第34話 目を醒ますと何か起こってたりする

 仮分離術式を行使し体力も気力も使い果たし術式停止後に、私は眠っていた。

 眠るというよりは気絶と表現した方が正しいのかもしれない。

 目が醒めたらまた1年後?とかフラグ立ちそうな感じではあったけど今回はセーフだ。

 なにかあったといえば、別綾子が私の異空間収納をこじ開けてノルくんハウスを出していたことかな?

 私はノルくんハウスの自室で寝てたし。

 私の異空間どうやってこじ開けたの?

 怖いんだけど……


 エルフ綾子との仮分離については概ね成功とは言える。

 しかし、あんなに燃費悪いのは想定外だなー。

 一応、燃費についても計算してたのにな。


 いわゆる魔力は体内にも内包はされているが、人間の身体に内包される量は微々たるもの。

 魔科学における魔法=術式行使は、大気だったり空間に含まれるフラッピングエーテルという無限にある素粒子を変換させ体内を通し発現させる。

 それが魔力である。

 実際、体内を流れるように変換させてはいるものの、フラッピングエーテル=魔力という考えで問題はない。


 では、魔力の消費量や燃費とは


 魔力は無限にその辺にあるわけなのだけど、人には魔力伝導率ある。

 例えば、電線には抵抗値があり電気を多く流す為には抵抗値を下げる必要がある。ただし抵抗値を下げすぎても強い電流により機械は負荷に耐えきれず壊れてしまうだろう。

 魔力においても同じで強すぎても身体や精神に負荷がかかるのだ。

 負荷によって身体も精神も擦り切れる、その限界がゲームでいうところの最大MPマジックポイントである。

 昨日は限界までとはいかずともかなり摩耗していた。

 今まで気にしなくてもそんなことなかったんだけどね〜。


 私の場合は魔力伝導率がもの凄く高いらしくいわゆる「魔力が強い」方なのである。逆にいうと術式は魔力抵抗値というものを考えて暴走しないようにしなければいけない。

 したがって、魔力は強ければ強いほど負荷は高く術式を繊細に構築して制御することが必要となる。

 でもね、あんなに疲れたの初めてだったよ。

 無駄な魔力がありすぎたのかもしれないし、もっと抑えても良かったのかもしれない。


「は〜……どうしたもんかねえ……。一応は燃費も見直して術式を並列に負荷分散はしてみたんだけど、どう思う?シズルちゃん」


「綾子……大丈夫?まだ寝てた方がいいんじゃない?熱とかは?ないみたいだね」

 シズルちゃんが最近過保護な気するんだよね…私に対して。

 気のせいかな?


「え?大丈夫だよ〜。私、顔色悪い?」

「え…あ…いや…別綾子の世界のノルさん録画したのにまだ観てないし大丈夫かな…って。」

 え〜、ま、まあ確かに向こうのノルくんみたいなあ。

 でも、エルフ綾子のこと考えたらやっぱり優先したいじゃん?

 エルフ綾子、待ってるから。


「どうしたの?」

「あ、別綾子〜!綾子がねカクカク云々でね、ちょっと心配なの!!」

 え、そんなに?過保護すぎじゃない?


「それはちょっと心配だね、ちょっとじっとしてて?」

 え、別綾子まで?

 別綾子がなにやら術式を行使して私をチェックしている。

「別に何かに憑依されたり侵されているわけではないね。私のノルくんに興味ないの?」

 え…そんなに私、変?

 それに私のノルくん?私のノルくんって言った?


「あの私のノルくんってなに……?私のって。教えてよ、ねえ!教えてよ〜!ねえ!」

 私はぷるぷる生まれたての小鹿の様に震え、必死の形相で別綾子に問いただした。

 どこまで進んでるの?どこまで?ねえ!!


「あ、大丈夫そうだね〜。病み上がりだから少し調子悪かっただけなのかな?少し刺激したらこの通り治ったね」

「いつもの綾子だね〜。良かった〜術式の反動でなにか悪いものに憑かれたのかと思っちゃってた!」

 え?いまこんな小刻みに震えて歯を食いしばってる私が正常だとでも?


