第33話 古代遺跡で嗜むバーベキュー!!

「今日精神体理論の講師やってたんだけど疲れちゃった……みんなわかってくれないんだもん」


 シズルちゃんが吐露する。

 別綾子に拉致られ帝国に連れられて来たあげく支部で精神体と魂核の理論について講義をさせられていたらしい。


 色々とあった別綾子とシズルちゃん、なんだかんだ仲良いな?


 ちなみにシズルちゃん背も伸びて今では私達、篠村綾子にソックリだ。

 似ているだけではなくほぼ篠村綾子って感じである。

 他の篠村綾子より間伸びした喋り方もなんとなく私に似てるし若干キャラ被りがある。

 アーニアもだいぶ間伸びした喋り方ではあるけどそれよりも私並みだ。

 のほほんとしてる。

 コミュ障だったみたいだしその影響なのかな?

 特にエルフ系統のセカンドとはパッと見目の色が違うくらいで、ややこしいので髪型を変え伊達メガネをかけたりしている。


「まあ、シズルちゃんの理論は難易度高いしアーニアやこちレイちゃんですらあまり理解出来てないからね。」


「権能を混ぜず、術式だけで説明するとどうやっても難しくなっちゃうからね。それより角煮めちゃくちゃおいし〜!おかわり!」


 別綾子、食べすぎ。

 ポークドラゴンの角煮もう30個目だけど?私なら胃もたれしそう


「別綾子いまサラッと権能って言わなかった?シズルちゃんは静寂のなんとかの写し身だから使えるのわかるし、私もエルフ綾子の記憶から知ってるけど」


「権能でしょ?私も使えるもん。権能に似たモドキだけどね。理論体系化しないと使えないし。権能ぽい結局は術式なのかもだけどね。」


 はぁ?どういうこと?

「別綾子はなんなの?」


「まあ、貴女と同じ……混じってるの」


 まじで?いつか教えてくれるって言ってた話のこと?


「だからそんな色々出来たり、雰囲気違うの?」

「う〜ん、そうかもだね〜。でも自我は元々の私だし実感はないけど性格とかには影響あるのかも?よくわかんないや。」

「ふ〜ん、まあ色んなワタシもいるみたいだしね……」

「貴女の中に潜んでいた亡霊綾子?みたいなのがいたの……色々あって融合した。あと私が引き取った凍結中の3人はどうするか考えてるけどね。」


 そっか……割と亡霊綾子っているんだね。

 甘い夢、叶わずして散ったワタシ達が。



「私が憑依した時も一人分の記憶にしては色々とありすぎてうまく読み取れなかったのってそれなんだよね、憑依してた時はだいぶ謎だったんだけど。別綾子の記憶がカオスというかなんというか……。」


 シズルちゃんが言う。


「でも権能使えるワタシ?なんているの?」


 エルフ綾子は経緯からわかるとして


「デミゴッドかわからないけど特殊なワタシだった……でも私達と同じ篠村綾子かはかなり怪しいしそのワタシの記憶をあまり読み取れないんだよ……ただ記憶の断片から権能だと思う能力を使ってたよ。それに融合出来たってことは篠村綾子なんだろうけど……多分。」


 別綾子がいうにはデミゴッド綾子?らしきものと融合はできたけど僅かな記憶しか読み取れずそもそもデミゴッドかも不明らしい。

 私もエルフ綾子の記憶は全部わからないところもあるね……確かに。


「仮説になっちゃうけどエルフ綾子の記憶がちゃんと自分のものの様に読み取れないのって……デミゴッドだから?」


「その可能性もあるよね。でもエルフ綾子と混じっても貴女は元々の貴女って感じだし……。でもエルフ綾子は貴女達みたいにフレッシュ(笑)な感じだったから影響が少ないのかも?私が融合したのは、なんか闇が深い感じのワタシだった。」


 またフレッシュ……

 別綾子さん、実は闇綾子さん?


「そっか〜じゃあ私が開発してる分離方法も見直さないとなあ……デミゴッドじゃないと分離出来そうな感じなんだけどね。」

 分離方法はずっと研究してる。エルフ綾子とお話ししてみたいじゃん?


