第37話 まじかあ

「先輩綾子〜、私の特務って失敗なのかなあ……」

 セカンドが結局、なにも成さないままなので少し不安に思っているようだ。

 一応、先輩綾子としてはフォローしないといけないだろう。


 ――どうやって!??


「あ、あ、あ〜……マリアちゃん達の様子みておくしかないかな?一応なにやってた組織なのかわからないし。諦めちゃだめだよ。」

 反社会的な組織なんているのか?なんて思ってきたのだけど憶測もいけないし、なんとかフォローはしてみた。


「そっかー、まあ今は何も出来ないしね……」

「う、うん……がんばろ……」

「うん……」


 なんてセカンドと話しをしていたら


「ほら〜、綾子達〜!!みんなまってるわよ〜!!」

 この声は!?というか口調かな


「「ママ!!」」

 来てたの?

「誰がママよ!!前世も今世も経験なんてないわよー!!」


 ――前世?


「やだなあアヤ冗談だよー!!久しぶり!!」

「久しぶりね綾子達、アーニアがね寂しそうにしてたわよー」

「し、してないし!!」


 ――まあアーニアさんだもんねー。


「それにしても……、エルフの始祖がね〜……」


 ――あ、やっぱり気になっちゃう?


「アーニアさん、なんでまた会議なんてするの?」

 ――したことないのかな?

「いままで忙しくてあっちの世界と話してたのは別綾子だけだったからねー、流石に交流しといたほうがいいかなって別綾子に相談したんだよ。向こうのみんなも話したいみたいだし。」

 ――あ、そうなんだ。


「それにヤツらもきているわよー」

 アヤがそういうぞんざいな扱いをする存在といえば

『綾子ー、久しぶり!!』

「ん?もしかして1年に1回お菓子を食べにくる女神様?」

『そうだよー!流石にここは立ち合いたいと思ってね、きたよ』

 

 ――でも、ヤツら?


『私もいるよー』

 ――だれ?でもこの間延びした雰囲気は……


「私の本体も来たの……?」

 シズルちゃんが微妙な顔で言い出した。


『そうだよー私は静寂の木の女神、よろしくねー綾子』

 確かにシズルちゃんみたいな雰囲気が感じられる。例の死んだフリをやめない女神様なのだろう。

 ――仲直りしたのかな?女神様同士。

「よろしくねー女神様」


 よく周りを見渡せばリナちゃんやエレナ、セレナやハイエルフ達、ナッちゃん達に知らない結社の人もきていた。

 リリスちゃんは……お留守番らしい。


 ――あとでお土産かっていこ。


「それじゃあ繋ぐよ」

 


『わ!映った!!あ、お姉ちゃん!』

「エレナにセレナ、数日ぶりだね。お兄ちゃんは?」

 別綾子の言うお兄ちゃんとはノルくんのことだろう。


『お兄ちゃん少し遅れてくるかも!龍の人がお姉ちゃんそっくりになっちゃってリリスちゃんと一緒に対応してるー』

「は…………………?早くそっちに帰らなきゃ帰らなきゃ!こここじあけても帰らなきゃ!帰らなきゃ!ヤバいヤバい!」

「……別綾子さん?」

 

 特大の魔力が大気にのり風を起こす。

 ――え、まってまって、それまずいんじゃない?

「なんか世界に開いた穴こじ開けようとしてない!?」


「綾子!やめなさい!!」

「別綾子だめ!!」

 アヤとシズルちゃんが別綾子を羽交い締めにしてから取り押さえた。

 いつの間にか現れたツムギちゃんがいまにも開くのかな?って感じの空間の穴を閉じた。


「むう…お兄ちゃんが…、私のノルくんがー!!ひっぐ…ぐす……!!うわぁーん!!」

 別綾子さん泣いたりするんだ……龍の人がそんなにやばいのだろうか。別綾子さんが闇綾子さんになっちゃったようだ。


 なんて上手いこと言ったと思ったら別綾子、ぐったりしちゃった。


 ――よっぽどだったのかなあ……


『この瞬間を待っていたのよ』


 なにか聴こえた気がする。

 ――気のせいかな?