 別綾子が、別綾子が匂わすから〜!!



「で、改良した術式はどんな感じ?」

「それよりも……、むぅ、はい、これ改良した術式」

 別綾子がどこまで進んでるか知れて、もしもいい感じになってるなら、私も希望が持てたのに。

「私は、手を繋いだよ……」

「まじで?」

 すげえ大人じゃん!私、小さいころにお祭いった時に繋いだくらいだよまるで――兄と妹の様に。

「まあ、小さいころだけど(ボソッ)」

 え?なんかいった?

「別綾子、ぷふふふふイダダダダタ!!ふぇ、久々に痛い攻撃くらった!」

 別綾子がなんか言ってたけど聴こえなかった。シズルちゃん痛そう。


「それにしてもこの術式凄いね……」

 ほんとに!?

「綾子凄いね、負荷分散をしつつ出力は増幅して補って、前の90%は魔力消費量抑えてるね。」

「パソコン自作する過程で電気について調べてたからそれをヒントにね。」


「パソコンって……自作するものなの?私、同じ篠村綾子だけどそういうのわからないから」

「まあ、引きこもった時にちょっと……」

「あぁ……」

 やめろ!そんな目で私をみるな!!


「前にテストした時は燃費以外問題なくて、燃費よく改良しただけなんでしょ?」

「そうだよ〜」

「じゃあ、私もやってみようかな?」

「やっちゃう?まあ、また機会みてやるつもりだよ。一応、セカンドの特務の引率で来てるからそっちもやらないとさ」

「あ〜、そうなんだっけ、でもあの子1人で行っちゃったよ?」

「へ?どうして?」

「先輩綾子寝てるけど早く成果出したい~っていってたよ?まあ、あの子なら大丈夫じゃない?心配?」

「ん〜、まあ、ちょっと……」

 あの子、真面目だからね。

 リガ×アダってワードにもピンと来てなかったし少しサポートはしてあげたいなあ…

「なら通信いれてみたら?」

「そだね」

 居場所特定マップでセカンドは〜、50kmくらい先にある廃教会?なにしてるの?こんなとこで……

 セカンドに通信を入れてみた。


『もしもし?』

『もしもし〜?あ、先輩綾子〜?どうしたの?』

『いや、一応私、引率で来てるじゃん?だから気になって』

『あ〜ごめん!1人で来ちゃった!でもね、今廃教会の近くにいるんだけど、ローブ着た集団が入ってくの見た!こんな人が住んでない様なとこの廃教会にだよ?怪しくない?』

『確かに怪しいね。一人で大丈夫?一応なんかあったらまずいから今からいくね。』

『うん!来てもらえると心強い~』

『あ、そう?来てもらえると心強いのか~。ならいかないとなあ~』

 私も頼られるくらいにはなったのか~そうかそうか~!

 この世界に来てからの生活を思い出すとしみじみしちゃうなあ!


「綾子、ドヤ顔かわいい!」

 シズルちゃん?ドヤ顔とは?


 というわけで1時間くらいかけて龍車で現場へ来た。

 ちなみに別綾子とシズルちゃんも一緒…

 暇なのかな?


 私も暇なのだけど……


「こっそり覗こうか、まあ引率役とは言え見守るのも監督だよね。」

「そうだね、私もセカンドの教育係としてはそうしたいかな?」

「じゃあ別綾子が使ってた気配消すアレをしとくね。」

 シズルちゃんが、さも当たり前の様に難易度が高い気配隠蔽の術式をサラっと行使する。別綾子のオリジナル術式で内容がさっぱり理解できなかったやつだね。

「え、なんで使えるの?」

 え、別綾子が教えたんじゃないの?

「あ、別綾子に憑依してた時に知識読み取っちゃってるし、ごめん……」

 あ、チートだ。

 異世界小説風にいえばスキル「スキルコピー」的なあれかな?