「分離したいの?してどうするの?」


「え、いや……エルフ綾子とはお話したいなあって。あの消滅した枝の再生とか出来るのなら女神がしてくれたらいいなあなんて……願望とか妄想レベルだけどね。それに融合する前にいったん戻って、考えるのはそれからでもいいと思ってね。」


「なるほどね、まあ悪い話ではないよね。私も出来るから一度分離してみようかな。ねえ、ワタシ?」


「ん?」


「その開発中の分離術式、私とシズルにみせてくれない?」


「うん!いいよ!はい!これ!」

 別綾子とシズルちゃんに術式を渡してみてもらった。


「……うん、すごいね…この術式」

「綾子権能つかえないはずなのにサラっと権能を術式化した様なの作ってるよこれ……」


 え?そーなの?


「ん〜、でもこれ普通の亡霊綾子と混じった場合なら分離出来るはずなんだけどね、やってみたけどエラーになっちゃうから……デミゴッド部分も想定した術式に改良したいんだよね……うまく出来ないけど」


「それならさ〜ここを人間としての綾子の記憶、ここをデミゴッド部分としての記憶で分離して術式書くと〜――」


 なんてアドバイスをうけながら改良していった。

 改良された術式をみると…まだ完全な分離は出きなさそう。

 でも?こことここを変えると?

 あ、これ融合したままエルフ綾子の意識だけ、私の中で分けられそうじゃない?

 仮想的にだけど。

 完全な分離はまだ無理そうだけどね。


「シズルちゃん、どう?これ」

「綾子、この仮分離術式なら試しても安全だと思うよ。いま試す?」


「う〜ん」

 やっぱり?

 やっちゃう?やっちゃう?

 エルフ綾子、仮だけど復活させちゃう!?


 みんなも私の回答を待っている。

 唸りながら結構な間を空けちゃったからか、重苦しい空気が漂っている…


「いや、今日はもう遅いし明日バーベキューだし……やめとくよ〜へへへ」


「さっすがワタシ!わかってるね!」

「ハハハ、綾子ここまで匂わせてそれは面白〜い」

「まあ先輩綾子フラグ立ちそうな匂いプンプンしてたしそっちのがいいよ〜」


 まあ、普通に軽い気持ちでやることじゃない気がしたしね。

 まずはバーベキューだよ。


 反社会組織の調査?まあ、別綾子の様子みにいく建前だしあとでもいいよね。

 セカンドもお肉の事しか頭に無さそうだし。


「じゃあ明日はバーベキューして、別綾子の世界のみんなとおしゃべりだし早く寝るか〜」


 なんていってお風呂入って即効寝た。

 別綾子は張り切って無駄にフラッピングエーテルを、所謂魔力を飽和させ体力を空にして寝ていた。

 素直に食い意地が凄いなあって思った…




 翌日、私達は世界に空けられた穴まで来た。

 帝国郊外の大森林に隠れた旧皇都があった場所である。

 

 なんというか本部の近くにもあったよね、こういう大都会みたいなビルだらけの遺跡。実際今の皇都より全然広いしここにも人の営みがあったのだろう。


 ちなみにちゃっかりリナとノアとリノアちゃんもいて、龍の姫3人勢揃いである。


「そういえば先生綾子の世界のみんなってこっちと違うんだっけ?」


 あ〜、そういえば聞いたことないから知らないね。


「リリスとエレナとセレナ、あとシロとナッちゃんは共通だね。」


「ふ〜ん、そうなんだ。お話してみたいな〜。」


「そう、じゃあ後で向こうのみんなと話してみよ?まずはバーベキューの準備かな〜!?はい!まずはコンロを精製!そして網!そしてトングを10個!」

 別綾子が張り切っている。

 よっぽど楽しみだったのか目がキラキラしすぎて眩しい。

 野生のビーフドラゴンだもんね…。


「別綾子さん、お皿用意するからちょっと待っててね。」

「先生綾子すごいはしゃいでるね!私キノコ取ってきたよ〜!ベニテングタケじゃなくマツタケエリンギの自生種だけどね!」


「ん〜!!!セカンドナイス!」


 別綾子さん、はしゃぎすぎてキャラが壊れてる。

 その点、私は落ち着いてるので大人な女性に見えなくもないかな!?