 それにしても……

 別綾子さんがこんな感じになるなんて誰も予想していないもんだからみんな呆然も茫然、ボケーっと固まってしまっている。


 ノルくんにいたっては何故か顔を両手でパンパン叩いている。

 ――腫れて顔真っ赤っかだよ?


 アーニアも何故か顔を真っ赤にしてプルプル震えている。

 ――どうしたの?


 別綾子はアヤとツムギちゃんにお任せしよう。アヤなら優しく宥めてくれるだろう。


『お姉ちゃん、龍の人と仲良くなかったんだっけ?あれ?たまに龍の人の話題でると確かに取り乱してたかも?』


 なんか聞いてた話しと違う気がした。

 ――だって龍の人=皇龍姫でしょ?敵対してるんじゃなかったっけ?


「別綾子はアヤに任せて、このメンツで交流会議はじめよっか……」

 アーニアが続きを始めようと仕切り直した。しかし、写し出されていた向こうの世界の映像が真っ暗になってしまう。


 ――ブラックアウト?

 

「通信トラブル?ちょっと別綾子……」

 アーニアが別綾子に近づいていく。

 別綾子を経由してこの通信している。

 こればかりは別綾子をどうにかしないといけない。


『ふふふ……ふふふふ……やっとこの世界に入りこめましたわ……』


 ――ん?誰の声?なに?笑ってる?繋がったの?


「お〜い、別綾子〜」

 アヤに膝枕にされている別綾子へ呼びかけるアーニア。

 別綾子からは反応がない。


 ――寝てるのかな?


『ふふふ、随分幸せそうですね。まずは手始めに……』

 ――え?なにこの声、みんなも聴こえてる?


「お〜い」

 アーニアが別綾子を揺すり始める。

「こら綾子〜、少し乱暴よ」

 アヤが注意する。


 ――あれ?聴こえてないのかな?まさかお化け?怖……


 まあ、いっか


 でもこのままじゃ、拉致があかない。

 別綾子に無理させてもダメだし明日でもいいのでは?


『本当にムカつきますわね、なんでドイツもコイツもこんなにも……こんなにも……』

 ――さっきから誰の声……?怖いんだけど


「ん〜、今日は中止で日を改めようか?別綾子じゃないと繋げないし」

「それがいいわね。」

 アヤが膝枕をやめ別綾子に毛布をかける。

 二人とも別綾子に背を向けたその時だった。

 

『お前もコチラ側へ来るといいのですわ!!』


 そんな声が聴こえたと思ったら


 アーニアの胸から手が生えていた。


 否、アーニアは背後から手刀で貫かれていた。


 ――誰に?


「綾子!」

「お姉ちゃん!」

「アーニア様!!」


 手刀は抜かれ、血が吹き出す。

 

 ――誰から?


 アーニアからだ……

 ゴフっと血を吐き、ズルリと倒れ……

 地面にアーニアの顔が届きそう…


 だったのだけど、


 そのまま上半身を捻り、倒れる反動で背後にいた人物に蹴りを食らわし吹っ飛ばす。


 ――え?胸突かれたのに!?大丈夫なの?アーニアさんすご!!


「くふ……ハアハア……どういうこと?」

 血を吐きながらも、大量に胸から血を流しながらもアーニアが、いや…アーニアさんは普通に立っている。

 それでも流石に辛そうだ。

 私は慌ててポーションを用意した。


「答えな……さい!!ハアハア……別綾子!!ワタシ……!!」

 

 アーニアさんの胸を貫いたのは別綾子だ。

 ――でも、どうして……別綾子が……


「アーニアさん、ポーションはい。一応2本飲んで。」

「ありがと」

 

「あ〜ら、胸に穴を空けたのに死にませんの?化け物ですこと」

 別綾子が言い出す。


「え?誰?」

 誰もがそう思っただろう。

 明らかに別綾子とは別人な、この口調。

 

 ――どこかで聞いたような?どこだっけ!?


「私くしはワタクシでありワタシでしてよ〜。」

 ――なんだっけ?誰だっけ?自分と同じ声、でもなんかムカつく感じ……思い出せん!!


