第35話 属性てんこ盛りヒロインを羨ましいとか思ったりしてないし
「みなさん!結社の者です!食事はそのまま続けていただいて結構ですので!動かないでください!」
結社の人?誰!?ガサ入れ?
――ってアリスさん?
でもアリスさんは席について食事中だ。
というか動じずみんなご飯を食べてる。
アリスさんにとてもよく似た女の子が乗り込んでいた。
ちなみに髪型はツインテール、アリスさんや私と同じく色はプラチナピンク。
私もだけどプラチナピンクはパッと見、白金のように白めの髪にほんのりピンク色である。
日本いたころは誰にもなんにも言われなかったけどもの凄い色だよね…。
で、どうやらこの女の子は結社員らしい。
帝国支部でも私は見たことがない。
――あ、目が合っちゃった。
「え、アーニア姉さん?なにしてんの?」
やっぱり?妹?みたことないけど妹なの?
「や、やだなあ~、私はアーミアだよ?人違いだよ。」
知らない人だけど目をパチパチして「察しろ、わかれ!」オーラを送った。
はっ!と気づいた様に頷いてくれた。
よかったよかった……
「え?姉さんが4人?ってことは…他人の空似か…」
絶対わかってないよね!?
――って、あ!ステータス偽装してるからかな?
偽装解除!!!
「ん?あ、やっぱり姉さんか~、って3人?もう一人はだれ?」
ん〜も〜!空気を読めてね~!!こっちも潜入してるの!
ここにいるならそれしかなくない!?
そんないかにも結社関係者だって匂わすんじゃないよ…
ってもう遅いか。
チラッとアリスさんをみると。
「ひさしぶりね、元気にしてた?今日もガサいれ?」
今日も?
いつものことなの?
周りのみんなも動じてないし
「うんそうよ!ガサ入れよ……!て、アーニア姉さんもガサ入れ!?」
「え…あ、ああ、あ、あ」
別綾子さん!!タスケテ!!もう何がなんだか!
「貴女のことなんか知らないよー!空気よめ!!」
別綾子さん、ではなくセカンドが叫ぶ。
セカンドの特務なのでムカついたのだろう。
「ふふふ、本当に空気よめないのは相変わらずね。」
アリスさんも笑いながら知らない結社員の人にそう話かける。
「また、私はやってしまった…?」
やっちゃってるかもね……?
「別にここにいる方々が結社のアーニア様というのは存じてますよ?」
え?バレちゃってた?
「流石に4人もいるのは少し困惑してしまいましたけど…」
まあそうだよね
ええとこの結社員の女の子は誰なのかな?
レイラインを開いて個人情報を閲覧する。
えーと?
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アリア・フォン・シュテュルプナーゲル
種族:魔族
HP:-
MP:-
〜略
職業:大聖女/モデレータ
称号:黄昏の吸血姫<トワイライトヴァンパイア>
--------------
あ!7人しかいないモデレータの人だ!
一応、偉い人だ!この子も
「アリアちゃん、いつもここ来てるの?」
気安くちゃん付けしたけど…まあいいでしょ。
アリアちゃん、アリスさんほど背が高くないし。
私より5センチくらい高いな?ケッ!
「お姉ちゃんのところにはたまに来てるよ。あとアリア……ちゃん付け?」
お姉ちゃん?
