【神話】無印と混沌と暴虐と、そして静寂


「はあ〜びっくりしちゃった!でも久々にあの人にあえてよかった〜!!」

「それは良かったね暴虐の……、でもあの後大変だったんだからね」

「静寂のハイエルフさん私、あの人と声を交わした後の記憶がないから何があったかわかってないのよね。」

 このワタシは『あの人』に挨拶した途端気絶しちゃったもんね。


「それで?敵である貴女が何故こんなにも普通に混じってるのかしら?」

 大聖母と呼ばれる少女?は暴虐の名を冠する始祖エルフに高圧的に問う。


「あら、いやね〜もう。同じワタシな癖に」

「貴女とは違うし女神的にみても敵よね?エルフなんかアレには凄い迷惑したのよね〜」

「それは……確かにエルフはそうなっちゃった……、でも違うのよ!」

「なにが違うのかしら」

 エルフには辛酸を舐めさせられてきたこの世界の住人にしてみればそうなるだろう。

 エルフの被害で亡くなった人間の数は計り知れない。


「でも……エルフは……!エルフは……うわあ〜ん!!どうしてこうなっちゃったのかしら!」


 え、泣いちゃった?

 それはもう母親に叱られてた子供の様に喚く様に泣いていた。

 いつもは、まるでどこかでママをやってたかの様な大聖母だが思うところがあったのか、オロオロしだした。


『あの大聖母さんや……私からもこの暴虐のをフォローしときたいんだけど……』

 混沌の木の女神、すなわちこの世界の女神がそんなことを言い出した。

 ちなみに『静寂』については私がいるから本体の『静寂の木の女神』はもういない。

 もはや【本体】と呼ぶには無理なくらいに私も別人だけど今この場では私が『静寂』である。


「どういうことかしら?」

 どういうこと?

 私も同じ感想だった。

 混沌の木の女神ワタシにこの木の世界を任せちゃってからは、私もこの世界のことをよく知らないのだ。

 エルフなんて種族がいることもこの木に戻って、この世界に来てから初めて知ったんだよね。


『いやあのね、『暴虐』は敵じゃないんだ』

「何いってるのよ!エルフに凄い邪魔されたし、この始祖エルフも凄い敵対してたわよ!!」

『う〜ん、エルフがおかしくなってる世界ってこの世界と別綾子の世界だけなんだよね……。多分、そこでなにかしら歯車がおかしくなり、この暴虐の始祖エルフも敵対するしかない状況になったと考えてる』

「いや、でも確かに敵だったわよ!!それに貴女が管理してるのになんで敵対してる女神素通りさせちゃうのよ!」

『どこから話したらいいんだろ……暴虐の木の女神は敵対してないよ?アッチでも。ちょっとイタズラが多い子ではあるけどね……』


 アッチとは女神のいる木の外側のことだ。

 それに暴虐の木の女神って敵対してないんだね。エルフの件、エルフ綾子の件もあるし、てっきり【敵側の女神】だと思っていた。

 ふ〜ん、別の木の女神とも交流してたんだね。


『暴虐の木の女神はエルフを創る際に、私も検分はしてるから……あんなおかしい生物にはなりえないんだよ……』

「でも……、現におかしかったわよ。」

「あれは……、誰かが仕組んだのよ!私だって敵対したくなかったのよ!でも、手を回せば回すほどアーニア達と敵対していくの……、なんだったのよ……アレ……ぐす……」

『彼女の言ってることは本当なんだ。現に他の世界ではうまくやってるし、女神的な立場でいえば協力的な女神なんだ。まあ、自分の管理する木の為に研修に来てる様なものだけど』

「本当なのかしら……、でもまあこの木の女神である貴女が言うんだし、ルナも公認ってことよね?」

『そうだね、ルナも認めている。』


 初耳なんですけど?

 この木は今私の管理下ではないし大分時間も経ってるし仕方のないことだけど。


「ちなみにハイエルフとブラッドエルフがいるのはこの世界と別綾子だっけ?その子の世界だけよ。この世界のエルフがあんなんだから対策した結果生まれたのよ。アーニアや大聖母達は話も聞いてくれないから私は討たれちゃったけどね〜」

 ハイエルフにそんな秘話が!?

 でも確かに……、別綾子の世界と共通で同じ状況になっているのなら、少し陰謀めいたキナ臭さを感じるね。


「まあ過ぎたことは仕方ないし、これから上手くやるといいよ」

「静寂の……、流石、創造神の最新写し身ね!いつもありがとう!」

 なんか最近この子懐いてくるよね?