 ちなみに別綾子さん、少し頬を膨らましてる。

「別綾子、ごめんて……」

「もういいよ……」


微妙な空気感を漂わせながらも物陰からセカンドを探す。

まあ気配隠蔽術式により後ろに立っててもバレないんだけど……

気分でね。


「セカンドいないね。居場所特定マップによると、えーと」

 あれ?3メートル以内にいる?

 え?どこ?


「あれ?先輩綾子の声が聴こえる?」

 あれ?セカンドの声が聴こえる?


「もしかして先輩綾子、気配けしてる?」

「もしかしてセカンドも気配消してる?」

「うん、消してるよー」

 セカンド、気配隠蔽術式使えるんだ。

 使えないのもしかして、私だけ!?


「貴女はそのまま続けていなさい」

「え?先生綾子も来てるの?」

「わたしもー」

「シズルちゃんも!?え、先輩綾子はわかるとして、みんな暇なの?」

 

「「……!!」」

 まあ、もっともな感想でありご意見である。

「まあまあみんなセカンドの活躍を観たいらしくてさ、授業参観だと思って気軽にね!」

 

「ええ〜、小学校の頃ママが授業参観に来たりすると空回りしちゃったりするし…私ちゃんとできるかな~?」

 あ、確かに頑張ろうとして空回りしちゃってたかも


「がんばれー!綾子!私達がついてるぞー!」

 シズルちゃんが一番張り切っている!


「うん!がんばるね!シズルちゃん!」

 まあセカンドもなんだかんだ嬉しいみたい。

 私はツンデレタイプではなくてすぐに喜んじゃうから、セカンドのこういうところはアーニアみたいな気がする。


「セカンド、怪しいローブの人達は?」

「教会の中に入ってったんだけどね、なかなか出てこないんだよね。」

「少し侵入してこようかな?別綾子先生どう思う?」

 あれ?私に聞かないの?私は!?私は引率だよ!!?

「うーん…、張り込んでても進展ないならそうだね~」

「そっか~、じゃあいってきまーす!」


 セカンドは張り切って教会へ向かった。屋上の窓?みたいなところから侵入するみたい。

「一応、私もいくね!引率役だし!!」

 と、私もついていった。


「わ!先輩綾子もきたの?」

「引率役なのでね」

「そっかー!頼りにしてるね!」

 ふふふ、ふふふ、頼りにして?


 2階からあっさり侵入して礼拝堂のところまできた。

 30人ほど人があつまっている。

 壇上には偉い人なのかな?少し刺繍の入ったローブを着ている。

 少し結社のローブに似てなくもないかな?でも別物だろうね、あれは。

 しーんとして静かだったんだけど、偉い人がなにやら話始めた。


『みんな、準備はいい?』

 女性の人?


『「「「「はい!」」」」』


『今日こそ、私達の存在を知らしめるチャンスよ!!長かった、苦節、彼女らと袂を別ち2000年。ケジメをつけなければいけない。貴女達には苦労をかけてきてしまった。それでも私に付いて来てくれてありがとう!』


 みんな拍手をしだし感激し、涙を流すものもいる。

 これは正気なのか?それとも…例の洗脳によるものなのか?

 そもそも、これが特務にあった反社会組織なのかもわからない。


 それに2000年ってことは、ある程度魔科学術式を極め、コンバートまで行使できるということだ。

 細胞をコンバートする故に長生きできるのだから

「先輩綾子、これ黒だよね?後ろにいる子達はあんまりノリ気じゃない気もするし……」

 あ、確かに、もの凄く暗い顔をしている。


『我ら「桃色の聖女団」は、三日後、例の作戦を決行する』

 待って!待って!聖女?それに桃色?の団??ぷふふ!!団!?ぷふふ!!

 白いローブ来てるのに?