確かに似てるけど…まあ確かにそうだよね、そうだよね。
それにアーニアはアリア呼びでちゃん付けはしてないみたい。
「というか、どのアーニア姉さんがアーニア姉さん?branch of originateで若い姉さんがいるのは知っているけど。多すぎじゃない?去年リナちゃんにあった時もなんかアーニア姉さんそっくりになってたし……」
まあ、シズルちゃん以外はアーニア姉さんで間違いないけど…
「あらあら、アリア、座りなさい。」
「うん、お姉ちゃん」
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「へえ〜アリアさんとアリアちゃんは姉妹なんだー!」
少しだけお話を聞いていくとまあもちろんそうだった。
「アリアとは姉妹と言ってしまえば血のつながり的に姉妹なんですけどね?まあよく似てますよね?私達」
え?他の聖女はあまり似てないよ?髪の色はみんなプラチナピンクだけど。
「まあここにいる純粋なブラッドエルフは10人くらいで20人くらいはハーフだったり先祖返りですね。一応、みんな血はつながっているのですよ。言ってしまえばみんな姉妹か姪ですよ。」
「へえ〜、そうなんだ…。」
「え…、アーニア姉さんはそのこと知ってるから…貴女は見習いの姉さんってことよね?私の知ってるアーニア姉さんは?」
「いないよ、ここには。本部でお留守番。」
「あ〜!だから噛み合ってなかったのね。一応、今日はアーニア姉さんからの特務でここに来たからね〜、なんでいんの!?って思ったわよ。」
あ!そうだったの?
空気読めてなかったわけではないのかな?
「ガサ入れとかいってなかった?」
「あれはいつも来るときに言う冗談よ!」
なるほどね
「アリスさんが言ってた"私達が結社のガサ入れかと思った"、ってのは?」
「あれは、アーニア様が沢山いらっしゃったので、つい……申し訳ございません。」
つい……とは?
じゃあ、バレてるならコンバートとこうか?
「ふい〜スッキリした〜!」
少しエルフ耳が慣れてないから落ち着かなかった〜!
別綾子も戻したしシズルちゃんも目の色を戻した。
「貴女は元に戻らないのですか?」
アリスさんがセカンドに問う。
まあ元からだしね。
「私は元からこうだよ〜。ドラゴンの血があんなおいしいなんて初めて知った!」
「話には聞いていたけどのエルフのアーニア姉さんなのよね?ステータスだとハイエルフ?ってなってるわね。疑問符付きね。」
「ハイエルフとブラッドエルフの特性を持ってるみたい。レイラインで調べたら始祖エルフなんじゃないかな?セカンドの身体は」
「セカンド?」
あ、そっか
一応、改めて全員自己紹介をした。
「へえ、じゃセカンド姉さんはこれから大変だね?血の味をしっちゃったら」
「あ!確かに〜!怖いかも〜!先生綾子!先輩綾子〜!シズルちゃんどうしよ〜!ノルくんに噛み付いちゃったらどうしよう…!事故として許してくれるかな?」
は!?何言ってんだ!?そんな羨ましいこと!!少し得意げにドヤるな!
「まあ、血は飲んだら美味しい程度でして、あとは少し血流がよくなって魔力が上がるくらいの健康飲料と思っていただけたら大丈夫ですよ。純エルフみたいに食人鬼なわけではないので衝動もありませんし。」
「あ〜、じゃあノルくん噛みつき作戦は出来ないね……」
そんなセカンドはさておき、
「そういえばアリアちゃん特務って?一応、セカンドも特務で来てるから情報共有できない?」
「いいわよ姉さん。私はアリスお姉ちゃんの勧誘に来たの。いま結社も人手足りないじゃん?まあ何回も来て振られてるんだけどね…」
「アリア、私達はやるべきことがあるの…だから今はまだ……」
やるべきこと?
「ああ……、それね……?」
「結社の力を借りるわけにはいかないのですよ。こればかりは。」
「私も同族だし、出来ることはするよ?その……姉妹なんだから。」
「でも……、あの子達も姉妹だから……、アリアにはあの子達と戦う覚悟はある?」
「あるよ……お姉ちゃん。」
「そう……いいのね?」
真面目な顔をして事の成り行きを見守っていたけど、さっぱりわからん!
でも、同族……というよりは姉妹ともめているみたいだね。
「若いワタシ達、私達も協力するよ。特にセカンドは調査の一貫だしね?彼女達の話から対立してるブラッドエルフ達が怪しいんじゃない?話を直接聞いててそうは思わなかった?」
わ……、セカンドも私もステータスやら魔族やらに夢中で話聞いてなかったからな……。
「う、うん!わ、わ、私も怪しいと……思ってる!」
セカンド!?わかってないのに!?