「綾子、下がりなさい!!」

「う、うん、この出血量だと流石に分が悪いわ……」

 アヤがアーニアを下がらせノルくんに預ける。

 ――ノルくん、アーニアを頼んだよ。

 

 私やセカンドも前に出る。これは綾子問題だ。

 ――ま、まあアヤとツムギちゃんが先陣をきっているんだけど


「もしかして!?先輩綾子に憑いてた変なのじゃない!?あ…私も先輩綾子に憑いてたんだわ……」

 セカンドの言うとおり、なんとなくそんな気がした。でもこの記憶私の記憶ではない。

「綾子!!エルフの綾子起こして!!早く!」

 ――シズルちゃん!?わかった!!

 シズルちゃんにしては珍しく怒気がこもった様に感じた。

 言われるがままに


 ――仮想「分離術式」発動


『……っと!待ってよお肉……!ってあれ?どういう状況?』

『エルフ綾子!別綾子がね……!』

 シズルちゃんが説明というよりは半ば強制的に情報を流し込んできた。


『え、まじ?じゃあ、この別綾子に憑いてるの……、アレだよね……』

『うん多分アレ』


 エルフ綾子とシズルちゃんの言う『アレ』

 恐らく、私に憑いていた『侵略者』?なのだろう。

 恐らくなんとかの木の悪い方の女神なのかもしれない。


 よくわかってはないけどシズルちゃんから送られてきた記憶や情報からだとそうとしか思えない。

 いまいち、私が眠っていた時の事だからか、フワッとしていてピンとこないところもある。

 それに、あんなのが私に憑いてたのかと思うと鳥肌が立った。

「あらあら、もしかして貴女、ワタクシの分体が憑いてる篠村綾子ではなくて?」


 ――ヒエ……、ロックオンされた


「もう……、私の中にはいないよ!!」

『ワタシ……、分離できたら別綾子に忍びこんでヤツを消せるんだけどねえ……』

 ――あ、ああ、そうだよねえ。エルフ綾子は出来るんだよねえ……


「ほう……、なら確かめさせていただきますわ!」

 別綾子に憑いてる敵がこちらに近づいてくる。


 ――こ、こないで……こわ!!


「させないわよ!!」

「させません!!」

 アヤとツムギちゃんが応戦する。

 別綾子に憑いてる敵は刀を取り出す。


「ふん!転生体と強制力如きが今の私に勝てるとでも?他の枝でも貴女方とは戦いましたわよ?結果、知りたくはありませんか?」


「他の枝の私のことは知らないわよ!」

「アヤ様、聞いてはいけません!」


「では、行きますわよ!!」


 ――敵の動きがまるで別綾子の如く、速い。というか、別綾子の身体なんだけどね別綾子の記憶からなのかな?それとも……それになんというか…、アヤが戦ってんの初めてみたんだけど……普通に強い。のほほんとしている普段からは想像も出来ない動きをしている。いわゆる徒手空拳だ。敵はほぼ別綾子の動きなんだけど、アヤは難なく応戦している。ツムギちゃんと二人がかりだけどね。

 一応、防御結界二人にかけとこう。


 ――なんか、あの敵、強すぎない?まずくない?


「ダメだ……、精神体を侵食して敵を消したいけどガードされてる。」

 シズルちゃんが難しいことを言ってる。

「シズルちゃんでも出来ないのか……」

『でもシズルちゃんよりは格下でしょ?精神体云々は』

「気絶させられたら楽なんだけど」


『シズル、あれは誰?』

 ――えっと、この世界の女神様かな?みんな声が似ててわかりにくい

『うん、ワタシ、あれは何?』

 シズルちゃんの本体かな?


「わからない、前にも現れたんだよ。この綾子に憑いてた。」

『あれは、どこかの木の女神の写し身かと思ったけど……なにか違う気がする。』


『あの……喋ってる人は誰?』

 ――あ、エルフ綾子は知らないよね女神様たち。

『あ〜エルフの綾子?私はシズルの本体の女神だよ〜!神の世界では会ったことあるよね〜!もう1人はこの世界の神様だよ〜!』

『え、あ、シズルちゃんが二人いる?みたいな?』

『確かにそうだね。よろしくね』

『うん、よろしく』

 こんな状況でもなぜかこの空間は、のほほんとしてしまうのは何故だろう。


 まあ……、アヤ達に任せっきりなのもアレだし加勢して取り押さえようって話になった。

 ここにいる全員には各自、精神体、魂核共にプロテクトをかけてもらった。


 ――って言っても、あの激戦の中に飛び込みのキツイんだよね。私達、逆に邪魔になるんじゃない?