「先輩綾子笑いすぎ、ふ!!くふふふ…ふふ!!」

「セカンドもじゃん!でも、例の作戦ってなんだろう」

「ね〜、それに碌でもない空気がねえ…」

「どうしよっかこれ」

『私も聴いていたけど、話をしてみたら?入団?入信するふりをしてさ。ダメな感じだったら潰せばいい。私もシズルもついているから』

 別綾子さん物騒だけどそれが一番ベターなのかな?まあ別綾子さんいたら全然大丈夫だよね。


「セカンドいける?」

「先輩綾子も一緒にね?」


 まあ、そうだよね。引率役だし仕方ないよね……

 

 ひとまず正面にもどって扉から入ることにした。

 そおっと開けた……んだけどね?

  ギィイイイイ!!!


 扉が古すぎて錆びてたのか音がなってしまった……

「え!誰!!??」


「あ、あ、あ、あ、あ、ごごご、ごめんくださ~い」

 セカンドもテンパっちゃった

 

「突然、すいません……、あの、その」

 私もテンパっている!!

 だって!そっと入って一番後ろの人に話かけようって思ってたのにおっきい音なるんだもん!!今全員こっちを見てるよ!注目の的だよ!

「その恰好、もしかして、入団希望の方ですか?」

 偉い人が話かけてきた。

 入信じゃなくて入団なんだね


「は、はい~」


「なあーんだ!入団希望者の方なんですね!手続きは後でしますので今は後ろでお話を聞いていてくださいね!」

 え、え~!!??入団希望者って信じちゃう~?

 怪しさ満点の私達はひとまず怪しまれつつもすぐ話をきいてダメだったら潰してガサ入れ、みたいな物騒なこと考えていただけに困惑してしまった。

 そもそも物騒すぎたよね、私達。


 だって、聖女って名がつく団体だよ?やっぱり平和的な団体なんじゃないかな?



 「いやあ、一瞬だけ結社のガサ入れかと思っちゃいましたよー!!本当に焦りました!JOBやステータスのチェックは後程しますね!後から聖女にもなれますのでご安心を。」

 そう言って偉い人は壇上に戻っていった。

 やっぱりやましいことしてそうだね。

 あと私とセカンドはステータス上のJOBは【大聖女】だけどね


『先輩綾子、ステータスのスキルで【鑑定】ってあるじゃん?見るとここのみんなJOBが【聖女】なんだけど』

『え、やっぱりそうなの?』

 私はレベルが低いのでレイラインシステムに接続して、ここにいる人達のステータスを覗いてみた。

『え、レイラインシステム?チートすぎない?私はまだ触らせてもらってないしな~、いいなあ』

『へへへ、そのうちセカンドも触らせてもらえるよ、むしろ私と交代して…!あ!ほんとだ~みんな聖女じゃん。』

 て、あれ?この項目……、あれ?


『まあ聖女団ってくらいだし?当たり前か~』

 え?セカンドは気づいてない?


『セカンド、ここいる人、みんな人間じゃないみたいだよ?』

『え?うそ!?鑑定だと人間ヒューマンって書いてるよ?』

『え~?やっぱり?丁寧に偽装って書いてたよ。』

『ちょっと先輩綾子、見せてよ~』

 ここに書いてある彼女たちの種族名、それは


 種族:魔族(人間に偽装)


『はあ?魔族?で聖女?』

『確かにそれは思った。』

 私もステータスに大聖女なのに闇属性魔法とか書いてるし人のことは言えないけど。

 最近レイラインシステムの管理権限を貰ったのが幸い

 一応、私の種族も【魔族】に偽装しておいた。

 名前も偽装しとこっか。

 私、アーミア

 セカンド、アンナ


 安直だけどね……


「それでは今日はここまでにします。さてご飯の準備をしましょう!」

『『あ』』

 話聞いてなかった~!!何するの?この人達、なにするの?

 スマホ触って授業を禄に聞いてないみたいな感じになってしまった。

『若いワタシ達、頼んだよ』

 別綾子さん?なにを?

『わかった』

 セカンド?絶対わかってないよね!?