「綾子よ、ドヤ顔なのじゃ?」


 おっかしいなあドヤ顔してないんだけどなあ


「というか見事に綾種しかいないよね〜ハハハ」


 なんて和気藹々とバーベキューを始め、世界最高のグルメを楽しんだ。

 リノアちゃんは綾種じゃないけど



「なんなのこれ!?モグモグ野生のビーフドラゴンのモグモグお肉モグモグ美味し過ぎて箸がモグモグ止まらない〜!!」

「先生綾子わかる〜!本当になんというか…牛肉〜!!って感じだけどA5どころじゃないよこれ!A10000だよ!!」


「確かにそのくらい美味しい〜!」

 これを飽きるだけ食べたのは初めてだけど本当に美味しいのだ。


「A5?なにそれ?でも綾子おいしかったよ〜!ありがとう!」

 シズルちゃんに頭を撫でて貰った。


「えへへ、どういたしまして」

 最近シズルちゃんがよく撫でてくるのだけど嫌ではないし、むしろもっと撫でて?


「姉さん美味しいお肉ありがとう」

「綾子姉さんありがとう!」

「美味だったのじゃ」


 ドラゴン娘達は共食いにならないのかな?と思ったけど同じ哺乳類同士でと捕食はしあうしその観点では龍種も同じなのだろう。

 さて後片付けして休むか〜!なんていってデザートにミルクレープを食べていた。


「あれ?みんなここでなにしてんの?」

「あ!綾子私もミルクレープ食べたいぞ〜!」


 レイちゃんズ!?

 どうしてここに?

 ハイ!ミルクレープどうぞ!


「若いワタシに私が作った自治国ルナリースをみせておきたくてね。」


「え!?ルナリース?旧皇都じゃなくて?」


「まあ帝国の前身はルナリースだよ?私が初代代表だよ?途中で代表やめて綾子…いやアーニアやお兄ちゃんと一緒にいたからほとんどの時代は顧問だったけどね。」


 ルナリース……リューナリス…―

 あ!なるほど!

 それに代表って王様みたいなものだよね?こちレイちゃんすごい!


「へえ〜!だから帝国のお偉いさんはみんなレイちゃんに宗教的に跪くのか〜。アーニアに跪くのとなにか違ったもんね〜!」


「ハハハ、まあルナ教の神って私らしいからね…――3000年眠ってるうちに宗教なっちゃってたわ…。私、一応人間なんだけどな……」

 8000年生きてる人間は果たして人間なのか?と思ったけど余計な事は言わない。私は大人なので。


「まあアーニアも聖女伝説とかどっこいどっこいなところあるし……」

「確かにな〜ハハハ!」


 私は絶対に信仰対象にならないように気をつけよう。舐めプはしない!


「じゃあみんな私のいた世界と繋ぐね」

「うん……」


 緊張する〜!!あっちの世界のノルくんどんな感じなのかな?録音しておかなきゃ……!!


『もしもし〜!お姉ちゃん久しぶり!みんな後で来ると思うよ!ちょっと立て込んでてね!』

「久しぶりだねエレナ。変わりはない?その……変な龍とか来てない?」

『ん?来てないよ〜!みんな元気だよ〜!』

「そ、良かった。」


 音声だけかと思ったら映像ありなんだね。

 エレナはエレナって感じだなあ。

 服と髪型が違うくらい?ノルくんは?ノルくんは?って思ってめちゃくちゃ覗きまくった。

「綾子、ちょっと落ち着きなさいよ」


 シズルちゃんに諭された。

 挙動不審だったかな…?



『あれ?そっちの世界のお姉ちゃん?久しぶり!』

「あ〜……エレナの知ってるこっちのお姉ちゃんは結社本部でお留守番!私は結社見習い中の綾子だよ〜はじめまして!」

 エレナはエレナって感じだなあ。


『そうなの?あ〜噂の硬いお姉ちゃん?!防御結界極振りの!』

 そうそうそれ!って、噂されてるのか……硬いのは間違ってないけど!?

『て、あれ?話には聞いてたけどお姉ちゃんいっぱいいない?あれ?計算合わなくない?』


 気づいちゃった!?

 篠村綾子は3人だけどリナちゃんとシズルちゃんも含めるとまあ5人かな…?


「そうだね、みんな来たら自己紹介しとこっか?」

 別綾子こと向こうの世界のアーニアはそう言ったのだが


『みんなはそうだね〜、夕方までには来ると思うよ〜!』


 え、夕方……いまお昼過ぎ!