「アヤ〜!!交代!!」

 

「え!?シズルちゃん!?え!?」

 ――こんな好戦的だっけ?戦ってるとこ見たことないよ!?


「おねがい!」

 アヤとツムギちゃんが離脱した。


 ――防御結界ステ振りで私も行こう!

 私は勝てないと思うけど多分、やられることもないし……って、シズルちゃん……強い……!


 あの別綾子並に強い敵の動きについてってる。


 ――シズルちゃんあんな動き出来たんだね。


 別綾子の記憶も持ってるから別綾子と同じことが出来るのかもしれない。

 チートだし中身が女神だから、この中で一番強いということもありえる。

 シズルちゃんが強いなら私に出来るのはサポートだ。


 シズルちゃんにかけてる防御結界の強度を極振りにした。


「シズルちゃん!防御結界一番つよつよにしたから!」

「綾子ありがと!!」


「く!なんですの?貴女!?なんでこの動きについてこれるのよ!!」

「あれ?強敵だと思われちゃった〜?」

 シズルちゃんの間延びした声がかなりシュールだった。

 敵もシズルちゃんの登場が予想外だったのか、余裕が無くなってきている様にもみえる。

 まあ、ここにいる全員がシズルちゃんのこの強さは予想外だと思う。


 ――別綾子より強いのでは?私達、入っていけないし。


『あのさワタシ……通信で話して』

『どうしたの?エルフ綾子』

『え〜とね……』


 ――なるほどね……

 それは確かに……試してみる?

 リスクはなさそうだし。


 やってみるか〜!


『シズルちゃん、そのまま戦って、合図だしたら距離をとって』

『え?うん!わかった!』


 しばらく戦いを見守り、敵が肩で息をし始めた。

『シズルちゃん!いま!』

『うん!』


 シズルちゃんが距離をとったのを見計らって、私の防御術式を的にかけた。

 ただの防御術式ではなくて


 内と外を防御を反転させてある術式だ。

 言わば、絶対拘束術式である。

 それを別綾子の身体にびったり隙間なく掛けたのだ。


 結果は勿論

「なんですの〜!!身体が動かせないのですわ!!」

 敵はそのまま、地面へと転がるように倒れた。


「綾子、すごいねこの拘束術式……」

「えへへへ、でもかなり精密だから敵が疲れて止まってくれないと無理だった、シズルちゃんのおかげ」

「えへへへ」

 私達、最強のパーティーみたいだねへへ


『お〜い、ワタシ……やるよ!』

「そうだった」

「綾子、もしかして別綾子に入るの?」

「うん、そうだね…っていってもエルフ綾子が入るんだけどね。私と繋がったまま。まあ実質、私が入るってことになるんだけど……」

「ああ、なるほどね、私も補助するけど無茶はしないでね?二人とも」

『私達、女神組も一応ついてるよ』

「うん!ありがと!」

『わかった!じゃあ行ってくるね。』


 別綾子を見下ろす形になってしまったけど私は、私達は敵へと近づいた。

「まさか私が生身で制圧されたのは驚きましたけど何をするつもりですの?この身体は、この篠村綾子のものでしてよ?」

 制圧されたと言うのに、やけに余裕だね。

 ――それともブラフ?


『まあ……、前もこんな舐めプだったしハッタリだよ』

 対峙したことがあるエルフ綾子はそう思っているようだ。

 ――大丈夫なのかな……?


 ――よし、やるか!