 セカンドがどうしよう、みたいな顔をしてこちらをみている。

「わかってないのに、わかったっていっちゃだめだよ?」

「うっ!確かにそうだね、ごめん」

 まあ録音はしてたからあとから聴くか~


「先ほどの入信希望の貴女方、こちらへいらしてください。」

「は、はい~」

 偉い人がフードをとり挨拶をする。

「私はアリスと申します。この団体の代表兼、大聖女を務めております。」

 名前も職業も実はシステムから覗いてしってたんだけどね。

 ん?髪の毛の色、私と一緒じゃん?このド派手なプラチナピンクみたいな色。

 髪の色だけで顔は全然似てないけどすごい美人さん。 

 私より背が10センチくらい高いな、くそ!

 そして、耳が尖っている。

 エルフなんじゃね?というかエルフにしか見えない。

 そして瞳が紅い。ぶっちゃけセカンドと丸被りである。 

 周りを見ると聖女の子達も同じ髪の色をして、同じく耳が尖っていて、瞳が紅い。


 どうしよう、私達もフードとる?

『先輩綾子、私フードとってみる。大丈夫大丈夫じゃない?私なら』

 え、大丈夫?まあ見た目の種族的には大丈夫なのかな?

 セカンド、壇上に少しだけ近づいて行った、ちょっと遠かったしね。

 って、セカンド床のズレに躓いて転んじゃった!!

「大丈夫?【アンナ】?」

「だ、大丈夫だよ【アーミア】……。恥ずかしい〜」

 めっちゃフードとれちゃったけど。


「まあ!さすがは入団希望されるだけありますね!美しい髪の色!同族同士仲良くしましょう!ようこそ桃色の聖女団へ」

 ありゃ、アーニアの顔しらないのかな?

 一応、私も耳コンバートで尖らせて、瞳も紅くコンバートしておくか…

 私もフードを下して顔を晒した。


「私はアンナです、よろしくお願いします」

「私はアーミアです」


「まあ双子なのですね!?それに…二人とも大聖女なのですね。」

 あ、鑑定したのかな?

「そうですね、ふ、ふふた「4つ子だよ。私達も入団する」」

 この声は?

 やっぱり別綾子!やっぱり来た!

 別綾子も偽装とコンバートで魔族に化けている。

 シズルちゃんは瞳の色だけ変えて種族を偽装している。

「アンネです。」

「し、シズルです!」

 シズルちゃんはそのままなんだね。まあそだよね


「まあ大聖女が4人!これはすごいわ!」

 あれ?大聖女?別綾子とシズルちゃん違ったはずだけど……偽装したのかな?

 教会内の聖女の子達もざわざわしだした。


「それにしても貴女達4人のお顔、どこかで見たことあるような?ないような?」

 わ!バレちゃう?

「気のせいかしらね」

 ホッ。

「一応、ご挨拶はここまでにしてご飯の準備にしますね!」

 あれ?なんか、なんとなくだけど割とマトモな人っぽい?

 やましい何かはしてそうなんだけど。



「アリスさん!私達、お料理お手伝いします!」

「あらあら、助かります!ふふふ!よろしくおねがいしますね!」

 ん~、別に良い人っぽいんだけどね。

 

 まあ、とりあえずは潜入も成功したし話を聞くことから始めよう。

 さっきステータス偽装に夢中で話聞いてなかったら……


 彼女たちが何をこれからしようとしているのは気になるところだけど今は料理に明け暮れた。


「お……く……れ、も……え…ュン…」

 作った料理に私はこの魔法おまじないをかけている。

 テレビだったかネットだったか忘れたけど当時の私はそれを信じてやっていた。

 今となってはそんなの信じてはいないのだけど幼少期から続けていた癖はなかなか抜けない。

 癖というよりは料理が完成したという儀式のようなものだ。

 まあ恥ずかしいし小さい声で言ってるんだけどね。


「若いワタシ、アーミア、今のそれなに?」

 別綾子、アーミアって私のことだよね?

 聴こえちゃった?

「え?なんのこと?私萌え萌えキュンとかいってないよ?」

「あ、ああ、そう……なんでもない……」

 やめて、そんな目で見ないで


「飲み物は各自ありますよね~?それでは神に祈りを捧げて、お食事にしましょうね、皆さん、いただきます!」

「「「「「いただきまーす!!」」」」」

 アリスさんの音頭で皆食事を始める。

「4つ子さんのお料理おいしい!!」

「こんなに美味しいの初めてたべた」

 ふふふ、料理を褒められるとやっぱりうれしいなあ。 


 それにしても、この飲み物なんだろう?