「そう、じゃあ今まで通りここで待ってるね。」


『うん!』


 てなわけで向こうの世界のエレナとお話をしていた。

 『お姉ちゃん』と同じ顔の人が沢山いるからかエレナは凄く興奮していて可愛い。

 こっちのエレナはどこか腹黒いところがあるのだけど向こうのエレナは純真無垢といった感じである。

 まあ世界によって差は出てくるんだろうな。

 私達篠村綾子でさえそうなのだ。


 楽しいおしゃべりをしていたとはいえまだ1時間しか経っておらず別綾子はエレナとお喋りしてるし、みんなも仕事やら何やらワシャワシャとなにかをしだしている。

 時間もあるしな〜

 折角だしエルフ綾子との仮想分離術式をテストしてみることにした。

 完全に分離できないし私の内部での分離だしフラグもバッキバキに折れた今なら大丈夫だろう。

 別綾子の時間を邪魔しないようにみんな遠慮がちだしやるなら今かな?


 別綾子がエレナに沢山食べすぎて皆さんに迷惑掛かってない?とか聴こえてきて少し気にはなったけど……

 よし!軽くテストしてみよう。 


「そおれ!」

 アーニアと違ってわざわざ術式を唱えたりしないから……気分ではたまに唱えるけど


 私の中で分離していく?というか繋がったまま私ではない、『なにか』が形成されていくのが判った。


 まって!?

 あれ?あれ?意外と変な感じ…――気持ち悪いような落ち着かない様な……ぞわぞわした感じ。

 私が具合悪そうな感じにしていたからか?シズルちゃんが近づいてきた。


「綾子大丈夫?もしかして……あ、分離のテストしてたんだ。」

 シズルちゃんが背中を擦ってくれる。

 少し落ち着いた。

「どう?大丈夫?権能ベースの術式だしこの辺りに魔力意識しないと危ないよ?」

 流石のシズルちゃん、魔力操作のアドバイスをしてくれる。


 術式が全て起動しこれでエルフ綾子と会話が出来るはず?


『お〜い、エルフ綾子〜?いる〜?』

 シズルちゃんも繋いどこ

『綾子〜。エルフの綾子〜。』

 2人とも最強に間伸びしている為、緊張感がなさすぎる。

 エルフ綾子と感動の再開!みたいな雰囲気は皆無だ。


『あれ?術式失敗しちゃった!?』

『いや…割としっかりした術式だし大丈夫だと思うけどね〜。』

『おっかしいな〜まあまた今度にしよっか』

 って言って術式をオフしようとした時


『まってまってまって!ワタシ!ちょっとまって!』


 知ってた。


 何かいるなあ〜ってのは自分の中だしなんとなくわかってたけど。


『エルフのワタシ、はじめましてだね!貴女のおかげで助かったよ。』


『うん、はじめまして。まあ今はエルフじゃないからエルフと呼ばれるのは……まあいっか。こっちこそ、ありがとう』


『綾子?久しぶりだね!』

『シズルちゃん!元気?』


『うん!また話できて嬉しい!』

『私も!』

『でもなんで術式起動して分離してるのに黙っちゃってたの?』


『いや、普通に目覚めてから脳が追いつかなくて……いや精神体か……』


 あ、そうだよね。


『でもようやくこれで答え合わせが出来るね。』

 私は答えが知りたい。


『ん?なんの?』

『なんのって……結社本部の結界とか……張ってくれたのエルフ綾子でしょ?』

『え??知らない……』

 え、エルフ綾子じゃないの?

『じゃあ……またね……』


『え、ちょっとまってまってまって!せっかく目覚めたのにもう終わり?』

『まあ仮分離だし……割と消耗するんだよね。今回はテストだから。もう少し燃費良くしてからでもよい?』

『そっか……しかたないね、でもまた本当に分離してね!話したいこともあるし!約束だよ!?』

『え、約束!?う、うん、う〜ん』

『綾子も意地悪しないの〜!エルフの綾子が可哀相でしょ?』

 シズルちゃんに怒られた。

 まあ私も話したいことが沢山あるけど…この術式めちゃくちゃ疲れるから思考がまわらず躊躇ってしまったのだ。正直、死にそう。

『わかった、私も話したいことが山ほど……ある』

『よろしくねワタシ!』


 と約束をさせられ、いやして、術式を停止した。

 すげー疲れた!!

「綾子〜、大丈夫?」

 すごいクラクラする。


「た、大丈…ぶ……」


 無理…意識を保てそうにない


 別綾子の世界のみんなとお話したかったのになあ…。

「シズルちゃん……向こうの世界のノルくん録画して……」


「え、わ、わかった……ゆっくりおやすみ……――綾子」

 

 シズルちゃんの膝枕、なにか物凄く心地よい

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