「ふん!私はどうせ旧い写し身よ!」

 いや大聖母はすごいからね。

 強制力従えてるし。


『いいなあ私は暴虐の子に何故か恐がられてるんだけどなあ……』

「まあ、仕方ないよ。それぞれ立場がある」

『そうだけどさあ、みんなズルい!静寂がいるでしょ?暴虐もいるでしょ?無印の大聖母もいるでしょ?挙げ句、暴食もいるでしょ……?なんで私がいないの?』


「誰か無印よ!立場的には私がそうでしょ?」

『貴女は役目を終えて、今に転生した余生みたいなものでしょ?』

「そうよ?でも必要かしら?」


 大聖母は【無印】だった当時の女神わたしの写し身の転生体だし、あくまで篠村綾子のサポートとバックアップが目的として送られた。だから大聖母は女神の権能も使えるし、まんま女神なのである。

 大聖母がそういうのはもっともな話である。

 そもそも私自身も異物の様な存在である為に思うところはある。

 でもね、わかるなあ混沌の木の女神のワガママも。

 こんなにワタシがいるならいても良くない?って思うよね?私ならそう思うよ。


『私もいきたい!みんなズルい〜!私だけそっちにいない!私、この世界の女神なのに少しくらいいいじゃんか!うわあ〜ん!』

 私の代わりにこの大変な混沌とした世界を管理してくれたんだ、私としてはアリかなあ?

 でも大聖母は厳しいからなあ


「わかったわよ……!もう………!じゃあ綾子の邪魔をしないこと!あと現身を作らないこと!今の状況からなんとかしなさい!貴女は自身をそのまま差異なく送れるわよね?それは禁止、なぜかわかるわよね?」

『わかる!身体だけはこっちで用意すればいいってこだよね?』

「そうよ!」

 あ、そういうことか……。

 用意周到だなあ。

 始祖エルフがいまになってまた現れたのも、納得したよ。


『じゃあ暴虐の!例のよろしくね〜』

「わかったよ……でも、ちゃんと邪魔されない様にしてくれないと上手くいかないかもだし、その辺はまかせたわ」

 その為の新しいハイエルフか…。

 まあこの世界にワタシ達がいすぎだから個人的にはいいと思うけど。


「あれ?暴食って?いた?」

 いたっけ?全然、みてないよ?

 大食いチャンピオンは沢山いる。


「あら、ハイエルフさんまさか気づいてないのかしら?」

 大聖母も知っているらしい。

 なんで?一応私、創造神の写し身なんだけど?私だけ?ハブなの?


「え……、まさか……別綾子!?」

「ちがうわよ」

「静寂のは知らないのね〜」

 暴虐のに馬鹿にされてしまった。解せない。


「龍のあの子よ」

「……まじで?」

「まじよ」


 確かに?そう言われてみれば?

 そんな感じもしないでもない。

 姿は全然別人だけどね。


『アレも協力的な女神だし全ての枝に存在している。アルティメットドラゴン配置してもらう為にね。』

 食べると不老になるドラゴンのことだろう。

 自身の細胞を創り変えるコンバートがあれば不要になってしまうのだけどね。

『でも、やっぱりこの世界と別綾子の世界の暴食は他の世界と比べて異質で綾子達と敵対関係なんだ。本来は綾子達とも協力的なんだけどな……、おかげでアーニアと別綾子の世界は技術が異様に発展したけどね。』

 そっか〜、やっぱり邪魔している誰かがいるってことだよね。

 でも

「それを調べるのは貴女の仕事だからよろしくね」

『静寂の……、わかったよ。これはこの世界の女神である私の仕事。本体とも連携してこの世界の外と内から調べるよ』

 私がこの世界を管理していた時とは勝手が違いすぎてわからない。

 頼むよ、混沌の木の女神。


『あとエルフ綾子の行くべき世界の件なんだけど……』

「どうなった?」

『別に崩壊していないんだ……』

「はあ?」

 ではエルフ綾子が辿った経験はなんなんだろう?

『う〜ん、1番考えられるのは強制力が枝を切ったタイミングをみちゃったとか……かな?』

 確かにそれは可能性が高い、でも……


「そんなタイミングにbranch of originate繋ぐ?」

『そうなんだよねえ……結局わからずじまい。でもエルフ綾子の世界はあるのに……肝心のエルフ綾子がねえ……』

 まあ、もうエルフじゃないんだけどね。

「分離が難航してるみたいだからねえ……そもそも出来るのかな?」

『貴女でも出来ないの?』

「うん、今はね……なんとかなりそうな気がするけど。いっそのことあの綾子が写し身創ってそれぞれ行けば…………あ、それいいかも」

 でも問題はエルフ綾子の自我だよね。


『なんとかなりそうなのかな?』

「多分……」

『じゃあそっちはお願いね。他にもお願いしたいことあるし』

「うんわかった」

 そっか、私なんか頼まれてたね。

 まあ先の話だし今はいっか!


 今日の女神会議はここまで!!

 そろそろ晩御飯だし綾子のお料理楽しみだなあ!

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