 トマトジュースかな?

 それにしては色が濃いような?

 なんか鉄臭い?

「先輩綾子、私、この飲み物好きかも」

 まじ?あんまりいい匂いしないけどなあ。

 むしろ臭い。

 セカンドはぐびぐび飲み干してしまった。


「私のいる?私、これ苦手」

「いいの?先輩綾子ありがとー!ぐびぐびぐびー」


「アーミアさんいいのですか?姉妹仲がよいのもいいとは思いますが、それでは体力がもちませんよ?」

 アリスさんが私をみてそう促す。

 でもセカンドもう飲んじゃったしね。

「あ、私は好みの携帯飲料あるんで大丈夫です。」

 トマトジュースをだした。

 紅い液体みてるとトマトジュース飲みたくなっちゃった!!



「あらまあ、そうだったのですね。ドラゴンの血だと好みもありますからね。ご自身の好きな味の血をお持ちなのでしたら問題はありませんでしたね。」

 私はうんうん頷いた。

 そうそう、なるべく好きな血をね~、飲みた……ん?


「あ、あ、ああ、あ、そそそそうなんですよねー、私達のうち3人はアレルギー持ちなんで……」

「あら、そうでしたの、それは大変失礼いたしました。アーミアさんはドラゴンアレルギーですのね?」

「は、はい~」

 別綾子とシズルちゃんも流石にドラゴンの血は飲めないみたいで、セカンドに渡して私のトマトジュースを持っていった。

 ドラゴンのお肉は好きだけどね


 そういえばこの人達の種族、魔族ってところしかみてなかったね。

 レイラインシステムから種族名:魔族の横に【ディティール】って項目あったけどみてなかったなあ。

 ええと【ディティール】オープン

 

  魔族:吸血姫ブラッドエルフ


 やっぱり……。

 吸血姫にも【ディティール】あるじゃん

 【ディティール】オープン

-------------------

※以下はレイラインシステム上でのみ表示される管理者向け補足事項です。

吸血姫:

 エルフの始祖が創ったハイエルフと並ぶ次世代エルフ。

 魂が濁っておらずエルフの様に食人はせずマトモに改良された種族。

 ただし多少の血液を経口摂取する必要があるが、人でなくともOK。

 ビーフドラゴンのレバーが大好き。

 ハイエルフより力は劣るが魂が存在

 エルフの始祖はハイエルフと吸血姫ブラッドエルフの両方の特性を兼ね備えていた、とされている。

 

 現在の分布は結社に10名、その他約30名程度とされている。

 魔族という呼称が広まったのは血を飲むけど意思疎通がとれるし、エルフがアレだから同じにされたくなくて魔族と名乗った、とか誰か言ってた。byアーニア(新星歴6467年2月14日記載)

-------------------


 そっか~!そっか~!!そっか~!

 そうだよね。


 まあセカンドってハイエルフだけじゃなくブラッドエルフの特性も持ってたんだね。

 見た目エルフだから魔族?って思ってもピンとこなかったんだけどそういうことだったんだね。

 いいなあ。

 ヴァンパイアは少し憧れるわ。

『若いワタシ達、特にセカンド、ヴァンパイア属性ゲットおめでとう』

『え!?私ハイエルフじゃないの?』

『うーん、ハイエルフというよりハイエルフと吸血姫ブラッドエルフを兼ね備えた始祖エルフらしいよ』

『え!?転生したら大聖女でエルフでヴァンパイアで?姫?な属性てんこ盛り?』

 なんか嬉しそうだね。羨ましいとか思ってないし……

 いいなあ


 なんて通信で話てたらドアがバン!!と勢いよく開いた。


「みなさん!結社の者です!食事はそのまま続けていただいて結構ですので!動かないでください!」


 え!?誰!?ガサ入れ?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る