『魂核と精神体にプロテクトをかけて…、あとは、シズルちゃんに教えてもらったおまじない!準備出来たよ〜ワタシ』

『エルフ綾子、すごいねこれ……術式じゃないよね?』

『まあねえ、多分権能ってやつ。一応私デミゴッドらしいからハハハ!』

『へえ〜すごいじゃん、じゃあ私もデミゴッドだね』

『ははは、じゃあ行くよ!別綾子を助けに』

『うん!』


「なにをするんですの!?まさか?」

「まさかだよ〜」

「ふふふ、いいですわ〜、どうせ中に来ても貴女に何か出来るというわけでもございませんし。」

「ひとまず気絶しなさい」

 なんてシズルちゃんがなにか敵にした。

「いたい……ですわ……く……」

 別綾子がシズルちゃんにやってた痛い攻撃にしかみえなかった。気絶するほどって相当痛いんじゃないないのだろうか。


 敵が意識を落としたことで私達は別綾子の中へ飛び込める。

 私は別綾子の身体に手を置いた。


 エルフ綾子として仮想分離した精神体部分だけが別綾子の中に侵入していく。

 とはいえ私とエルフ綾子は繋がっているので実質入っているのは私だ。

 なんか変な気分。

 ――頼んだよエルフ綾子。



 別綾子の中に来たけど……

 ――なんか部屋の中なのかな?

 ここは、日本に住んでいた頃の私の部屋だ。別綾子の部屋なのだろうか?

 パソコンも私のガチデスクトップPCとは違いノートPCだし、本棚のラインナップも違う。

 料理の本も全然ないなあ。

 別綾子の部屋なのかな?やっぱり。


 ――『私』の時はまっくらだったなあ…。


 そしていまここにいる私にも身体の様なものもある。精神体だけどね。

 

 ――ただ……、入ってから気づいたけど私は今、どっちのワタシだ?

 ――え?私は私なんだけど、エルフだった私でもあると自覚してる。

 ――エルフ綾子を送ったつもりなんだけどなあ…… 


 自分の中ではないから影響が出てしまうのだろうか。


『エルフ綾子〜、どう?別綾子大丈夫そう?』


 私が話しかけてきている。

 ということは私はエルフだった方の綾子なはずだ。

 でも私は1年間引きこもってた私の記憶もある。


 ――私は……どっちだ?


 まあ今それを気にしても仕方がないのだ。

 仮に外から話しかけてくるワタシを本体としよう。

 そして今の私はやっぱりどちらの私でもある。

 ――写身のようなものなのだろうか?

 これが完全に融合した感覚なのだろう


『あ……、私……大丈夫だよ!これから探す!』

『うん!わかった!』


 とはいえ、私の部屋に見える空間でなにをすればいいのだろうか。

 ひとまず部屋の外に出てみようとドアノブに手をかけた。


『来ましたのね。ここから出ない方がいいですわよ?』

『うわあ!!』

 ――突然話しかけられてビックリした!!って……ワタシ?


『何を驚いてますの?』

『いや、いきなり話しかけられたしビックリもするよ〜』

『私が言ってるのは脊髄反射のビックリではなく、私を視界に入れてから反応した方についてですわ。』


『いや、だって私と同じ姿なんだもん』


 私は今、一応身体側と同じ格好でローブを着ている。

 どこから見ても私は篠村綾子だ。


 そして目の前にいる敵も篠村綾子の姿だった。

 別綾子の中だから、なのだろうか。


 ローブを来ているわけでもなく、高校のブレザーを来ている。

 ――懐かしいなあ。


『はあ……、それが答えですの?貴女は何者なんですの?篠村綾子にしては毛色が違う様ですし』


『私……?篠村綾子だよ?』


 身体側にいる本体は元々の私として存在してるし……今の私はなんなんだろう?

 一応、エルフだった私として話そう。


『私は亡霊だよ、この身体のワタシと融合する前は……』

 エルフだった私、エルフになる前の私についてを話した。


 なんで敵にこんなこと話しているのだろうか。

 というか、なんというか……

 この目の前にいるこの子、外でドンパチやってた敵に感じられた禍々しい狂気を感じられない。


『そうでしたの……、貴女も大変でしたわね……ぐす』

 ――え?泣いてる?


『え……大丈夫?』

 ――って敵の心配しちゃったよ!


 ――でも


『あら、お優しいのですね?今まで会ったワタクシ達は……いや、ワタシ達は直ぐに私を腫れ物扱いして私を消そうとしたよ?』


 やっぱりこの子


『じゃあ、貴女のその姿が私と同じなのも』


『そう……私も貴女と同じ。かつて篠村綾子だった成れの果てだよ』


 ――まじかあ

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