓』をどうにかしたいのだろうし、悪い様にもしないだろう。
私もしっかりサポートしないとなあ。
愛おしくて最高に可愛い『あの子』を。
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