「そう、まあ私達もいるからがんばりなさい」
「が、がんばる!」
私とアーニアもこんな感じにみえていたのだろうか?
どうしよ〜みたいな顔をしてセカンドがこちらをみる。
まあ、私もいるから……。
役に立てるかわからんけど……。
「アリスさん、その対立している姉妹達とは……その……戦かっちゃうの?」
まあ多分大丈夫じゃない?このくらいの質問なら。
「まあ……そうですね……戦いといってもお話しあいなんですよ。とても複雑なんですよね……私達はですね……」
アリスさんが説明してくれた。
現在ブラッドエルフは3つにわかれているらしい。
①結社のアリアちゃんチーム
アリアちゃんチームは言わずもがな結社のお仕事をしている。なんの仕事なのか知らんけど……
②そしてこの桃色聖女団…くふふふ
彼女達は俗世から離れ慎ましい生活しながら、世界中を歩き、貧しい人達に治療術式を施して歩いていたらしい。
ただし近頃では結社による薬学や医療が発達したせいもあって結社の傘下になってもいいかな?なんて思ってはいるみたい。
③最後はアリスさん達が気にかけているブラッドエルフ達。
エルフ創造種=侵略者が作ったブラッドエルフ工場を根城としなにやら研究を行っているらしいし、最近はキナ臭いこともしてるらしい。
しかし結果は出せずにいるらしい……。
だからアリスさん達桃色聖女団はそんな彼女達を気にかけて、説得をしにいくみたい。
――一緒に慎ましく生きていこう……と
ブラッドエルフ、思った以上に家族想いで優しい一族なのかな?
エルフ創造主に似なくて良かったね?
アヤネ……あの子、結構ヤバいしね……詐欺師だし。
――ってこれエルフ綾子の記憶だった〜!!
アヤネ、実はエルフ以外はそこそこ功労者だよね……。
生物を生み出す倫理はまあ置いといて。
アヤネがいなかったらハイエルフのみんなもブラッドエルフのみんなも生まれなかったわけだし……。
アヤネ結構馬鹿だし常識なかったな〜。
――あれ?アヤネ、初期のシズルちゃんと大差ないかも?
エルフも苦手っぽかったし?
あの時はナチュラルに詐欺られたし嫌ってたけど、もう少し話をしても良かったかな?
まあアヤネにはもう会えないし……もういっか……。
うう〜、私は私だよね?エルフ綾子じゃないよ?でもなんだろうどんどん実体験かのように記憶が馴染んでくる……。
まあ、いまはいっか。
それから、ブラッドエルフ工場にいくまでの3日間、私達は仲良く御飯を食べたりダラダラと過ごしていた。
あとはアーニアから連絡があり、仕事落ち着いたらしく、こっちへ向かってるとのことだった。
寂しかったのかな?ツンデレだもんね
◇
ブラッドエルフ工場までやってきた。
道のりは、とても楽だった。
15kmしかないからね?
一応、公的にも認められた組織ではあるみたいで……、見事に堂々と看板を掲げられていた。
組織の名前は
『暁の閃光聖女団』
――である。
まあ……、桃色よりはまともかな?
研究機関には聞こえない名前である。
「アリスさん、こんなみんなで押しかけて大丈夫?それになんか戦う?ような感じの雰囲気でもないし。」
「そうですね〜。お話しあいが主ですし、いつもは。」
「いつもは?」
「はい……、最近キナ臭いことをしてるみたいでして。ここ数年疎遠になりどうも彼女達らしかぬといいますか…なんといいますか……」
どういうこと?
「若いワタシ、演説でいってたじゃない……。もしかして、聞いてなかった?」
あ!録音してたの聞き返してなかった!!私のおバカ!
「う、うん……確かにそうだったかも…?」
「しっかりしてね、引率者なんだから」
「うん、ごめん」
まあ私が特務をしていた時は引率者はアヤだったな。
ちゃんと見習わないとね…………アレ?アヤなんかしてた?付いてきただけじゃね?ツムギちゃんが引率してた様な?
「では入りますか。」
ハイエルフ工場とはいえ、見た感じは貴族のお屋敷風なんだけど守衛さんもだれもいない。
勝手に入ってもいいの?
アリスさんとアリアちゃんが門を開けようと手をかけた瞬間に、畝る様な紫色の光が2人を襲う。
これはおそらく電撃だ。
おそらく防犯セキュリティの様なものだろう。
「それでは開けますので皆さん入ってくださいね〜。」
そんなセキュリティの存在を否定するかの様に皆に声をかけるアリスさん。
門を開けるときもバキ、ベコ、バキバキといった何かが壊れる様な音がしたけど気のせいだろう。
だってアリスさんすごく普通にしてるし。
さっきからウ〜ウ〜!とサイレンの様な音もなってるけど皆気にしてなさそうなので大丈夫なんだろうね、きっと。
「先輩綾子、これ大丈夫なのかな?」
「やっぱり?気になるよね……」
「貴女達、シズルも警戒はしておいて」
やっぱり?なんかヤバそうだよねこれ……
なんて思ってたら
「あ〜もう!なにごとよ!!!なんなの!?せっかく新型エルフ出来そうだったのに集中できないじゃない……!!」
何やらローブのフードを深めに被った女の子が現れた。
背丈は私と同じくらい……いや同じだね。
それにこの声……
髪の色は深紅のようだね。
なら……違うのかな?
「あの……、そちらの代表のマリアに用事があって伺ったのですが?貴女は?」
あれ?アリスさんも知らない子なの?
「マリア?あ〜、鬱陶しいから眠ってもらったわよ」
「眠ってもらった、ということは目は覚ますのですよね?」
「どう思う〜?」
少しニヤニヤした口調でこの子はいってきた。
「返答次第になりますが……、容赦は出来ないかもしれません」
「や、やだなあ……、別に大丈夫よ。この施設を我が物顔で使ってる癖に邪魔をしてくるから意識を落としてお人形になってもらっただけよ。」
「元に戻るのですか?」
「も〜!なんなのよ!私の施設なの!邪魔者におとなしくしてもらって何が悪いの!?」
あ、この子……もしかして……
「はあ〜、私もあんな感じだったのかなあ……」
シズルちゃんが嘆く。
後方にいた私達も少し前にいく。
セカンドが視える様にね……
紅髪の子も流石に気付いたようだ。
「あ!綾子!その身体〜〜!って綾子?それとも静寂の木の女神?」
セカンドに問い詰める紅髪の子。
セカンドは困惑している。
まあ知らないもんね……
私も実際は初対面なんだけど
「アヤネ、この子は色々あって別の世界の篠村綾子が入ってる。アヤネの知ってる篠村綾子は私と融合したよ。」
「ちなみに静寂の木の女神は私ね。また消すよ?暴虐の木のなんとかさん?」
さらっと脅すシズルちゃん
「ひぃっ!!」
ガクブルしだすアヤネ。
「おっとアヤネ、怖くないよ〜。ドラゴントン汁食べる?」
このタイプの子は脅すより懐柔した方が、いいんだよ。
アヤネ、アホだからね。
「綾子〜、静寂の木の女神こわいよ〜、今の私は食べた経験ないからドラゴントン汁食べてみたい〜」
「ほらドラゴントン汁だよ〜」
「ん〜!綾子これおいしい!!」
「ローブ汚れちゃうからフードくらいとって、ほらショートケーキだよ〜」
「うん!あ!ショートケーキおいし〜!!」
アヤネがフードを下ろした。
まあやっぱりそうだよね……
アヤネの顔は髪の色以外は完全に篠村綾子だった。
あとエルフ耳があってアホ毛がないくらいかな……
美味しそうに食べるアヤネ
困惑するみんな、セカンドはなぜか笑顔
アヤネの口周りを拭く私
どうすりゃいいの?みたいな空気が漂い始めた。
どうすんだこれ……?
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